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2016年10月10日月曜日

報酬委員会の取締役は独立しているかー米国の事例

 104日のWallstreet Journal電子版に、社外取締役がロビイストの場合の独立性についての記事が掲載されました。
Lobbyists as Directors Test Rules for Corporate Boards 
Directors at some companies are paid to lobby for those firms or allied trade groups, while also helping set the CEO’s pay 
By THEO FRANCIS and BRODY MULLINS
Updated Oct. 4, 2016 3:23 p.m. ET

 下記は、少し複雑な図ですが、要するに上場会社(Louisiana health-care company, LHC Group Inc.)のCEOが議長を務める業界団体がロビイストの会社にロビイングを依頼し、そのロビイング会社が同社の社外取締役2名(共に元連邦議会議員)にロビイングを依頼していたということです。


 業界団体がロビイングを依頼するのは普通の事ですし、依頼されたロビイング会社が元議員にロビイングを依頼するのも当たり前のことでしょう。

 しかし、業界団体の長が上場会社のCEOであり、そのCEOの報酬を決める報酬委員会のメンバーにそのロビイストの取締役2名が入っているとしたらどうでしょう。

 CEOが業界団体を介して、この元議員2名に報酬を払っていることになり、結果として、自分の言うことを聞く人を報酬委員会に入れたというようにも考えられます。

 事実、報酬委員会が2年連続でCEOの報酬を90%昇給させることや会社の飛行機を私用に利用することを承認したということであれば、余計にこのような疑いが持たれることになってしまいます。

 リーマンショックの後に制定されたDodd-Frank法の952条では次のように規定されています。「証券取引法の10C条を次のように改定する・・・」。その内容は、要するに報酬委員会の委員は独立している必要があるというものです。

 SEC. 952. COMPENSATION COMMITTEE INDEPENDENCE.
(a) IN GENERAL.—The Securities Exchange Act of 1934 (15 U.S.C. 78 et seq.) is amended by inserting after section 10B, as added by section 753, the following:
‘‘SEC. 10C. COMPENSATION COMMITTEES. ……….

 Dodd-Frank法で気をつけなければいけないのは、この法律でこのような別の法律の改正を規定していても、いつまでも法律が改正されないとか、その運用を定めるSEC規則が決まらないことがあるということです。この952条についてはSEC規則がすでに公表されていますので、施行されている条文になります。(有名なSay on Pay951条で、これも施行されています)

 結果として、この法律により、報酬委員会のメンバーである取締役は会社から独立している必要があるのですが、上記の会社のように間接的に会社から報酬を支払ったようになっている場合にどうするかが明確でないということで、新聞記事になったものと思われます。

 間接的に報酬を払うということであれば、上記の場合、業界団体の顧問弁護士もあり得ます。ロビイストであれば、多額の報酬ということも想定されますが、顧問弁護士の顧問料は訴訟などがないのであれば、多額にはならないかもしれませんが、それも独立性があると言えないのかなど、このような「間接支払」には検討課題が多いと思います。

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