まず、発行条件を見てみましょう。
下記の募集条件の「配当金」に記載のとおり、「初年度発行価格に対して、0.5%、以降毎年0.5%ずつ増加、5年目以降2.5%固定」となっており、配当率が初年度0.5%で毎年0.5%ずつ上がっていき、5年目で2.5%になったあとは固定配当率になります。これを見たら、マイナス金利となった今、買っておけばよかったと思っている方も多いと思います。
これは株式ですが「譲渡制限があるため非上場となる」と下記条件の「譲渡制限」のところに書かれています。トヨタは上場会社ですので、発行する株式は証券取引所で自由に売買できるわけですが、それは普通株式です。この場合、「種類株式」という普通株式とは別の株式です。いろいろ条件をつけた株式なのです。
一旦買ったらいつまでも売却できないのでは困ります。それについては、最後の「転換請求権」のところに書かれています。この種類株式を買った人は「2020年10月以降、年2回
(4月・10月) 」に「発行価格」でトヨタが買い取ってくれるということです。また、「2021年9月以降、年4回(3・6・9・12月) 」には普通株式に1:1に交換してくれるという条件も付いています。
発行価額は7月2日から7日のいずれかの日のトヨタの普通株終値に26〜30%を上乗せした水準で決まる、ということでしたので、5年後の株価がそれより上がっていれば、普通株式に転換して即売却すると売却益も狙えます。5年後の株価が下がっていれば、買い取り請求すれば発行価格(元本)でトヨタが買い取ってくれるので売却損は発生しないという条件です。
投資家から見た場合、これを1.5%利率がついた社債だと見ることができます。トヨタのような格付けの高い(S&PでAA-)会社の劣後債(株式に近い社債)にしては、1年前の状況では高い利率であったと思います。(2015年に発行されたソフトバンクの7年無担社債は2.13%でした)
上場企業が、社債のような種類株を発行して、意図的に物言わぬ安定株主を作ってもよいのか、という疑問が投げかけられたのは、種類株がこのようなものだったからです。この種類株は議決権のある株式ですので、「物言わぬ」ではないと言えるかもしれません。ただ、利息のような配当金を業績に関わらず支払う約束をしたことから、「物言わぬ」株主を作ってしまうのではないかと言われたわけです。
属性 | 概要 | 備考 | |
---|---|---|---|
募集株式数 | 47,100,000株 | ||
発行価格 | 10,598円/株 | ||
発行価格総額 | 499,165,800,000円 | ||
引受価格の総額 | 476,703,339,000円 | ||
増加する自己資本の額 | 資本金 | 238,351,669,500円 | 引受価格の1/2 |
資本準備金 | 238,351,669,500円 | 引受価格の1/2 | |
払込期日 | 2015年07月24日(金) | ||
発行上限 | 150,000,000株 | AA型種類株式全体の発行上限 | |
剰余金配当請求権 | 普通株式に対して優先的・累積型・非参加型 | ||
残余財産分配請求権 | 普通株式に対して優先的・非参加型 | ||
議決権の有無 | 有 | ||
単元株 | 100株/単元 | 普通株と同一 | |
議決権 の単位 | 1個/単元 | 普通株と同一 | |
配当金 | 初年度発行価格に対して、0.5%、 以降毎年0.5%ずつ増加、5年目以降2.5%固定 | ||
譲渡制限 | 有 | 譲渡制限があるため、非上場となる | |
転換請求権 | AA型種類株式株主より | ||
金銭対価 | 2020年10月以降、年2回 (4月・10月) | 発行価格での買取 | |
普通株式 対価 | 2021年9月以降、年4回 (3・6・9・12月) | AA型種類株式:普通株式の交換比率、1:1 | |
発行会社より | |||
金銭対価 | 2021年4月以降、年1回 (4月) | 発行価格での買取 |
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