東日本大震災で、サプライチェーンのBCPが話題になった。日本国内の部品供給が止まったことにより、海外企業への影響が出た。その後のタイの洪水によって、今度は日本における企業への影響も少なからずあった。この2つの事例により、日本のメーカーは、サプライチェーンの事業継続がいかに大事かを認識したと考えられる。
しかし、下記の記事のように、トヨタほど徹底してやっている会社はないと思われる。BCP(事業継続計画)やBCM(事業継続マネジメント)は、米国発のマネジメント手法であるが、米国企業でもここまでやっている会社ないと思われる。系列のサプライヤー群の連携が強いというトヨタの特性を活かすことができるというのもこのような活動をうまく動かす力になっているはずである。
下記の情報システムはおそらく富士通のシステムではないかと思われる。トヨタ専用に開発した。富士通(総研)はこのシステムの外販も行っている。話を聞いた事があるが、サプライヤーにいろいろな情報を入れてもらうことが必要で、サプライヤー側の協力がないと進まない。
ただ、冒頭にも書いたように、日本国内だけでのBCPでは不十分。下記の記事にもあるが、海外もカバーしないと、目的は達成しない。
実はこの活動は、紛争鉱物対策にも応用できる。サプライヤーを遡る点は共通。部品に使用されているタングステン、タンタル、金、スズの4鉱物がどこの産地かを調べて、紛争地域であるコンゴ民主共和国及び周辺国産かどうかを報告することが米国証券委員会(SEC)から求められている。今年からそろそろ外部監査の対象となるはず。トヨタは米国上場しているのでこの規制の対象となる。
トヨタ、災害時の情報網 部品供給、復旧すばやく 2015/3/9 日経朝刊
トヨタ自動車が大災害時に自動車生産に必要な部品の供給をすばやく復旧させる仕組みを構築している。10次下請けにいたる国内部品メーカー約1万3千社の生産情報を把握し、災害が起きたらすぐに代替調達などの対策に乗り出す。日産自動車も同様の仕組みを構築し、世界規模で導入を進める。東日本大震災から4年。災害に強いサプライチェーン(供給網)=総合・経済面きょうのことば=が日本の主力産業でできあがりつつあり、国際競争力の強化にもつながりそうだ。 2011年の東日本大震災では、自動車各社の生産・開発拠点が直接的な被害を受けたほか、半導体部品や樹脂部品などの調達が寸断した。生産の本格回復までには半年程度かかり、11年の国内自動車生産台数は10年比12.8%減の839万8000台に落ち込んだ。 トヨタはこの教訓を生かし、災害対応に限定した情報システムの運用を始めた。約4000品目の部品について、資本関係のある1次や2次だけでなく、トヨタ本体はほとんど情報を持っていなかった10次以降までの取引先の協力を得て生産場所や緊急連絡先をデータベースにした。対象は約1万3千社、約3万拠点に及ぶ。 東日本大震災までは、災害のたびに被災地で生産する取引先を探し出し、そのつど対策をとってきた。新システムでは、対策が必要な拠点や部品をすぐに割り出すことが可能。震災前は事態の把握だけで数日から数週間かかっていたが復旧支援にも早期に取り組める。 トヨタはこの仕組みをつかってサプライチェーンをさらに進化させる。各部品の生産情報を定期的に更新。取引先が部品を震災想定地域だけで生産していたり、代替がきかない材料を使ったりしている場合は、拠点の分散や材料変更を促す。 日産も取引先工場の立地や生産部品などを網羅するデータベースを構築しており、被災時にどの車種の生産に影響が出るかを即座に把握し対応できる体制を整えた。災害発生から数週間をメドに復旧できるという。 海外でも災害に強いサプライチェーンづくりを進める。トヨタは工場のある世界10地域すべてに国内と同じ仕組みを広げる。日産は11年に大洪水があったタイのほか、欧米中印でもデータベースを完成させた。今後はメキシコやブラジルでも導入を急ぐほか、資本提携先の仏ルノーにもノウハウを提供する。
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