Translate

2015年9月13日日曜日

ファナックがSR部を設置し、積極的に株主対策に乗り出す

IRにあまり熱心でなかったとされるファナックが、突然、SR(Shareholders Retations)部を設置し、やる気を見せたら株価が上がったという。下記は、日経ビジネス「ファナック、株主還元「最大80%」のナゼ」2015年4月28日の記事。

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20150428/280509/
ゴールデンウィークを目前に控えた4月28日。富士山麓に朝早くから機関投資家やアナリストらが大挙した。もっとも、彼らの目的地は景勝地の忍野八海や山中湖ではなく、その近くにあるファナックの本社だ。前日27日に2015年3月期の決算を開示したファナックは2011年1月以来、実に4年3か月ぶりに投資家向け説明会を開いた。
説明会開催が決まってからの数週間、市場は「株主還元策が発信されるに違いない」と期待を強めてきた。そして27日、ファナックは「配当性向60%を基本方針とする」「今後5年間の平均総還元性向(配当と自己株取得の合計)80%の範囲内で、軌道的に自己株式を取得する」という株主還元の方針を開示した。28日の東京株式市場でファナックは大幅高になった。市場の期待以上だったと言えよう。

その後のファナックの株価は次の通り。4月28日が飛び出て一番高い。基本的に下降だが、少なくとも、短期的にはSR部の設置と4年3ヶ月ぶりの投資家向け説明会は、効果を発揮した。

「説明会」は、対話ではない。対話は双方向が原則。上記の記事によるとファナックは、4月から19社の株主に会ったとこのと。これは対話である。

コーポレートガバナンスコードでは、株主との対話に関して次のように言っている。
【株主との対話】
5. 上場会社は、その持続的な成長と中長期的な企業価値の向上に資する ため、株主総会の場以外においても、株主との間で建設的な対話を行う べきである。
経営陣幹部・取締役(社外取締役を含む)は、こうした対話を通じて 株主の声に耳を傾け、その関心・懸念に正当な関心を払うとともに、自 らの経営方針を株主に分かりやすい形で明確に説明しその理解を得る 努力を行い、株主を含むステークホルダーの立場に関するバランスのと れた理解と、そうした理解を踏まえた適切な対応に努めるべきである。 

ファナックの場合、上記のように、配当性向60%などを発表したことから、短期的に株価が上がったが、株主との対話は、中長期的な企業価値の向上が目的なので、短期的な株価上昇は関係ない。

ファナックは、SR部を設置したが、これはIRとは少し異なる。IR(Investor Relations)は、将来株主なる可能性のある潜在的な株主を含む。IRは「適正な株価形成」を活動の目的とするが、SRは「経営層への支持獲得」を目的とするということらしい。ファナックは、SRではなく、一歩進んでIR活動をしっかりやるべきという考えもある。

ただ、上記日経ビジネスの記事では、「投資家向け説明会」としていることから、必ずしも株主だけを対象として説明会を開催したのではないと考えられる。

もう一つ付け加えると、コーボレートガバナンスコードでは、「株主以外のステークホルダーとの適切な協働」(基本原則2)は謳われているが、潜在的株主を含む投資家との関係については、明確には記載されていない。スチュワードシップコードの方も、投資先と書かれており、これも株主としての活動について書いてある。

SRは昔から株主総会対策をやっていた総務の仕事、IRは経営企画、経理、広報の仕事ということで、担当する人のタイプが異なることが、活動内容にも反映する。SR活動とIR活動は融合すべきである、という話を先日、取締役協会の勉強会で聞いた。

潜在的な株主との対話は、中長期的な企業価値向上と適正な株価形成のために必要となる。




0 件のコメント:

コメントを投稿