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2015年10月28日水曜日

監査等委員会監査等基準の「補助使用人等」は見直しが必要

日本監査役協会が9月に監査等委員会監査等基準(「監査基準」ではなく「監査等基準」)を公表した。その第15条では監査等委員会の職務を補助すべき取締役及び使用人を「補助使用人等」とし、その確保を含む監査環境の整備が重要であるとの認識を代表取締役等と共有するものとする、としている。

第18条1項では、監査等の実効性の確保の観点から、補助使用人等の体制の強化に努めることが求められている。

これらはどちらもレベル4の努力義務事項となっている。

一方、第20条1項では、内部監査部門その他内部統制システムにおけるモニタリング機能を所管する部署等を「内部監査部門等」とし、監査等委員会と緊密な連携が保持される体制を整備するとしている。これはレベル3、すなわち不遵守が直ちに善管注意義務違反となるわけではないが、不遵守の態様によっては善管注意義務違反を問われ得る事項としている。

以上のとおり、日本監査役協会の監査等委員会監査等基準では、補助使用人等の確保を努力義務とし、内部監査部門等と緊密に連携することをそれよりレベルの高いレベル3としている。

日本監査役協会が従来から公表している「監査役監査基準」にも少し文言は異なるが上記の3点についてほぼ同様の規定が盛り込まれている。なお、監査役監査基準は、要求事項のレベル分けは、今のところ行われていない。

監査役に補助使用人が必要なのは、社長または監査担当取締役が管轄する内部監査部門を、取締役の業務執行を監査する立場の監査役が使うことができないからである。

監査等委員会には、監査役と同様に補助使用人の確保が必要であろうか? 監査等委員は監査担当取締役であるから、内部監査部門を管轄するべきである。

監査等委員会を設置しておきながら、社長を含む別の取締役が内部監査を管轄することは違法ではないが、明らかに合理的でない。監査を担当する取締役がいるにも関わらず、どうしても内部監査を直轄したい社長はいるかもしれないが、少数であろう。

このように考えると、監査等委員会設置会社には、監査等委員会の補助使用人は、内部監査部門そのものであり、別に用意する必要はない。補助使用人の確保が必要という規定は、監査役監査基準からのコピーであり、監査等委員会には不要である。

監査等委員会監査等基準には、「監査等委員会は内部監査部門を管轄する」という規定をレベル3にすべきと考える。

なお、監査実務ではなく委員会の運営事務を行う事務局を設置することは努力義務事項として監査等委員会監査等基準第5条5項に定められている。同基準では、「事務局」と「補助使用人等」は区別されている。



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