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2017年11月4日土曜日

株主還元と企業価値の関係

株主還元というと「配当」と「自社株買い」があります。これらの株主還元をすると企業価値はどうなるでしょうか。

株主から見たら配当が増えたり、自社株買いで発行済株式数が減ると得した感じがします。しかし、モジリアーニ・ミラーの理論(MM理論)では、このような株主還元をしても企業価値は変わらないということです。

配当を行うと株主に配当金が入りますが、企業からはそのぶん現金が減少します。株主から見たら配当金が手元にあっても、企業内に留保されても企業価値としては同じです。株価を見ても、配当権利落ちで配当金の分だけ株価が下がります。

また、自社株買いの場合は、自社株を買うために企業は現金を支払います。企業が自社株を自己株式として持っている間は、現金が自社株に変わっただけです。そのあと、企業が自社株を償却すると資本金が減少し、その分、企業価値も減少します。自社株買いにより、発行済株式数が減少しますが、企業価値も減少するので、1株あたりの資産価値は同じです。

というのが、MM理論です。もっともな話ですが、現実には配当権利落ちによる株価下落があまりなかったり、自社株買いにより株価が予想以上に上がったりするため、理論通りには行きません。例えば、過去3期の平均ROEが1.8%だったアマダが利益の100%を株主還元すると発表したことで20%以上株価が上がったいわゆる「アマダショック」が2014年にありました。NTTが2008年に自社株買いを発表したら22%株価が上がったそうです。

実際には、株主還元をするより、余剰資金を再投資した方が企業価値が上がる企業もあれば、そうでない企業もあります。日本企業は留保利益(現金)を溜め込んでいるから株主に還元すべき、という話もよく聞きます。

MM理論では、株主還元では企業価値は不変ということですが、実際は、どんな場合に余剰資金を再投資すべきであり、どんな場合は株主還元すべきなんでしょうか。

これは、再投資の投資利回りと資本コストの比較なのだそうです。
投資利回り>資本コストの場合は、再投資した方が企業価値が上がる。
投資利回り<資本コストの場合は、再投資せず株主還元により企業価値が上がる。

「投資利回り>資本コスト」の会社は、どんな会社でしょうか。フェイスブックやアマゾンのように再投資してしっかり儲けられる企業です。反対に「投資利回り<資本コスト」の会社は成熟産業に属する企業、例えばNTTとかJTだそうです。

有名な「伊藤レポート」(英語ではKay Reviewに倣ってIto Reviewと呼ぶそうです。)では、ROEは最低8%としていますが、これは日本の上場企業の資本コストが8%だからだそうです(本当はこれは7%という話もあります)。

とうことは、8%以上の投資利回りを出せる自信があれば、株主還元ではなく再投資する、8%以上の投資利回りを出せないようなら、株主還元するという意思決定になります。

しかし、上場企業が業績発表(IR)の時に、「当社は投資利回り>資本コストなので、株主還元はしません。」と説明したとしたら、それを聞いた機関投資家や経済記者が理解できるのかという問題がありそうです。

それでは、株主還元のうち、配当と自社株買いのどちらが良いのでしょうか。配当には「シグナル効果」というのがあり、必ず?株価が上昇するそうです。ただし、減配になると株価が下落します。

反対に、自社株買いの場合は、減少させても株価への影響は少ないそうです。したがって、利益に変動がある会社は、増配より自社株買いにする方が良さそうです。

もちろん、このように株価を気にしながら株主還元で対処するより、成長戦略を立てて中長期的な企業価値の向上を目指すのが王道です。

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