そこでひな型と注を左右に並べた対照表を作ってみました。
日本監査役協会のウェブサイトでは、トップページのニュースの次に「電子図書館」のコーナーがあり、「詳細を見る」をクリックすると「キーワードから探す」の右下に「基準・規則・ひな型」があります。その中に監査役等の監査報告書ひな型が掲載されています。
そこを探したところ、PDFしか見つかりません。さらにそのPDFはコピー・ペーストできないようになっています。監査役協会の会員になればワード版が提供されるのかもしれません。
そこで、「基準・規則・ひな型」の下に掲載されている「新任ガイド・実施要領」の中に新任監査役ガイド(第6版)を念のために見てみました。ここにも監査報告書のひな型があります。
これもPDFですが、コピー・ペーストができるようになっています。
これを使って、次のようなひな型と注の対照表を作成しました。
監査役監査報告書(監査役会、取締役会+監査役会+会計監査人)と監査等委員会監査報告書について対照表を作成しました。
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日本監査役協会が公表するひな型や基準などの位置づけについて触れておきます。これらは、日本監査役協会の会員が準拠しなければならないものではありません。公正妥当と認められた監査役等監査の慣行の一つとみることはできると思いますが、これに従わないからといって、日本監査役協会から何らかの処分やお叱りを受けることはありません。
このひな型の中で、会社法上、明確に求められている事項は遵守する必要がありますが、一部には日本監査役協会の判断で踏み込んだ見解が記載されています。
たとえば、監査役監査報告書ひな型(監査役会版)の注17には「継続企業の前提に係る事象又は状況」について「事業報告などの記載を確認の上、監査報告書に記載すべきかを検討し、必要あると認めた場合には記載するものとする。」と書かれています。
少し調べた範囲では、監査役監査報告書に継続企業の前提に係る事項が記載されている例はなさそうです。継続企業の前提に関する注記がある場合は、会計監査人の監査報告書に言及されているはずです。監査役等の監査では会計監査人の監査を相当と認めるので、それで十分と考えるからではないかと思います。
注17の「必要あると認めた場合には記載するものとする」の「必要があると認めた場合」が明確に定義されていないように思います。書きたいと思えば書けばよい程度の意味なのかもしれません。
このように、このひな型の注の中で、会社法上明確に規定されている記載事項とそうでないものがありますので注意が必要です。
ただし、ひな型や会社法の要求事項だけにとらわれず、できる限り監査役等が丁寧に説明する姿勢で監査報告書を記載するのがよいと思います。
今後、少し会計不正などの不祥事が発覚した会社の監査役等の監査報告書について検討してみたいと思います。