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2015年2月20日金曜日

二重非課税対策

BEPS(Base Erosion and Profit Shifting)の議論が盛んである。OECDが下記のように「今年末までに計15の行動計画」を出すとのこと。まずこの議論の前提は、OECDのルールがそのまま各国の税制に反映されるようなことはなく、各国で議論して税制改正を行うことが必要ということ。日本の財務省は、基本としては(財務省の担当の方2名に話しを直接聞いた事がある)、できる限りそのまま日本の税制に反映する、方向の模様。しかし、アイルランドやオランダなど現状の税制により、国として有利な立場にあるところは、すんなり税制改正するかどうか不透明、ということのようである。当然、現状の税制では不利な状況にある米英は改正に積極的。
 なお、日本ではアマゾンのKindle版は、海外のサーバーから直接購入するので、国内取引でないということで消費税がかかっていなかったが、これはたしか4月以降は課税されることになる。その分Kindleの値上げになるのか?
 倉庫だけでは恒久的施設(PE)にならないというのが現状の税制とは知らなかった。これは不合理なので、当然改正すべき。

二重非課税対策、新ルール詰め 
OECDが3つの柱 日本、負担増を懸念
2015/2/16 3:30 朝刊
 先進各国が企業の国際課税ルールを急ピッチで見直している。どの国からも課税されない二重非課税状態を解消し、米IT(情報技術)大手などの行き過ぎた節税を防ぐのが狙いだ。そうしたなか、日本企業はルール厳格化のあおりを受けかねず、経済協力開発機構(OECD)が進める国際的な議論の場で様々な要望を出し、事務負担や税務リスクの軽減を求めている。(編集委員 菅原誠吾)
抜け穴突く節税
 昨年12月に英国議会が開いた公聴会。「ルクセンブルクのグループ資金管理会社は利益の0.0156%しか税を払っていない。設立したのは税回避が目的ではないか」。議員らは、積極的な節税策で知られるアイルランドの製薬会社シャイアーの担当者と税務アドバイザーを追及した。
 グローバル企業によるルールの抜け穴を使う節税に世界が厳しい視線を向けるなか、英国は追及の急先鋒(せんぽう)に立っている。
 リーマン・ショック後の税収不足に悩むキャメロン政権は「低税率でも税は払われなければならない」(オズボーン財務相)として、米スターバックスや米アマゾン・ドット・コムなどが英国に相応の納税をしていないと批判してきた。
 昨年12月、英国が課税逃れを封じる決め手として打ち出したのが「迂回利益税」という制度だ。国外関連取引の情報を企業に申告させて、当局が不自然な仕組みと判断すれば課税する。
 ペーパーカンパニーのような経営実態の乏しい仕組みを使い、英国で稼いだ利益を低税率国に流出させる企業を対象に、通常よりも高い25%のペナルティー税率を課す。4月の導入を目指す。
 英国は国際課税ルールの見直しも主導する。キャメロン首相は2013年、英国で開かれた主要8カ国(G8)首脳会議で租税回避問題を主要議題に取り上げた。
 これを受けてOECDは現在、税制の抜け穴を使った企業の節税を防ぐ対策を議論している。今年末までに計15の行動計画が出そろう予定で、日本のほかアイルランドやドイツ、フランスなどもルールを見直し始めた。
 日本企業は米IT大手のような積極的な節税策をほとんどとっておらず、二重非課税防止には基本的に賛成の立場だ。ただ、OECDのルール見直しには懸念もある。
 「二重非課税防止を強調するあまり、事務負担が過度に増すことは避けてほしい」。経団連などが3日に都内で開いたOECDとの意見交換会で、東芝の佐々木則夫副会長はこう強調した。
 行動計画のなかで日本企業の懸念は2つある。1つは移転価格関連の文書を毎年、各国当局に提出するよう義務付けられたことだ。事務負担が増すだけでなく、海外子会社を通じて各国に出す仕組みになれば、その文書が合弁企業を通じて競合相手に漏れかねない。
 文書にはグループの税務戦略だけでなく、国別の利益や税額も記入する必要がある。新興国の当局が容易に文書を入手できれば「積極課税する気になるのは確実」(KPMG税理士法人の角田伸広パートナー)。新興国を中心に税務リスクも高まりかねない。
 日本の産業界は、重要な情報の流出に一定の歯止めをかけるため、文書内容の簡素化を求めたほか、守秘義務のある租税条約に基づいて日本の当局が相手国に文書を渡す仕組みを提案。OECDはこうした意見を取り入れ、最終的に決着した。
 もう1つの懸念は、国際課税の原則である恒久的施設(PE)ルールの見直しだ。現在、自国内に支店などの施設がなければ、各国は海外企業に課税できない。例えば倉庫は補助的施設としてPEの対象外となっている。米アマゾンが巨大倉庫を使って国境を越えた電子商取引による売り上げを得ても、倉庫がある国では課税できないとの指摘があった。
 OECDの議論では、倉庫などもPEに含めることで、売り上げの発生した国で課税できるようにする改正案が浮上している。9月にもまとまる予定だが、この改正に懸念を抱いているのが、特に物流ビジネスを展開する日本の商社だ。
実行面でも課題
 商社の業界団体である日本貿易会は、見直し案では定義に不明確な点があり、商品や材料を保管するだけの旧来型の倉庫や、情報収集をする出張所なども対象に含まれかねないと主張。税務当局の裁量が広がって二重課税のリスクが高まることを懸念する。
 行動計画は実行面でも課題がある。議論には中国、インド、ロシア、ブラジルなど20カ国・地域(G20)も参加しており、計画が出そろったあとは、各国が自国ルールや租税条約を見直す作業が本格化する。新興国が反対している内容もあり、各国が計画を順守しなければ実効性が保てない。
 国際課税の原則は、国際連盟が1920年代に作った。企業が2つの国から二重課税される状況を減らし、国際取引を増やして第1次世界大戦後の欧州復興を後押しするのが目的だった。
 だが、現在は国境を越えたインターネット取引が広がり、法の抜け穴をついた過度な節税が問題となっている。国際課税ルールは二重非課税を防ぐ方向にかじを切っており「大きな転換期を迎えている」(国際租税法に詳しい早稲田大学の青山慶二教授)。
 「グローバル企業は世界中のグループ取引を把握し、課税リスクがあるかどうか改めて検討する必要がある」(EY税理士法人の南波洋エグゼクティブディレクター)。国際ルールが変わるなか、日本企業も具体的な対応を迫られている。

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