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2017年4月25日火曜日

証券取引等監視委員会の活動方針

証券取引等監視委員会の佐々木清隆事務局長のお話を聞きました。

佐々木さんとは、以前一度セミナーの講師をご一緒したことがあります。当時は監査法人の検査・監督を行う公認会計士・監査審査会(CPAAOB)の事務局長をされていましたが、今は証券取引等監視委員会の事務局長です。金融・証券業界で知らない方はいないレベルの有名な方です。

写真でわかるように、髪の毛がトンガっており、洋服が派手です。霞が関のお役所の方とは思えない方です。これは何年も前から変わりません。写真ではわかりませんが、(弁護士の久保利先生ほどではありませんが)、今日は(もしかしたら最近は)かなり日焼けされています。

お話の調子はこれまで通りパワフルで、かつ、わかりやすいものでした。

そもそも証券取引等監視委員会とは何をするところでしょうか。金融庁の下部機関には、この証券取引等監視委員会と公認会計士・監査審査会があります。公認会計士・監査審査会は監査法人の監督機関であり、金融商品取引法に基づく監査を実施する監査法人の監視監督を行います。公認会計士や監査法人の検査を行い、これらに対する処分を金融庁長官に勧告するのはここです。

一方、証券取引等監視委員会は、証券市場の番人として、不正を取り締まるのが役目です。証券会社の不正行為、インサイダー取引、上場会社の粉飾(有価証券報告書の虚偽記載)などが対象になります。

東芝のような粉飾事件が起こると、会社側を検査して処分するのは、証券取引等監視委員会で、その会社を監査した監査法人の検査を行って処分するのが公認会計士・監査審査会ということになります。

それはそうとして、佐々木さんのお話がパワフルだというのは、役所であるにも関わらず、Mission, Vision, Valueを定めて、役所内でそれを共有しようとしておられる点です。民間企業を取り締まる役所ですので、自らも、民間企業と同じように、理念、目標、行動原則を持つ必要がある、との考えであろうと思います。佐々木さんは非常に(役人としては、ちょっと変わった)、アクティブな事務局長であるということが良くわかります。

Mission, Vision, Valueの次に、戦略目標と施策を立案しています。その前に環境分析も行いました。例えば、ITの利用技術が進んでいるとか、グローバル化が進んでいる、Brexit、トランプ政権の成立などが、環境分析されています。

戦略目標は、次の3つです。よくできています。
広く:新たな金融商品を含め広く捉える、
早く:問題の早期発見・早期是正、
深く:根本原因を追求し深度ある分析を行う

先週、経済産業省の医療についての施策のお話を聞きましたが、それは「(より早く)先制医療、(より効果的に)個別化医療、(より優しく)再生医療」でした。なんとなく似てますね。しっかりした役所はこういう目標を決めるようになったのかもしれません。

佐々木さんは、証券取引等監視委員会自体のPDCAにも言及されました。目標を立てて(P)実行しても(D)、チェック(C)とアクション(A)がないと、やりっぱなしになります。この辺りは、会計検査院がチェックの一部を担うとしても、自己管理にならざるを得ませんので、どこまで上手くできるか、この役所としてはチャレンジだと思います。

監査法人の内部統制だって自慢できるものではありませんが、監督が仕事にする役所の自己チェックが「紺屋の白袴」にならないようにしなくてはいけません。

最後に、IFIAR(監査監督国際フォーラム)についてお話されました。これは証券取引等監視委員会とは関係がないお話で、佐々木さんが公認会計士・監査審査会の事務局長時代に取り組まれたものです。この機関は、監査法人を監督する国際機関で、2006年に設立されています。今まで常設の本部がなかったのですが、各国が立候補して投票で、東京に設置することになったそうです。その裏には、オリンピックの招致活動のようなことがあったようです。今年4月(今月)に大手町にオフィスがオープンしました。日本に本部を設置している金融関係の国際機関は、今のところこれしかないそうです。

この国際機関については、ちょうど1年前の私のブログ「監査監督機関国際フォーラム(IFIAR)が東京に本部を設置」にも書いています。これが東京にできると、アメリカの監査法人監督機関(PCAOB)が日本の監査法人の検査をやりやすくなる、というのは私の考えすぎかもしれません。

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