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2014年10月5日日曜日

取締役会の自己評価

(「企業リスク」 リスクの視点 2013年1月号)

国上場企業を対象にした全米取締役協会(NACD)の調査結果(2011年)によれば、91%が取締役会の評価をしており、87%が委員会の評価をしている。44%は各取締役の評価を実施している。

これには背景がある。ニューヨーク証券取引所(NYSE)の上場規程には、取締役会の自己評価が規定されているのである。外国企業を除くNYSE上場企業は、コーポレートガバナンス・ガイドラインにおいて、取締役会等のパフォーマンス評価を年次に実施することが規定されている。監査委員会、報酬委員会及び指名・コーポレートガバナンス委員会の各委員会が自己評価することも規定されている。ナスダックにはそのような規定はないが、ベストプラクティスとして定着していると言われている。

わが国における内部統制基準の「Ⅰ.内部統制の基本的枠組み」では取締役会について次のように記載されている。『取締役会は、経営者の業務執行を監督することから、経営者による内部統制の整備及び運用に対しても監督責任を有している。取締役会は、「全社的な内部統制」の重要な一部であるとともに、「業務プロセスに係る内部統制」における統制環境の一部である。』要するに、取締役会も内部統制としての役割を担っているということが明言されている。

内部統制にPDCAは欠かせない。取締役会も例外ではない。実効性ある取締役会を実現するための当面の目標と中期的な目標を策定し、その目標を達成するための具体的な実行計画を立案する(Plan)。その計画を実行する(Do)。次にCheckが来る。これが取締役会の自己評価である。取締役会だけではなくて取締役各自の評価があり、それにはもちろんCEOCFOを評価することも含む。その評価結果を基にして改善活動を実施する(Act)のである。

評価を実施するためには、比較対象とするあるべき姿(規準)が必要となる。それなしに評価を行うと評価の軸がぶれる。全米取締役協会から「Director Professionalism」というタイトルの調査報告書が出ており、そこには取締役会の自己評価についての6つの条件が記述されている。「業務執行からの独立性」、「評価のプロセスと目標の決定」、「企業に合った自己評価の設計」、「虚心坦懐・機密保持・信頼性の確保」、「定期的な自己評価プロセスのチェック」、「自己評価の手続と規準の開示」がその6つである。

これは米国型の取締役会だけに当てはまる条件であり、わが国における監査役設置会社の取締役会には適合しないと考えるのは早計である。監査役設置会社の取締役会においては、業務執行と監視監督が混然一体となっており、業務執行とは独立していないように見える。しかし会社法は、取締役による相互の監視監督を求めている。すなわち、自ら業務執行する取締役に対して、担当外の業務に関しては業務執行からの独立性が要求されているのである。このように考えると上記の全米取締役協会による条件は、日本の上場企業にも当てはめることができることが解る。

一連の企業不祥事を受けて、コーポレートガバナンスの強化が求められている。それを受けて会社法改正要綱案には、ガバナンス関連規定の改正が盛り込まれている。監視監督委員会設置会社の新設がそれに含まれるのは周知のとおりである。先日、東京証券取引所は去る8 月1 日、上場企業に対して、監視監督委員会設置会社への移行を検討するとともに、社外取締役の設置を求める「独立した社外取締役の確保のお願い」を上場企業に通知している。

会社法は、「形」を決めているが、その運営は各社に委ねている。結局、良いガバナンスと悪いガバナンスはその運営で決まる。「形」の議論から入ると、どうしても米国型、ドイツ型、日本型のどれが良いか、といった形式論となるが、本来は「形」ではなく、どのように取締役会を運営するかであろう。


その運営の中で、キーとなるのは自己評価と開示であると筆者は見ている。自社の取締役会運営方針をガバナンス方針として開示し、その規準に基づいて取締役会の自己評価を行う。PDCAを回すに当たって、Cをうまく機能させることが肝心となる。そういう意味で、上記の6つの条件は大いに参考にしなければならない。

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