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2014年9月21日日曜日

ブランドに感謝しそれを守ること

(「トップが綴るいま伝えたい!感謝の心」(PHP研究所 2011年11月 掲載原稿)

 過去を振り返れば、私は何度もブランドに助けられた。特定のサービスをある会社に買っていただこうと考えていたところ、こちらからお願いする前に、先方から声をかけていただいたことが何度もあった。もちろん、他社と比較して当社のサービスを買っていただくことができたのもブランドのお陰と思っている。ブランドは、大きな財産である。

良い広告をし、良いモノ・サービスを提供することは大事である。しかし、同じ品質の広告を同じ量だけ行い、同質のモノ・サービスを提供しても、ブランドの価値分だけ差がつく。一方、モノ・サービスの品質低下によりブランド価値が下がり、品質の高いモノ・サービスの提供を続ければブランド価値が向上する。

創業者の思いが込められてブランドは生まれ、それを引き継ぐ者によるブランド価値の向上には長い時間を要する。しかし、ブランド価値は一瞬にして低下する。コンプライアンス違反などの企業不祥事がその例である。

日本の経営者は、内部統制、リスクマネジメント、コンプライアンス対策、事業継続計画(BCP)などのブランド価値の「守り」の面についての関心が一般に薄い。これはブランド価値の向上を続けていれば、その価値のマイナス要因があったとしても、帳消しになるという意識が強いからではないかと私は考えている。

過去には企業不祥事の発生により、ブランド価値が地に落ち、消え去った会社があった。私の同業にもそのような会社があった。しかしよく考えてみると、日本経済全体に勢いがあった時代には、経済成長とともに多くの会社のブランド価値が向上した。少しぐらいのマイナス要因があったとしても、それを打ち消す力があったのである。

これからはどうか。日本経済は成熟し若いころの勢いがなくなってきている。ブランド価値のマイナス要因が起こったときに、価値向上の力でそれを打ち消すことはできないと考えなければならない。

自社ブランドに対する感謝と誇りを忘れた経営者や社員がいたとしたら、その会社は長続きしない。ブランドに感謝し、どうしたらそれを守ることができるかについて、社員一人ひとりが考えて行動する会社が生き残れるのである。

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