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2015年12月8日火曜日

コーポレートガバナンスは企業価値向上に役立つか?

「コーポレートガバナンスは、企業価値の向上に役立つのか」という問いかけを企業経営者から多く聞く。コーポレートガバナンス・コードが導入されたので、最低限はそれに準拠するしかない、というのが多くの上場会社の現状と考えられる。

この答えについて、考えてみた。パフォーマンスの悪い会社があるとしよう。経営成績が悪い会社は、経営方針が悪いのか、それを決める経営者が悪いのかどちらかである。

これは、株主、特にアクティビスト(物言う株主)の立場から見ると、経営戦略の見直し(例えば子会社売却などのリストラ策)を求めるか、経営者の交代を迫るか、経営者を監視する人たちを入れるかのどれかが、選択肢になる。

経営は、経営戦略と、それを決めて実行する経営者の能力の関数である。経営戦略が良ければ、経営者はそこそこでも良い成績を収めることができるし、経営戦略がそこそこでも、経営者の手腕でなんとかなるかもしれない。その両方が良ければ、それに越したことはない。

経営戦略は経営者が決める。このため、経営者がしっかりしていないと、良い経営戦略は生まれない。その意味では良い経営者を選ぶことが優先される。

良い経営者を選び、その経営者のパフォーマンスを最大限生かすように持って行くのがコーポレートガバナンスの役割であろう。

そういう観点から、もともと経営者に恵まれている会社は、コーポレートガバナンスの役割は小さい。ガバナンスが必ずしも良いとは言えない会社のパフォーマンスが良いことがあるのは、このためと考えることができる。

ただ、例え良い経営者に恵まれていたとしても、人間は万能ではないため、優秀な経営者にも間違いは起こる。これを少しでも予防するのが、コーポレートガバナンスの役割と言える。

結論は次の通り。
・良い経営者に恵まれ、良い経営戦略の会社にとっては、コーポレートガバナンスは、それを持続させる面で役立つ。
・経営者または経営戦略に問題があるパフォーマンスの悪い会社にとっては、コーポレートガバナンスは、良い経営者を選び、良い経営戦略を選択するために必要な枠組みとなる。

コーポレートガバナンスは、上記の通り企業価値向上には役立つが、企業経営者個人にとっては、場合によってウルサイ存在になることは間違いない。この点で、パフォーマンスの悪い企業の経営者による「コーポレートガバナンスは、企業価値の向上に役立つのか」という問いかけには、微妙な意味合いがあることが分かる。


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