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2015年8月14日金曜日

水リスクー大不足時代を勝ち抜く企業戦略(1)

表記の本を出版しました。表紙では私は監修になっていますが、全体の3分の1ぐらいは執筆し、その他の執筆者の原稿にも手を入れております。そういうこともあり、最後の編者。監修者・執筆者の紹介ページでは、私は「監修・執筆」としてあります。


日本ではまだまだ知られていない世界の水不足に対して、日本企業がどのように対応すべきかを書いた本です。できるかぎり易しく、わかりやすく書きました。水ビジネスの本は多く出版されていますが、水を使う企業の立場からどのような企業戦略を取るべきかについて書いた本は少ないと思います。

本書の「まえがき」は次のとおりです。

「水ほど役に立つものはないが、水ではほとんど何も買うことができず、水との交換で手に入れられるものはほとんどない。」経済学の父と言われるアダム・スミスがその著書の「国富論」において、このように書いています。これは、どこでも簡単に得られる水と、希少価値があるダイヤモンドを比較した記述です。

 アダム・スミスの出身地はイギリスのスコットランドです。そこはヨーロッパで最も雨の多い場所と言われる地方です。もし、アダム・スミスが中東の出身だとしたら、モノの価値を説明するのに水とダイヤモンドではなく、砂漠の砂とダイヤモンドを比較したかもしれません。

 いずれにしても、もともと水が少ない地域を除くと、アダム・スミスの時代の水はそれほど希少性がなかったと考えられます。実は、日本も雨が多いことから、水不足の苦労をあまりしてこなかった国の一つです。しかし、今や世界人口の増加や新興国の工業化により、世界的な水危機と言われる状況になっているのはご存知でしょうか。
 
 水源となる河川や地下水は、国をまたがって流れ、水が水蒸気になり、遠く離れた場所に雨となって降ります。このため、水問題は一国が解決できる問題ではありません。国や企業が自分勝手な行動をやめ、一致協力して目標を定めて動く必要があります。

 この点で水問題は、CO2を始めとする温室効果ガスによる地球温暖化と似た面があります。しかし、水問題には地球温暖化とは違った側面も多くあります。まず、水は生命を支えるものであるため、生活に必要な水を確保することは人権に関わる問題です。また、地球温暖化は地球全体で起こっていますが、水に関しては、水不足の国もあれば、今後何十年も水問題とは無縁の国もあります。大陸の国では、一つの川が何カ国にもまたがって流れていることから、上流の国での水質汚染やダム建設が、下流の国に影響を与えるといった地域独自の問題も発生します。
 
 食料を輸入すると言うことは、輸出国で使った水を輸入していることになります。輸出国では、自国民が使えるはずの水を、輸出する農産物生産のために使ったことになるからです。日本の食料は輸入に頼っています。このため我々日本人は、知らないうちに海外の水不足を助長しているということも多いに考えられます。
 
 公害問題で深刻な状況を経験した日本では、工場排水の処理をしっかりすることは、常識となっています。最近は水質対策だけでなく水使用量の削減に取り組んでいる企業も徐々に増えてきました。しかし、海外の工場はどうでしょうか?

 新興国の場合、国による環境規制が不十分であることも多いと思います。各国の規制を遵守するだけでよいとは言えません。そもそも工場で水を使用することは、中長期的にはその地域の水を奪っていることになっているのかもしれません。

 工業製品の場合、サプライチェーンの川上と川下のすべてでこのような配慮が必要です。川上のサプライヤーによる水使用や、川下の顧客が自社製品を使用するときの水使用のことまで考えてきた企業は多くないと思います。自社のことだけ考えているのでは、十分とは言えません。サプライヤーや顧客は日本にいるとは限らないということも忘れてはなりません。
 
 企業は、その事業をグローバル化しないと生き残れない時代になりました。以上のようなことが分かってくると、水不足に無縁であった日本企業も、世界の水問題を避けて通れないことが理解できるはずです。
 
 本書では、企業がグローバル環境で戦うにあたり、「水リスク」をどのように考え、それを企業戦略にどのように取り入れるべきかを検討したいと思います。米国と日本の先進企業の事例もご紹介します。
 「水戦略」の立案は水リスクの評価から始めます。リスクは、チャンス(機会)の裏返しです。水リスクの評価は、水をビジネスに活かすチャンスの評価でもあります。

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