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2017年4月27日木曜日

東証1部企業の指名委員会の現状と課題

エゴンゼンダーという外資系のコンサルティング会社の代表をされている佃秀昭さんから、指名委員会のお話を聞きました(写真は同社のWebサイトから拝借しました)。


同社では、東証一部上場会社を対象とした企業統治実態調査2016を行いました。その総括では、指名委員会については、「コード施行後1年が経過した段階で、CEOの選解任基準の整備や後継者計画は、まだ取り組みの途上と見られる結果となった。日本企業の最重要課題として改革推進が望まれる。」となっています。

同社の調査では、法定の指名委員会設置会社は3.7%で、任意の指名委員会を設置している会社は38.4%。合計で42.1%の会社が法定ないし任意の指名委員会を設置しているという結果が出ました。あまり悪い数字ではないですが、「指名委員会を設置しておらず今後その予定もない」という会社が48.4%あったというのは問題かもしれません。取締役の選任については、指名委員会では検討せず、CEOの専決事項になっている会社が半分ぐらいあるということになります(当然ながら取締役会の承認を得る必要があります)。

コーポレートガバナンス・コードでは、「例えば、取締役会の下に独立社外取締役を主要な構成員とする任意の諮問委員会を設置することなどにより、指名・報酬などの特に重要な事項に関する検討に当たり独立社外取締役の適切な関与・助言を得るべきである。」(補充原則4-10①)としています。「べきである」となっているので、やる必要がある事項ということになります。

一方、原則4-10は、「必要に応じて任意の仕組みを活用することにより、 」となっており、「必要に応じて」が入っています。マザーズ、ジャスダック上場会社に適用される原則には「必要に応じて」となっていますが、東証1部、2部上場会社に適用される補充原則には、「必要に応じて」とはなっていません。
コードはComply or Explainですので、指名委員会を設置しておらず今後その予定もないという会社は、それなりの理由を説明しているのだと思われます。
法定・任意の指名委員会を設置している会社でも、「CEOの選解任基準の整備や後継者計画は、まだ取り組みの途上と見られる」というのが、次の問題です。
指名委員会がある場合でも、委員会の開催が年間1−2時間の会社が、全体の46.2%で、年間開催時間合計が3.8時間とのことです。これは、私の想像ですが、これらの会社は、社長が後継者を決め、指名委員会がその妥当性を少し議論する、という形をとっているのではないかと思います。
国際競争に勝てる有能な経営者を選任しないと、日本企業は生き残れません。現に、海外で買収した会社の経営に失敗した企業が多いのはご存知のとおりです。また、海外買収に限らず、日本の大企業で海外売上が国内売上より多い会社や、国内社員数より海外社員数が多い会社は、かなり多くなってきました。
このようなグローバル企業では、従来の日本的な社内環境で育った社員が経営者になって、経営を行うことができるか、という問題が起こります。海外事業での失敗事例が多いのは、それが原因ではないかとも思われます。
年功の順番制で社長を選んでいたのでは、グローバル経営ができる人が社長に選ばれる保証はありません。次の経営者を誰にするかという企業経営にとって極めて重要な事項をCEO一人に決めてもらって良いのか、また、社内の論理だけで決めて良いのか、ということが問題になります。
そういう点で、指名委員会を有効に活用することが必要になります。
佃さんのお話では、「後継者計画は5年から10年のスパンで立案すべきである。CEOの後継者は、緊急時、1−3年後、5年後の別に決めた方が良い。」ということでした。この3分類では、別の人が選ばれるケースが多いそうです。なお、緊急時というのは、CEOに何かあった時、つぎのCEOになる人のことです。
5−10年後の後継者候補を「取締役の中から」選ぶかどうかは、よく考えた方が良いと思います。そもそも取締役になった方は、良い管理者だったかもしれませんが、リーダーとしての素質があるかどうかがわからないからです。また、日本企業がグローバル化する前から、昇格してきた方のため、国内の本流を歩いてきた方も含まれますので、グローバル経営ができる方かどうかを見極める必要があります。
そのように考えると、後継者計画は、5−10年では無理で、社員が管理職になる頃かその前ぐらいから、経営者候補を識別し、将来の経営者としての経験を積ませる必要があると思います。
海外子会社や社外から後継者を選任することも必要ですので、その点も考慮した後継者計画を立案する必要があると思います。佃さんの話では、米国企業でも社外からCEOを入れるのは抵抗があるそうで、日本企業の場合にはほとんど無理とのことでした。ただし、日産のように危機状態にある会社であれば、社外からCEOを受け売れることもあるということでした。
現に、危機状態ではないサントリー、資生堂、LIXILでは、社外からCEOを招いています。社外に抵抗がある場合でも、海外子会社に有力な後継者候補がいる可能性があります。後継者計画にはぜひ、海外子会社も考慮していただきたいと思います。
日本のグローバル企業は、今、過渡期にあるのではないかと思います。グローバル化は進んだが、それに対応した経営者が育っていない、ということです。ということは、社外や海外子会社からCEOを選ぶという選択肢が大事になってきます。

私の前職でも、ボードミーティングが英語になる時代が来るという話をしていました。私の退職後もまだそうなっていませんが、それが早めに来るかもしれません。監査法人の場合は、グローバルのボードミーティングは当然英語ですので、単に国内のボードミーティングが日本語だというだけです。海外事務所の外人が国内のボードに入れば、即英語になると思います。

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