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2014年11月23日日曜日

コーポレートガバナンスコード~社外取締役複数に

連休明けの25日に開催される有識者会議で事務局(金融庁と東証)が、「社外取締役の複数化を盛り込む」と今日の朝刊で報道された。

1名以上は会社法によって有価証券報告書提出会社(上場会社+アルファ)に実質上求められるのであるが 、これを2名以上にしようという案。

コーポレートガバナンスコードは 法律ではないので、これに従わなくても、違法ではない。しかし、(まだ決まっているわけではないが)、コードの原則に従わない場合には理由を開示することが求められる。「1名でよいという理由」または「2名にしない理由」はなかなか書けない。このため、コードは実質上の法律と同じ。

日本取締役協会のコード案は独立取締役を3分の1以上としているが、以前書いたようにちょっと中途半端。 いっそのこと「過半数」とすべきであった。

現状では、社外取締役を設置しているのは、東証1部企業でも34% という現状から、過半数を求めるのは困難。「複数」が無難なところ。

「社外」と「独立」は違う。会社法は「社外」を求めているが、東証は従来より「独立」を求めている。このため、今後確定するコーポレートガバナンスコードでは、社外取締役ではなく独立取締役になると予想される。

「独立」の要件は、すでに東証が「独立役員」(役員なので取締役と監査役)を定義し、1名以上設置することを求めている。これがそのまま流用されるか、もっとはっきり定義するか、注目されるところ。

日経の報道では、「複数化」は、東証1部と2部に限る(すなわちマザーズ、ジャスダック、地方単独上場は除く)ということのようである。

2014年10月25日土曜日

日本取締役協会のコーポレートガバナンスコード案

昨日(10月24日)、日本取締役協会からコーポレートガバナンスコード案が公表された。先週の幹事会で報告があったので、内容は承知している。メディアは独立取締役の人数に関心があるだろうと思っていたら、その通り。

「独立役員3人か3分の1=企業統治の新コード案-取締役協会」という見出しのウェブニュースがあった。

先週の幹事会でこの点を私が質問したが、要するに「この辺が落としどころと考えた」ということらしい。私は、金融庁からでる本物のコードでは、「複数」になると予想している。モニタリングボードを指向する取締役協会としては、これは「過半数」にしておくのが良かったのではないかと思われる。

議題の整理は、16条:取締役会の議題の設定等に記載されているが、「各取締役からの提案及び意見を踏まえ・・・会社の経営戦略、リスク及び内部統制に関する主要な事項を定める・・」と記載されている程度で、業務執行に係る意思決定事項を減らす点には触れられていない。突っ込みが足りない印象。

19条には自己評価が入っている。これは前回の幹事会で私が盛り込んでもらうようにお願いした事項。(私が言わなくても入ったかもしれないが、、、)「取締役は・・・毎年自己評価を行いその結果を取締役会に提出する」となっており、取締役が個人として評価して、結果を報告せよ、というように書かれている。「取締役会としての自己評価」を私は意図したのであるが、ちょっと外れ。各自が評価するのは、その一部分で、全体としての評価が必要である。その作業は事務局が実施するか、または外部専門家に依頼することになる。

幹事会では議論になったが、3条には「議長は代表権を持たない非業務執行取締役が務めなければならない」としている。この点はしっかり踏み込めているので評価したい。

あと、ユニークなのは、4条「監査等委員会設置または指名委員会等設置」にしない場合の理由の開示である。ようするに監査役設置会社とするのであれば、その理由を説明せよ、というのである。ここでComply or Explainの考え方を入れている。

モニタリングボードを指向するのであれば、監査役設置はそれには向かない。それでも監査役設置であれば、どのように運用でカバーするのか説明する、または、モニタリングとマネジメントのハイブリッドの方が良いと考える理由を開示することになる。

ここでは、「監査等委員会設置または指名委員会等設置を相当としない理由」ではなく、「監査役設置にする理由」と読める。

有報提出会社&大会社&公開会社(会社法の)&監査役設置会社について、改正会社法は「社外取締役を置かない理由」ではなく、「置くことが相当でない理由」の株主総会での説明を求めている。

これに倣えば、「監査等委員会設置または指名委員会等設置を相当としない理由」と明言した方がよかったと考えられる。ただ、ほとんどの上場会社が監査役設置である現状から、それは行きすぎ、という配慮が働いたと思われる。ただ、取締役協会の立ち位置はそういうことだと思われる。

2014年10月12日日曜日

個人情報の保護対策

最近、大きな話題になった個人情報漏洩事件があった。筆者の愚息が20年ぐらい前に通信教育を受けていた時の個人情報が漏洩したらしい。

企業からの発表が、その後誤っていることが後日判明すると、さらに大きな問題となる。そのため、発表に当たっては、慎重かつ誠実に対応することが必要となる。漏洩した個人情報の数だけでなく、氏名・住所以外にどのような情報が含まれていたかについて、できるかぎり正確に発表しなければならない。

このような事態に対応して、調査委員会を設置する会社も多い。これを設置するかどうかの判断は、事態の重要性や緊急性に基づいて判断することになる。

調査委員会を設置する場合は、外部の公正な立場の人材をメンバーに入れることが、必要条件と考えたほうがよい。社内メンバーによる委員会の調査結果は、マスコミや社会には信用されない可能性が高い。その後、社会部記者に探りを入れられ、新たな事実が発覚したら一大事となる。社内調査委員会の結論は、どうしても「井の中の蛙」的な考えに陥りる。外部の専門家や有識者の意見を反映することが不可欠である。

筆者は、このような調査委員会のメンバーとして参加したことが何度かある。社外の人間が知らない会社の実態ををどこまで調査できるか、については限界がある。しかし、まず、社外のメンバーが入っているだけで会社の姿勢が変わる。外部の目が入っているだけで、会社の社長や事務局担当者の姿勢が変わるのである。

さらに、調査委員から調査内容の指針が示され、調査結果の分析・判断が行われる。情報が不足する場合は、実際に、社外の調査委員自身が会社の実務担当者にインタビューを行う場合もある。調査委員としても、その後に新たな事実が発覚して、調査内容に疑義が生じることは、自らのリスクであるため、しっかり調査をやらざるを得なくなる。この結果、調査委員会の報告書は、公正かつ、品質の高いものとなる。

このような調査委員会の報告書をそのまま、社外に発表する会社もあれば、その報告書をいったん社長が受けて、調査委員会の指摘への会社側の対応だけを発表する場合もある。そのような報告書は、企業秘密にかかわる事実が記載されていることもあるため、必ずしも調査委員会報告をそのまま社外に公表すべきであるとも言えない。

本来、このような発覚後の対策ではなく、個人情報が漏洩しない予防策が必要であることは言うまでもない。そのためには「心・技・体」が重要になる。

個人情報保護は、コンプライアンスないしリスク・マネジメントの一環として取り組む。何かの特効薬があるわけではない。地道に取り組むしかないのである。さらに、一回やれば終わる作業でもない。持続的な改善を続けなければならない。一気に完全を求めると失敗する。

最初に手をつけなければならないのは、個人情報保護の必要性が会社の倫理綱領やコンプライアンス・マニュアルに含まれているかどうかの検討である。その精神を役員・社員の全員に浸透させる。これが「心」の部分。

ツールとして、倫理綱領やホットライン(内部通報)の電話番号が書かれたカードを使うのが、「技」の例である。教育や日常業務の自己点検に社内のイントラネットを利用するのも有効なツールと言える。


組織上の対応として、本社や各部門における個人情報保護責任者を設置したり、内部通報制度を構築し、さらに内部監査により実務の状況をモニタリングする体制が「体」となる。ここで、個人情報保護法でも求められている社外からの苦情対応の強化・充実は欠かせない。社外からの相談・苦情・通報に対して、丁寧に対応することが顧客や消費者による信頼を高める。そのような情報を社内体制改善の糸口として、積極的に活用することを忘れてはならない。

(季刊誌「企業リスク」リスクの視点 2004年1月号を一部修正)

2014年10月10日金曜日

取締役会の議論の中身

社長と議案を出した担当役員だけが少し議論をして終わり、とか、経営会議ですでに決着ついているぎだいなので、ほとんど議論もなく決議、ーという取締役会は、マネジメントボードとしても失格。

10年以上前、担当していた会社の取締役会は、前段のような取締役会であった。しかし、最近、時々「貴社の取締役会では活発に議論されていますか?」と聞いてみると、「ウチは結構活発です。」という答えが返ってくる。この点は改善している会社が多いのかもしれない。

それでは、取締役会で活発に議論すれば良いかと言うと、そうでもない。事業機会だけでなく、事業リスクも含めてしっかり議論できるのであれば、マメジメントボードとしては合格かもしれない。

しかし、ここまででは不十分。コーポレートガバナンスの観点では、モニタリングボードとしての取締役会をどれだけ機能させるかがポイントとなる。

よって、問題は議論の中身。業務意思決定事項ばかりを活発に議論しても、モニタリングにならない。執行側がやると言っていたことが、期限までにしっかりできているか、最終的には、社長の経営能力を査定することまでしないとモニタリングボードにならない。

その大前提として、モニタリングボードとしてどうあるべきか、それが実際で来ていたかをどのように評価するかといった、ガバナンスの基本方針も議論して決めておく必要がある。このガバナンスの方針は、WEBサイトなどに開示するのがよい。(これは東証に出す「ガバナンスに関する報告書」や有報の「ガバナンスの状況」ではない。)

ということは、取締役会の議題の見直しをすることが必要になる。ここで、前稿で触れたように、監査役設置会社には限界がある。社外取締役を入れたとしても、モニタリングボードとしての議題を議論する時間が取れない。理由は、会社法で定められた取締役会の専決事項があり、それを執行側に決めてもらうことができないからである。

来年から導入される監査等委員会と委員会設置会社(指名委員会等設置会社に改称される)では、業務意思決定事項は特に重要な事項だけにすることができる。浮いた時間にモニタリングボードとしての議題が入れられる。

監査役設置会社でも、議題を追加して時間を使えば、同じように運営することもできる。ただし、社外取締役会に多くの業務意思決定に関わらせることは、社外取締役の有効な活用とは言えない。

取締役会の活性化

監査役全国会議に出た。
コーポレートガバナンス強化には、取締役会の活性化が欠かせない。これは監査役としても共通の認識。

しかし、業務意思決定の議題ばかり盛んに議論しても、マネジメントボード機能としては合格かもしれないが、モニタリングボードとしては失格。

会社法改正により、上場会社には社外取締役が導入される。

意思決定事項ばかりの決議に付き合わされ、一蓮托生になるのが社外取締役の役割ではない。

モニタリングボードとして取締役会を機能させるための社外、独立取締役の役割を認識しなければならない。この点、監査役設置会社は、専決事項を絞れないのがネックになる。

2014年10月8日水曜日

議題の整理(追加・削除)がモニタリングボードの前提

取締役会には、モニタリングモデルとマネジメントモデルがある。日本の取締役会はモニタリングボードに移行すべきであるという議論がある。それを促すために新設されたのが監査等委員会設置会社。

簡単に言うと、「意思決定」(重要な業務執行の決定)ではなく、「監督」を目的とした取締役会がモニタリングモデル。このためには独立取締役(社外取締役+追加的独立要件に合致した者)が大きくものを言う。

ただ、日本の会社法上、取締役会の決議事項のうち一部を業務執行者に権限移譲できるのは、指名委員会設置会社と監査等委員会設置会社である。監査役設置会社にはこれが認められない。

ただし、これは「委員会設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる」となっており、原則は監査役設置会社と同じだが、取締役会で決議したら「できる」規定となっている。

独立取締役が活躍して、取締役会をモニタリングボードにするためには、この取締役会の決議事項を見直すことが必要となる。

業務執行に係る事項ばかり取締役会で議論するのは、マネジメントボード。それに独立取締役は必要ない。また、そのような取締役会に独立取締役を入れたら、モニタリングボードになるということはない。

上場会社には、実質上、監査役設置会社にも社外取締役を入れざるを得なくなった。しかし、独立取締役が1名以上いたら、その取締役会はモニタリングボードになるかといえば、そうではない。

付議事項を見直し、ガバナンスの方針決定や取締役会の自己評価、中期計画の達成状況の議論などこれまで取締役会で議論していなかった議案を加え、できる限り業務意思決定事項を減らすという、議題の整理を前提とすれば、モニタリングボードになりうる。

一方、指名委員会等設置会社と監査等委員会設置会社は、複数以上の社外取締役が法定されているが、自動的にモニタリングボードになるのではない。「できる」規定になっている議題の削減をし、モニタリングに係る議題を加えることが、モニタリングボードになる前提となる。

議題の整理と共に重要な点は、独立取締役の意見をしっかり聞き、その意見を尊重する姿勢が議長にあることである。議事運営する議長の姿勢が悪いと独立取締役が生かせない。

要約:監査役設置会社の取締役会がモニタリングボードになる条件は次の通り。
1.議題の整理をする(ガバナンス方針の決定含む)
2.独立取締役を複数入れる(社外要件だけでは不十分、1名でも不十分)
3.独立取締役の意見を尊重するような議事運営
4.ガバナンス方針に従った取締役会の運営ができたか自己評価

取締役会の自己評価については、別稿を参照されたい。取締役会のPDCAのCが自己評価。

2014年10月6日月曜日

確定した紛争鉱物規則の波紋

(「企業リスク」リスクの視点201210月号)


アフリカのシエラレオネという国は西アフリカの大西洋岸に位置する国であるが、映画「ブラッドダイヤモンド」の舞台となったことで知られる。この映画では、傭兵に扮するレオナルド・ディカプリオが紛争ダイヤモンドを手にしようとするストーリーである。武装勢力が取り仕切っている採掘場の悲惨な様子や、その産地が偽装されロンダリング(洗浄)される実態が描かれている。

第二次大戦後最大数の死者を出し、武装勢力による住民に対する暴力行為が絶えないことから史上最悪の紛争地域と呼ばれるのはどこか。と問われるとシリア、リビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、コソボ、チェチェン、ソマリア、アフガニスタン、イラクなどは思い浮かんだとしても、アフリカのコンゴ民主共和国は出てこない。これまであまり報道されていないためである。

コンゴ民主共和国は中央アフリカに位置する国で、1997年まではザイール共和国と呼ばれていた。1994年に隣国のルワンダ共和国で起きたフツ族によるツチ族に対する大虐殺がこの紛争の始まりとされている。実は、コンゴ民主共和国とその周辺国における紛争は、死亡者数が540万人に上る世界最大の紛争と言われているのである。

この紛争地域は、地下資源の宝庫であり銅、コバルトをはじめとする鉱物を豊富に産出する。コンゴ民主共和国とその周辺国においては、武装勢力が非人道的な行為を繰り返し、住民に鉱物を採掘させてそれを資金源としている。したがって、それらの鉱物を購入することは、結果としてその武装勢力に資金提供することになる。そのため、企業は人権保護の見地から、このような紛争鉱物(conflict minerals)を製品に使用することを避けなければならない。

人権保護はCSRの観点から重要なテーマである。東南アジアの生産委託先で児童労働が行われていたとして、米国のスポーツ用品会社に対して不買運動が起こった。この事件はCSR関係者には良く知られている。紛争鉱物も人権という点では同じであり、CSRの観点から調達に気を付けることが必要となる。

しかし、企業の自主努力だけでは、対応の徹底に限界がある。2008年に人権保護に対して各国がもっと関与すべきであるという趣旨のラギー・フレームワークが国連で採択された。これに呼応して、米国は企業を規制するための法律(ドッド・フランク法1502条)を成立させた。

この法律は証券取引所法を改正することを規定しており、その証券取引所法の運用規則としてのSEC規則案が201012月に公表された。その後今年の822日にようやくそのSEC規則が確定した。このように最終化が難航したのは業界・政界からの意見調整に手間取ったからと考えられる。

スズ鉱石、タンタル鉱石、タングステン鉱石、金鉱石の4鉱物が紛争鉱物と定義され、コンゴ民主共和国等において算出する紛争鉱物を製造等に使用することにより武装勢力に資金援助している米国上場企業は、その旨を記載した紛争鉱物報告書をSECに提出する。これには外部監査を受けることも義務づけられている。これらの4鉱物は携帯電話を始めとする電子機器に使用されていることから、部品のサプライヤーとしての日本企業にも少なからず影響を与えると予想される。

米国の法律は紛争鉱物全般に対する規制ではなく、特定地域の特定鉱物のみを対象としていることから、政治的な思惑が見え隠れすることは否めない。


この規制により、企業がこのような紛争鉱物を製造等に使用することを避ける動きがすでに出ている。しかし、この規制は開示と監査を求めるだけであり、その鉱物の使用を禁止するものではない。このため、CSRには反するが、企業はいつまでも紛争鉱物の使用を開示することができる。

このテーマにおける大きな課題は消費者の意識向上である。たとえば「紛争鉱物は使用していません」と製品表示することの意味を消費者が理解するようになれば、企業の動きにも影響を与えることができる。そこまで行くのには少し時間がかかりそうである。


2014年10月5日日曜日

取締役会の自己評価

(「企業リスク」 リスクの視点 2013年1月号)

国上場企業を対象にした全米取締役協会(NACD)の調査結果(2011年)によれば、91%が取締役会の評価をしており、87%が委員会の評価をしている。44%は各取締役の評価を実施している。

これには背景がある。ニューヨーク証券取引所(NYSE)の上場規程には、取締役会の自己評価が規定されているのである。外国企業を除くNYSE上場企業は、コーポレートガバナンス・ガイドラインにおいて、取締役会等のパフォーマンス評価を年次に実施することが規定されている。監査委員会、報酬委員会及び指名・コーポレートガバナンス委員会の各委員会が自己評価することも規定されている。ナスダックにはそのような規定はないが、ベストプラクティスとして定着していると言われている。

わが国における内部統制基準の「Ⅰ.内部統制の基本的枠組み」では取締役会について次のように記載されている。『取締役会は、経営者の業務執行を監督することから、経営者による内部統制の整備及び運用に対しても監督責任を有している。取締役会は、「全社的な内部統制」の重要な一部であるとともに、「業務プロセスに係る内部統制」における統制環境の一部である。』要するに、取締役会も内部統制としての役割を担っているということが明言されている。

内部統制にPDCAは欠かせない。取締役会も例外ではない。実効性ある取締役会を実現するための当面の目標と中期的な目標を策定し、その目標を達成するための具体的な実行計画を立案する(Plan)。その計画を実行する(Do)。次にCheckが来る。これが取締役会の自己評価である。取締役会だけではなくて取締役各自の評価があり、それにはもちろんCEOCFOを評価することも含む。その評価結果を基にして改善活動を実施する(Act)のである。

評価を実施するためには、比較対象とするあるべき姿(規準)が必要となる。それなしに評価を行うと評価の軸がぶれる。全米取締役協会から「Director Professionalism」というタイトルの調査報告書が出ており、そこには取締役会の自己評価についての6つの条件が記述されている。「業務執行からの独立性」、「評価のプロセスと目標の決定」、「企業に合った自己評価の設計」、「虚心坦懐・機密保持・信頼性の確保」、「定期的な自己評価プロセスのチェック」、「自己評価の手続と規準の開示」がその6つである。

これは米国型の取締役会だけに当てはまる条件であり、わが国における監査役設置会社の取締役会には適合しないと考えるのは早計である。監査役設置会社の取締役会においては、業務執行と監視監督が混然一体となっており、業務執行とは独立していないように見える。しかし会社法は、取締役による相互の監視監督を求めている。すなわち、自ら業務執行する取締役に対して、担当外の業務に関しては業務執行からの独立性が要求されているのである。このように考えると上記の全米取締役協会による条件は、日本の上場企業にも当てはめることができることが解る。

一連の企業不祥事を受けて、コーポレートガバナンスの強化が求められている。それを受けて会社法改正要綱案には、ガバナンス関連規定の改正が盛り込まれている。監視監督委員会設置会社の新設がそれに含まれるのは周知のとおりである。先日、東京証券取引所は去る8 月1 日、上場企業に対して、監視監督委員会設置会社への移行を検討するとともに、社外取締役の設置を求める「独立した社外取締役の確保のお願い」を上場企業に通知している。

会社法は、「形」を決めているが、その運営は各社に委ねている。結局、良いガバナンスと悪いガバナンスはその運営で決まる。「形」の議論から入ると、どうしても米国型、ドイツ型、日本型のどれが良いか、といった形式論となるが、本来は「形」ではなく、どのように取締役会を運営するかであろう。


その運営の中で、キーとなるのは自己評価と開示であると筆者は見ている。自社の取締役会運営方針をガバナンス方針として開示し、その規準に基づいて取締役会の自己評価を行う。PDCAを回すに当たって、Cをうまく機能させることが肝心となる。そういう意味で、上記の6つの条件は大いに参考にしなければならない。

2014年10月4日土曜日

IFRS No15収益認識基準-どちらが原則主義?

今年の5月28日にIFRS15号「顧客との契約による収益」が公表された。これは米国との調整の上作られた会計基準であり、そういう点では世界初。この点については米国基準と国際基準が同じになる。2017年1月1日から開始する事業年度から適用となる。IFRSは早期適用可能だが、米国基準はこれができないそうだ。

日本の基準はどうなっているかというと、企業会計原則では、収益認識基準についての記述が以下の通りである。これ以外には、工事契約に関する会計基準(企業会計基準第15号)があるが、IFRS15号は、実は87ページあり結構詳細。IFRSは「原則主義」(principle base)のはず。結局、日本基準の方が収益認識については、原則主義的な会計基準になっている。

ちなみに、アビームさんのウェブサイトの解説は次の通り。

「原則主義」は、会計基準の設定にあたり企業が会計処理の方法を判断するときの考え方や枠組みだけを示す方法です。IFRSでは、原則や枠組みと、最小限のガイダンスだけが示されており、「原則主義」に基づく会計基準であるといわれています。(中略)
これに対して、日本基準や米国基準は、「規則主義」に基づく会計基準であるといわれています。「規則主義」では、どの様な会計処理を行うべきかを、会計原則以外に詳細なガイダンスで、具体例を含めて細かく定めています。また、例外規定の適用の可否を判断するための数値基準等があらかじめ示されています。<筆者注:日本語では規則主義ではなく「細則主義」というのが普通>

細則主義の米国基準と原則主義のIFRSを同じにするために、IFRSが原則主義を捨てたのかもしれない。または原則主義で押し通すのは、無理があるということかもしれない。
いずれにしても、日本基準だけ取り残された。

<企業会計原則>
 売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。ただし、長期の未完
成請負工事等については、合理的に収益を見積り、これを当期の損益計算に計上することができる(注6)(注7)

〔注6〕実現主義の適用について(損益計算書原則三のB)
委託販売、試用販売、予約販売、割賦販売等特殊な販売契約による売上収益の実現の基準は、次によるものとする。
(1) 委 託 販 売
委託販売については、受託者が委託品を販売した日をもって売上収益の実現の日とする。従って、決算手続中に仕切
精算書(売上計算書)が到達すること等により決算日までに販売された事実が明らかとなったものについては、これを当
期の売上収益に計上しなければならない。ただし、仕切精算書が販売のつど送付されている場合には、当該仕切精算書
が到達した日をもって売上収益の実現の日とみなすことができる。
(2) 試 用 販 売
試用販売については、取引先が買取りの意思を表示することによって売上が実現するのであるから、それまでは、当
期の売上高に計上してはならない。
(3) 予 約 販 売
予約販売については、予約金受取額のうち、決算日までに商品の引渡し又は役務の給付が完了した分だけを当期の売
上高に計上し、残額は貸借対照表の負債の部に記載して次期以降に繰延べなければならない。
(4) 割 賦 販 売
割賦販売については、商品等を引渡した日をもって売上収益の実現の日とする。
しかし、割賦販売は通常の販売と異なり、その代金回収の期間が長期にわたり、かつ、分割払であることから代金回
収上の危険率が高いので、貸倒引当金及び代金回収費、アフター・サービス費等の引当金の計上について特別の配慮を
要するが、その算定に当っては、不確実性と煩雑さとを伴う場合が多い。従って、収益の認識を慎重に行うため販売基
準に代えて、割賦金の回収期限の到来の日又は入金の日をもって売上収益実現の日とすることも認められる。

〔注7〕工事収益について(損益計算書原則三のBただし書)
長期の請負工事に関する収益の計上については、工事進行基準又は工事完成基準のいずれかを選択適用することができる。
(1) 工事進行基準
決算期末に工事進行程度を見積り、適正な工事収益率によって工事収益の一部を当期の損益計算に計上する。
(2) 工事完成基準
工事が完成し、その引渡しが完了した日に工事収益を計上する。



2014年10月2日木曜日

時代は逆行するのか?

クラブ関東で浜距子先生の話を聞いてきた。同志社大学教授。

アベノミクスは、「阿保のミクス」と一刀両断。
日本は病(やまい)にかかっている「取り戻したがり病」
強い日本を取り戻す、強い経済を取り戻す、、、

経済活動は、成長、競争、分配であるが、アベノミクスは成長と競争に重点を置き、分配が弱い。
デンマークは、貧困率が世界最低であるが、日本はデンマークの3倍。

「社会の包摂性」が低くなり構造的失業が増加している。
これが人手不足を助長している。
包摂性(subsumption)というのはマルクス経済学か?

これまでの日本=包摂性高く、均一性高い
 =>年功序列、終身雇用、護送船団

北朝鮮、ロシア=包摂性低く(排他性高い)、均一性高い

ヨーロッパ=包摂性低く、多様性高い

図に表すと次の通り。








2014年10月1日水曜日

独立取締役を活かすためには取締役会の議題がポイント

指名委員会等設置会社(これまでの委員会設置会社)と監査等委員会設置会社(会社法改正で導入されることになった)では、業務執行に係る意思決定は業務執行者に権限移譲し、取締役会の議題を監督に係る議題だけにすることができる。このため社外の独立取締役は、監督に専念でき、モニタリングボードの前提が確保できる。

しかし、監査役設置会社ではこれが会社法上できないので、業務意思決定が議題としてあがってくる。これが一つの要因で、会社の業務を知らない社外の取締役は、役に立たないという議論になる。

また、当然この場合、マネジメントボードとモニタリングボードのミックスまたはハイブリッドになるので、モニタリングで頑張ろうとする独立取締役の出る幕が限られる。

実はそれだけでなく、業務意思決定に賛成した結果責任を独立取締役が取らされることになる。あの時賛成したのに、今になって社長を責めるのはおかしい、と言われかねない。社内取締役と同じ穴のムジナ化するリスクを抱える事になる。

こういう話を今日、取締役協会でした。最後のところは、東大の先生におしえてもらった。監査役設置である限り、解決が難しい問題。ただし、運用でできる限り、モニタリングボードに近づけることはできるはず。

あと、取締役会の自己評価の必要性も同じ東大の先生が言ってくれた。これは是非ガバナンスコードに入れて欲しい。


2014年9月29日月曜日

UKはガバナンス改革の一環としてKAMを導入

「読んでためになる監査報告書」の動きは、UK&アイルランドですでに始まっている。

すなわち、2012年10月1日以降開始事業年度より、監査報告書にKAMが導入されている。
UK&アイルランドの優れている点は、ガバナンス改革の一環として監査報告書を改革しようという点。

監査人と監査委員会が役割分担して、それぞれが情報提供すべし、ということになった。
対象はコーポレートガバナンスコードの採用が義務付けられる会社(Premium Listed Companies)。

具体的には、次の通り。

1
財務諸表を利用者が読むに当たっての留意事項的な情報=>監査委員会が情報提供(下記の赤字
2
監査人が監査を実施するに当たって重要と考えた事項=>監査人が監査報告書で情報提供(これがKAM)

なお、監査委員会による報告書は、日本会社法に定め監査役監査報告書や監査委員会監査報告書ではなく、有報における「コーポレートガバナンスの状況」のようなものと考えられる(報告書ではなくcommunicationとしている。年次報告書の記載する)。具体的にはガイダンスに次のように書かれている。適法かどうかの監査意見を書けというのはない。


5.2 The audit committee section should include, inter alia:
· a summary of the role of the audit committee;
· the names and qualifications of all members of the audit committee during the period;
· the number of audit committee meetings;
· the significant issues that the committee considered in relation to the financial statements
and how these issues were addressed, having regard to matters communicated to it by
the auditors13;
· an explanation of how it has assessed the effectiveness of the external audit process and
the approach taken to the appointment or reappointment of the external auditor, and
information on the length of tenure of the current audit firm, when a tender was last
conducted, and any contractual obligations that acted to restrict the audit committee’s
choice of external auditors (see paragraph 4.26); and
· if the external auditor provides non-audit services, how auditor objectivity and

independence is safeguarded (see paragraph 4.46).

("Guidance on Audit Committees" Financial Reporting Council September 2012)


監査報告書が変わる-KAMの導入

アナリストに言わせると、財務諸表が適正である場合には、「監査法人名と監査法人が交代しているかしか見ていない」とのこと。上場会社の財務諸表に対する監査報告書は、基本読まれていない。

監査報告書を個性化し、読んでもらおうという動きが現実的になってきた。

これまで監査報告書の文言は、標準化されていることに意義があるというの考え方であった。これは、英語ではpass/failモデルまたはbinary modelと呼ばれ、日本語では○×モデル。
合格か不合格か大きい文字で書いて終わりでもよいが、その前提となる監査の対象や一般的なやり方が標準文言として書かれている。


なお、標準と異なる監査報告書は、限定付き適正意見、不適正意見(これは上場廃止理由になる)、意見差し控え(これも上場廃止理由になる)がある。ゴーイングコンサーン(継続企業の前提)に関する記述が監査報告書に書かれるというのも標準から外れた記述になる。こうゆう監査報告書は読まれる。

なぜ、監査報告書が標準文言になっているかというと、○か×かを書くのが目的であり、それ以外の情報は、最小限にするためである。×の場合には、なぜ×か、どれだけ×かについて書いて、財務諸表の利用者に知らせる必要がある。しかし、○の場合は、財務諸表はそのまま使ってよいので、追加的なコメントは不要となる。

ゴーイングコンサーン情報は、監査人が「この会社潰れそう」ということを知らせようというものではない。会社が継続的に活動する前提で決算している、もし会社が潰れるのであれば、その時点でたとえば資産を清算価値で評価し直すことが必要となる。そいうなると決算が大きく変わる。「この会社は潰れそうかもしれないが、決算は継続企業を前提として組んでいます」というのが、監査報告書のゴーイングコンサーン情報の意味である。

「でも監査人が監査報告書にいろいろ情報を書いてくれたら利用者に有用な情報になるのでは?」という考えもありうる。○でも、ギリギリ○の場合、どんなところがギリギリだったのか、または何の問題もなく、余裕で○だったのかを書いておく。○×の基本はそのままで、監査上どんなことに気を付けたのかに関する情報を監査報告書に記載する、というのが新しい考え方である。

こんなことを書くことになったら、経営者の抵抗は大きいはず。経団連は反対するかもしれない。

最近の財務諸表は、「確率変数のかたまり」のようになっている現状から、アナリストは、誰が監査したのかだけでなく、どうゆう監査をしたのかという情報を有用と認めるのではないか。(井上善弘編著 「監査報告書の新展開」 日本監査研究学会リサーチシリーズ12 平成269 同文館 P10
国際監査基準(ISA701,701 共にまだ公開草案)の考え方を大雑把に言うと次の通り。
監査人が提供する保証以外の情報には、
1
財務諸表を利用者が読むに当たっての留意事項的な情報
2
監査人が監査を実施するに当たって重要と考えた事項

上記2を監査報告書に記載する。この監査人が記載する事項をKey Audit Matters(KAM)としている。

なお、KAMは、大学の先生はカムと発音している(昨日の監査研究学会では全員カム)が、イギリス人はそうかもしれないが、アメリカ人はたぶんキャムと発音すると思う。大学の先生はGAAP(一般に公正妥当と認められた会計原則)はガープと発音するが、実務家はギャップに決まっている。その類になるか。

2014年9月27日土曜日

マネロンと海外賄賂に甘い日本

昨日の日経 「真相深層」ーーマネロンに甘い日本
「 日米欧など36カ国・地域でつくるFATFのパリ本部に昨秋、日本から一通の書簡が届いた。差出人は麻生太郎財務相。「資金洗浄対策を強化する法整備を早急に進める」という趣旨だった。
 日本の金融機関がテロ資金の温床になっているわけではない。FATFは日本の制度にツケ入る隙があることを問題視しているのだ。そのうちの一つが、日本で銀行口座を開く際の本人確認が甘いことだ。保険証など顔写真のない身分証明書でも口座を開けるため、他人名義の口座が不正資金の海外送金に使われるリスクがある。犯罪組織などの国内送金を差し止める法的手段がないことも指摘されていた。」
もう10年以上前からFATFからの指摘があったはず。未だに本人確認が甘い?
しっかり本人確認することは、オレオレ詐欺(かーさん何とか詐欺が正式名称?)対策にもなると思われる。
これと似ているが、OECDからの摘発が甘いと言われているのが、不正競争防止法。 米国の海外腐敗行為防止法(ロッキード事件の後にできた法律)と同等の規定がこの法律にある。アジアでビジネス拡大する日本企業の足を引っ張ることになるのを避けるためか。これは「当たり」という新聞記事が出ても、摘発されていない。



監査報告書の新しい考え方

財務諸表に対する監査報告書は、証取監査が始まって以来、少しずつ長文化している。しかし、その内容を見ると、次の2つの特徴がある。長くなっているのは概要区分と呼ばれる監査のやり方を書いた部分のみであることと、最初から変わらず定型文である点である。

国際監査基準が改定されようとしている。これまで変わらなかった定型文でなくなりそうである。

Key Audit Matters, KAM(監査上の重要事項)を監査報告書に記載することが提案されている。これが確定すると日本の法令への反映が前提とはなるが、日本の監査報告書が変わる
監査人が、監査を実施するにあたってq、重要と考えた事項とその判断を記載する。こうなると、適正意見であっても、各社ごとに監査報告書の記載が変わる。
今、開催されている日本監査研究学会の統一論題のテーマ。

2014年9月21日日曜日

COSOフレームワークの改訂

(「企業リスク」リスクの視点 20137月号 創刊10周年記念)

10周年を記念する巻頭文として、ふさわしいテーマはないかと思案していたところ、514日にCOSOフレームワークの改訂版が公表された。

COSOフレームワークは1992年に公表されている。その後、カナダ、英国、南アフリカ、オーストラリアなどで内部統制の枠組みがそれぞれ公表されているが、それらの検討の基礎にはCOSOがあった。当時、日本においても、このような枠組みの議論が盛り上がるかと思われたが、特にそのような動きは起こらなかった。

サーベンスオクスリー法(SOX法)は、COSOが公表されて10年後に成立した法律である。COSOは、そのまま米国のSOX404条の内部統制制度の基本となった。これによって、COSOは名実共に内部統制のフレームワークとしてのグローバルスタンダードの地位を確保したのである。

わが国の内部統制報告制度の設計においては、そもそも内部統制監査制度を導入することを目的として始まった。このため、監査基準を策定する役割を担う金融庁企業会計審議会がこの制度設計に取り掛かった。しかし、その時点で内部統制監査の前提となる内部統制の基本的枠組みがわが国にはなかった。内部統制の枠組みは、財務諸表監査(会計監査)における会計基準に相当する。内部統制のあるべき姿が示されていないのに、それを監査することはできないのである。

このため、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(「内部統制基準」)の第1部は、「内部統制の基本的枠組み」となっている。これがわが国におけるCOSOに相当する。わが国の場合は、内部統制監査制度を導入するに当たり、その前提となる内部統制の基本的枠組みも一緒に作ったということになる。

さて、本家とも言えるCOSOが改訂された。COSOは、米国の制度の基礎になっていることから、これが変わると米国だけでなく世界各国の米国上場企業に影響を与える。このため、安易な改訂を避けていたと想像されるが、冒頭のとおりいよいよその改訂が公表された。

COSOは、わが国でもその翻訳本が多く売れ、一時品切れになったぐらいなので、本誌の読者の中には、読まれた方も多いのではないかと思う。読みにくいのは翻訳だけの問題ではなかったのである。また、公表されてから、1992年から20年以上経過しており、ビジネス環境は大きく変わった。現在の環境にあわせ、さらに分かりやすくするという課題を受けてCOSOが改訂された。

COSOの改訂作業は2011年から開始されていた。2012年には公開草案が発表され、同年末には改訂版が公表されるとされていたが、これが少し遅れ、本年5月の公表となった。
改訂版のCOSOにおける内部統制の目的と構成要素にはほとんど変更がない。形式的には、目的の一つである「財務報告の信頼性」が「報告の信頼性」に変更されたのが唯一の変更である。業務の有効性・効率性の内容が一部拡張されているようである。

SOX404条に対応する米国上場企業やCOSOに基づいて内部統制を整備・運用している企業が、COSOの改訂を受けて影響を受けそうなのは、「17の原則」ではないかと思われる。これらの原則は「どの企業にも当てはまる」とされていることから、内部統制の文書化や評価に当たって、17原則に対応する内部統制が洩れなく含まれているかを検討することが必要かもしれない。SOX404条における対応は、今後明らかになると考えられる。

振り返ると、わが国の内部統制の基本的枠組みでは、COSOとほぼ同じフレームワークが採用されたが、ビジネス環境のIT化を反映して、内部統制の基本的要素として「ITへの対応」が追加された。さらにまた、内部統制の目的として「資産の保全」が追加された。これは、資産の保全に関わる内部統制を財務報告の信頼性と区別し、制度上対象とならないことを明確にする効果があった。

わが国の内部統制の基本的枠組みはCOSOを大いに参考にして作られたが、ビジネスの現状を反映し、分かりやすさにも配慮したCOSOの改訂版だったとも言える。ただ、COSOが変わったから自動的に日本の制度が変わるわけではない。今後、わが国でも改訂の検討が行われるかどうか注目されるところである。

本誌は平成1510月の創刊から10年経過しました。読者の皆様には本誌に長い間お付き合いをいただき心から感謝いたします。なお10周年を記念して紙面を一新しました。今後とも本誌をご愛読のほどよろしくお願いいたします。


Memo on Integrated Reporting "Discussion Paper" announced in Septemer 2011

( Discussion Memo for Katerva Award Conference in Tokyo in March, 2012 )
You don’t know what you’re missing
Finally IFRS is going to be the single unified standards for Financial Statement in the near future.

As I said in my speech this morning, the business leaders are expected to report societal purpose and how such purpose connects to or integrate into business.
On top of financial standards global unification, there is the reality that the tangible assets included in financial statements reflect a steadily diminishing component of shareholder value.

Based on the study by Ocean Tomo, tangible assets represented 83 percent of market value in 1975 and they represented only 20 percent in 2010 in S&P 500 companies.
Current financial statements do not represent the “true” value of company.

Aside from financial statements, today, companies produce an increasing array of reports; Governance issues including executive pay are sometimes reported on, as well as at least some of the impacts of the business on society and the environment.

But these are often reported to different audiences, in different formats and at different times. In this context, the idea of simplifying all the reporting under a consistent banner—integrated reporting—is very attractive.


The International Integrated Reporting Committee (IIRC), which was formed in 2010 under the support by the Prince of Wales Accounting for Sustainability Project and the Global Reporting Initiative. In addition to business executives and investors, representatives from the major accounting bodies, standards setters and security regulators sit on this committee.

The International Integrated Reporting Committee announced Discussion Paper on Integrated Reporting in Septemer 2011.


 The basic idea
Integrated reporting is a process, not a product:
For the stakeholder, the report is intended to increase the understanding of the company—its management, strategy and operations, and its perils and prospects.

The benefit of integrated reporting is that it allows a company to better understand, manage and report on multiple dimensions of value. We believe this can help companies make better decisions and to manage businesses in a way that creates shared value.
How does integrated reporting relate to other reporting frameworks?
1.    Environmental and societal impact reporting standards, however, are less well developed. An early incarnation, environmental reporting, took hold in the 1980s for a variety of reasons:

Some companies were driven by progressive environmental practices; others may simply have wished to portray themselves in that manner; and many others were likely spurred by litigation—or the threat of litigation—that surrounded industrial waste sites, environmental disasters and the like.

Early efforts were mostly sporadic and fragmented, such as inserting brief sections on environmental issues into annual reports, with no linkage to strategy or performance and no attempt to obtain independent assurance.

2.    A decade later, as reports were broadened to include other social issues, they became known as corporate social responsibility, citizenship or sustainability reports. In both their earlier and later forms, these reports were often published separately from financial reports.

Standardization, however, remains elusive. The closest thing to a uniform sustainability reporting framework is the Sustainability Reporting Guidelines (GRI Guidelines) by the Global Reporting Initiative (GRI), which is a sustainability reporting framework widely used around the world.6. The GRI Guidelines are a voluntary standard and lack any regulatory mandate.

According to the GRI, more than 4,000 professionals around the world have been trained in the use of the GRI Guidelines, which are available in 25 languages. Yet despite this progress, out of more than the estimated 63,000 multinational corporations around the world, only a fraction produces sustainability reports.7

The Corporate Register, a UK-based organization collecting reports from all regions, sectors and companies of all sizes, states that more than 4,700 sustainability reports were issued in 2010, up from approximately 3,200 in 2007.8

At the GRI’s website, fewer than 2,000 reports explicitly stating that they were created using the GRI Guidelines were registered in 2010.

Beyond the GRI Guidelines a proliferation of competing sustainability-related frameworks, principles, codes and management systems has arisen. The list includes AccountAbility’s AA1000 principles for managing and reporting sustainability performance; the Connected Reporting Framework;

Social Accountability International’s SA8000 for managing labor practices; International Standards Organization’s ISO26000 on sustainability management; the Greenhouse Gas Protocol; and many more.

Add in a regulatory patchwork—the US Security and Exchange Commission’s Management Discussion and Analysis (MD&A) disclosure rules; the UK’s Enhanced Business Review requirements; the EU’s Modernization Directive 2003 (now adopted by all member states) to include nonfinancial key performance indicators in the annual report;
What Might an Integrated Report Looks Like
According to the IIRC:
Integrated Reporting brings together the material information about an organization’s strategy, governance, performance and prospects in a way that reflects the commercial, social and environmental context within which it operates. It provides a clear and concise representation of how an organization demonstrates stewardship and how it creates value, now and in the future. Integrated Reporting combines the most material elements of information currently reported in separate reporting strands (financial, management commentary, governance and remuneration, and sustainability) in a coherent whole, and importantly:Shows the connectivity between them; and Explains how they affect the ability of an organization to create and sustain value in the short, medium and long term.
Guiding principles underpinning the preparation of an integrated report:

l  Strategic focus:
l  Connectivity of information:
l  Future orientation:
l  Responsiveness and stakeholder inclusiveness:
l  Conciseness, reliability and materiality:

The elements of an integrated report as suggested by the IIRC in the discussion paper are:
l  Organizational overview and business model:
l  Operating context, including risks and opportunities:
l  Strategic objectives and strategies to achieve those objectives:
l  Governance and remuneration:
l  Performance:
l  Future outlook:

Leading Practices
Only one country has mandated comprehensive, fully integrated reporting to date: South Africa, where listed companies must abide by the King III Code on Corporate Governance by providing an annual integrated report in addition to audited financial and sustainability reports (or explain why they are not providing the report).

In line with the expectation that integrated reporting should be a journey that South African companies have been encouraged to embark on from March 2011 onwards, analysis of the South African experience to date has not revealed any comprehensive examples of an integrated report. Deloitte South Africa recently carried out a high-level analysis of listed company reporting practices and concluded that, on average, companies are less than half way along the journey toward integrated reporting. Those companies that had embraced the concept of integrated reporting are, however, well progressed and scored between 60 and 75 percent against the Deloitte South Africa criteria.
Conclusion

There is no short-term outcome of global uniform standards for integrated reporting. It is an on-going process; companies should keep challenging to create better integrated reporting on top of mandatory financial reporting based on the existing guideline including IIRC guideline and GRI guidelines.