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2017年10月19日木曜日

コーポレートガバナンス・コードは企業成長のためのヒント集

今日、OECD主催の「アジア・コーポレートガバナンス・ラウンドテーブル」(@高輪プリンスホテル)に行って来ました。午前中3つと午後最初のセッションに参加しました。

あまり期待しないで行きましたが想像通りではありました。ただ、お話(全部英語)を聞いているうちに、コーポレートガバナンスについて自分なりに色々と考えることができたのは収穫でした。

まずは、takeawaysをいくつか。

・日本企業はほとんどの社員が新卒採用で、社内取締役はほとんどがインサイダーだ。
・日本の取締役会は執行側が既に議論済みの議題を検討するceremonialな会議だ。
・取締役会の人数が多すぎる。9-10名ぐらいにして取締役会の回数を増やすべきだ。UKの会社で年に50回開催した会社があるがそこまでは不要。
・Diversityという観点で、外人比率が低い。Nikkei225でも2.5%。UKは31%, ドイツは21%,USでも8%だ。
・日本の機関設計を英語で言うと (per 神田秀樹先生)
  監査役会設置会社=Two board structure (取締役会と監査役会)
  監査等委員会設置会社=One board one committee structure
  指名委員会等設置会社=One board three committees structure
・当社では、顧客、従業員、コミュニティー、株主の順で重視しており、株主は4番目だ。
・GPIFは、アセットマネジャー(AM会社のこと)に投資先がgood corporate governanceであるように求めている。

上場企業のCEOは自社の経営方針的なことをお話されますが、それとガバナンスとの関係が分かりませんでした。そういえば、経営者はガバナンスされる側ですので、経営者にガバナンスのあり方を聞くのはおかしいということが言えます。上記の顧客第一主義の経営理念などをしっかり会社に浸透させるのが経営者の仕事です。コーポレートガバナンスは経営者の仕事ではありません。ただ、コーポレートガバナンスのあり方をしっかり理解し、その体制の基礎を作るのは経営者の仕事です。基礎ができたら独立社外取締役と一緒になって、良いコーポレートガバナンスを求めて改良していくことも経営者の仕事です。

そう言う点では、独立社外取締役と一緒になって、こんなに良いコーポレートガバナンス体制を作り、運営することができた、と言える経営者が一番と言うことになると思います。社内取締役が過半数の取締役会では、多分こうゆうことにはならないと思います。
例えば、社内2名、社外5名の取締役会だとしたら、社長が常にテストされる状況になりますので、取締役会をうまく運営しようとしたら当然社外取締役と一緒に、、、と言うことになります。

ところで、コーポレートガバナンス・コードが導入されて何年か経ちますが、それに準拠(complay)する会社数も増えてきました。東証は完全準拠の会社数などの統計を毎年発表しています。

Comply or Explainですので、説明すれば準拠しないでも良いのですが、大多数の日本企業は、このルールは準拠することを実質上強制するルールであると思っていると思います。

コーポレートガバナンスをコードに準拠させるとどんな良いことがあるのか分からず、有名大企業がやっているのだから、準拠しておけば会社が良くなるだろうと考えている経営者が、もしかしたらおられるかもしれません。あるいは、IRでうるさく言われないように準拠しておけば安心という考えもあるでしょう。

コーポレートガバナス・コードはJ-SOXの後にやってきたルールですので、そう言う点でも準拠が求められるルールと勘違いされているのかもしれません。

コーポレートガバナンス・コードはJ-SOXと異なり、違反したからといって罰則は全くありません。「準拠しないとかっこ悪い」ぐらいです。I don't care about the Codeとおっしゃった経営者(日本人)が今日1名おられましたが、それで良いと思います。

コーポレートガバナンス・コードの目的はそれに準拠することではなく、コードにも書いてあるように「持続的な企業成長と中長期的な企業価値の向上」です。コードに準拠すれば自動的にそのようになるのであれば苦労しませんが、そんなことはありません。

コードはガイダンスであり、多分準拠したら目的が達成されるだろうというレベルもので、実証実験された結果でも何でもありません。

コードに書かれたことはやってみる価値があるのでやってみたほうが良いと思いますが、自社に合わないやり方をやる必要はないのです。「持続的な企業成長と中長期的な企業価値の向上」のためになることをやるべきです。

そのため、独立社外取締役を増やしたからといって、企業成長の役に立たないと思ったらそれはしなくても良い、と言うことになります。どんなコーポレートガバナンスにするかは経営者が決めることです。

調子が良い会社はそのままの体制を続ければ良いかもしれませんし、調子が悪い会社はガバナンス体制を変更してみるのも一法です。不祥事が起こったりすると、ガバナンス体制に手を入れる会社も多いと思います。調子が良い会社はどうでしょうか? 日立は川村隆社長の下で、V字回復した後に、ガバナンス体制の見直しをしました。調子が良い会社が体制変更した事例です。

コーポレートガバナンスをどうするかは、経営者が決めることですが、ここで経営者の知識と経験、資質が問われます。自分が慣れていてやりやすい従来型が良いと思い込んでいないでしょうか。現状のガバナンス体制が本当に企業成長のためになっているでしょうか。社内ではイエスマンだけで、悪い情報が上がって来ないような状況がもしあれば、社長に意見するような体制も検討の余地があります。

女性が多いと何かと厄介と考えているかもしれませんが、これまで考えもしないような意見がもらえる可能性もあります。外人も同じです。

と言うことで、コーポレートガバナンス・コードには、こんなことを考えるヒントが色々と書かれているのです。我が社は、この点はComplyなのかExplainなのか、とチェックリストとして使うのではなく、コードは企業成長のためになる「ヒント集」と考えたらどうでしょうか。