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2015年3月9日月曜日

サプライチェーンのBCP

  東日本大震災で、サプライチェーンのBCPが話題になった。日本国内の部品供給が止まったことにより、海外企業への影響が出た。その後のタイの洪水によって、今度は日本における企業への影響も少なからずあった。この2つの事例により、日本のメーカーは、サプライチェーンの事業継続がいかに大事かを認識したと考えられる。
 しかし、下記の記事のように、トヨタほど徹底してやっている会社はないと思われる。BCP(事業継続計画)やBCM(事業継続マネジメント)は、米国発のマネジメント手法であるが、米国企業でもここまでやっている会社ないと思われる。系列のサプライヤー群の連携が強いというトヨタの特性を活かすことができるというのもこのような活動をうまく動かす力になっているはずである。
 下記の情報システムはおそらく富士通のシステムではないかと思われる。トヨタ専用に開発した。富士通(総研)はこのシステムの外販も行っている。話を聞いた事があるが、サプライヤーにいろいろな情報を入れてもらうことが必要で、サプライヤー側の協力がないと進まない。
 ただ、冒頭にも書いたように、日本国内だけでのBCPでは不十分。下記の記事にもあるが、海外もカバーしないと、目的は達成しない。
 実はこの活動は、紛争鉱物対策にも応用できる。サプライヤーを遡る点は共通。部品に使用されているタングステン、タンタル、金、スズの4鉱物がどこの産地かを調べて、紛争地域であるコンゴ民主共和国及び周辺国産かどうかを報告することが米国証券委員会(SEC)から求められている。今年からそろそろ外部監査の対象となるはず。トヨタは米国上場しているのでこの規制の対象となる。

トヨタ、災害時の情報網 部品供給、復旧すばやく  2015/3/9 日経朝刊

トヨタ自動車が大災害時に自動車生産に必要な部品の供給をすばやく復旧させる仕組みを構築している。10次下請けにいたる国内部品メーカー約1万3千社の生産情報を把握し、災害が起きたらすぐに代替調達などの対策に乗り出す。日産自動車も同様の仕組みを構築し、世界規模で導入を進める。東日本大震災から4年。災害に強いサプライチェーン(供給網)=総合・経済面きょうのことば=が日本の主力産業でできあがりつつあり、国際競争力の強化にもつながりそうだ。   2011年の東日本大震災では、自動車各社の生産・開発拠点が直接的な被害を受けたほか、半導体部品や樹脂部品などの調達が寸断した。生産の本格回復までには半年程度かかり、11年の国内自動車生産台数は10年比12.8%減の8398000台に落ち込んだ。  トヨタはこの教訓を生かし、災害対応に限定した情報システムの運用を始めた。約4000品目の部品について、資本関係のある1次や2次だけでなく、トヨタ本体はほとんど情報を持っていなかった10次以降までの取引先の協力を得て生産場所や緊急連絡先をデータベースにした。対象は約1万3千社、約3万拠点に及ぶ。  東日本大震災までは、災害のたびに被災地で生産する取引先を探し出し、そのつど対策をとってきた。新システムでは、対策が必要な拠点や部品をすぐに割り出すことが可能。震災前は事態の把握だけで数日から数週間かかっていたが復旧支援にも早期に取り組める。  トヨタはこの仕組みをつかってサプライチェーンをさらに進化させる。各部品の生産情報を定期的に更新。取引先が部品を震災想定地域だけで生産していたり、代替がきかない材料を使ったりしている場合は、拠点の分散や材料変更を促す。  日産も取引先工場の立地や生産部品などを網羅するデータベースを構築しており、被災時にどの車種の生産に影響が出るかを即座に把握し対応できる体制を整えた。災害発生から数週間をメドに復旧できるという。  海外でも災害に強いサプライチェーンづくりを進める。トヨタは工場のある世界10地域すべてに国内と同じ仕組みを広げる。日産は11年に大洪水があったタイのほか、欧米中印でもデータベースを完成させた。今後はメキシコやブラジルでも導入を急ぐほか、資本提携先の仏ルノーにもノウハウを提供する。

2015年3月8日日曜日

独立社外取締役は本当に人材不足か?

 「独立社外取締役の人材不足」という話は良く聞くが、実際上は供給能力は十分にある状況と思われる。たとえば、日本取締役協会では、独立取締役データベースに250人の登録をしており、独立取締役の紹介をしている。その他社外取締役を紹介してくれる団体はその他にも数多くある。
 1人が何社もの社外取締役になっているケースがあり、特定の有名人に偏る傾向があるのではないか。依頼する側の企業としては、失敗できないので慎重に選ぼうという意思が働く。このため、安全パイを拾いにいく、という傾向があるように感じる。
 下記の記事にように、経団連加盟企業の元社長であれば一応安心できる人を選べる。一般にサラリーマン社長が多いので、変なことを言わない社外取締役としては問題ないかもしれない。しかし、「ガバナンスを理解している」か「ガバナンスに貢献するよう努力をする気があるか」が大きなポイントとなる。
 本当は、何人か面接してその中からベストな人を選ぶのがよいのであるが、面接をして落とすのは失礼となる。ということは、「日頃から付き合いを広げて良い社外取締役候補を探す努力をする」しかない。独立社外取締役の候補者探しを取締役会事務局に任せず、社長を含む取締役自らが日頃から候補者を探しておくことが必要である。


元社長、他社で貢献を
2015/3/6 3:30 朝刊
 企業統治指針が正式に決まり、今後の焦点は社外取締役の確保と活用に移る。指針の原則に従い、東証1、2部企業が独立性の高い社外取締役を2人以上選ぶには、昨年7月との比較で延べ3000人以上が追加で必要になる。「適切な人がみつからない」と悩む経営者が増えそうだ。
 しかし、指針策定の有識者会議に参加した冨山和彦・経営共創基盤・最高経営責任者は「上場企業の社長経験者を候補と考えれば、日本全体で社外取締役は不足しないはず」と話す。最高財務責任者などの役員経験者も引き合いが強いだろう。
 経団連は今も社外取締役の選任義務化に反対している。ただ榊原定征会長は「義務化しなくても社外取締役は増える」とみる。ならば発想を転換し「社長経験者は積極的に他社の社外取締役として貢献を」と会員企業に呼びかけたらどうか。
 異なる業界出身の経営経験者が取締役会に加われば、生え抜き役員とは異なる視点をもたらすだろう。日本全体でみて経営の知見を共有する効果は大きいはずだ。(編集委員 塩田宏之)

2015年3月3日火曜日

商社のビジネスモデル、企業価値、ガバナンス

商社のビジネスモデル、企業価値、ガバナンスについて聞いた。
1)商社のビジネスモデル
昔はトレーディングのみ。最近は、「商社冬の時代」を経て、トレーディング+事業投資のビジネスモデルに変わった。トレーディングモデルの時代は、有利子負債が非常に大きかった(商社金融が原因か)すなわち、自己資本比率が低かった。事業投資のモデルが増えてきたことから、自己資本が増え、有利子負債が減少した。
2)世界にないトレーディングモデル(ラーメンからミサイルまで)
なぜ、他国にない商社が日本で成長したかは、諸説あるが、日本の急成長と関係があると思われる。成長がゆっくりだとメーカーや流通などが自社で持つようになる機能を、日本の場合、商社が担った。このため、現在では上記のとおり、トレーディングだけでは、商社は成立しないようになっている。
3)格付け機関からは、有利子負債は、日本のメーカーのレベルである自己資本の0.5倍が求められている。現状はほぼ1倍にはなっている。
4)トレーディングモデルの時代は、有利子負債が10倍近かったのに、格付けはAAA、しかし現在はシングルA。日本の国債がA1(ムーディーズ)のため、それを超えられない、というコメントもあり。
5)商社の事業投資とファンドの投資の違いは、商社はEXIT(売却)を前提にしないで買収後経営する。トレーディングと事業の連携を考えて事業投資する。人材については、トレーディング=営業マンでよいが、事業投資では、経営者が必要となる。そのための人材育成が必要。
6)ガバナンス
コーポレートガバナンスコードやスチュアードシップコードが出たから、どうするかと慌てるのではなく、これまでやってきたことがコードになっているのかどうか確認するものと理解したい。
7)社外取締役の役割
事業意思決定をする役割は業務執行取締役の役割であり、社外はビジネス間・経営目標との整合性、不祥事発生時における外部からの視点での発言を期待する。
8)投資家との対話
機関投資家は収益性、成長性、効率性を要求し、格付け機関は収益性、安定性、健全性を求める。両者の要求をどのように調整するかが課題。海外では総合商社のビジネスが理解されにくい。