筆者は、「東芝事件総決算」(日本経済新聞出版社)を上梓しました。来週ぐらいから書店に並ぶことになると思います。拙著では、5月の決算発表とそのあとの東芝メモリー売却まで書き込むことができましたが、その後の東芝については、このブログにおいて追いかけることにしたいと思います。
昨日(2018年6月13日)、東芝は7,000億円の自社株買いを発表しました。
IRニュースでは、「本年6月1日に東芝メモリ株式会社の株式譲渡(以下、本件株式譲渡)が完了したことを受け、当社は、計上される相当額の譲渡益の一部についての株主還元の方針を早期に明すべきと考え、本日、下記の通り決議しましたのでお知らせいたします。」と記載されています。
本日決議したということですので、13日に取締役会が開催されたものと考えられます。東芝メモリの売却が完了し、結果として東芝の連結株主資本は1.8兆円になった模様です。東芝メモリの売却益は1兆円ぐらい計上されているはずです。この売却に伴う法人税は、東芝メモリを東芝から分社化した2017年9月時点で課税されました。これは非適格分割という手法によったためです。これについては、拙著P301を参照してください。
税金は前期に計上(支払)済みのため(繰越欠損控除があるため実際の税金支払いはないかもしれません)、売却益の1兆円がまるまる手元に残ることになります。
このキャッシュの一部を使ってこの自社株買いをするということになります。昨年12月に6000億円の第三者割当増資をしましたが、物言う株主(アクティビスト)に買ってもらったことから、増資時点で何等かの約束があったのかもしれません。これについては公表されていないため分かりません。
巨額増資の半年後にそれを株主に返すということになります。IRニュースでは、「自己株式の取得におけるタイミングや手法等については、今後、具体的にインサイダー取引規制等の金融商品取引法や会社法等の法令上の制約、当社株式の需給への影響も踏まえ、可能な限り早く実施を目指して検討してまいります。また当社は、引続き、安定的な配当実施の在り方についても検討してまいります。」と記載されています。
この第三者割当増資は、当時の発行済み株式数の半分に相当し、この増資により1株当たり価値が3分の2に希薄化しました。自社株買いにより、これに応じない株主にとっては、もとの企業価値に戻るということになります(買い戻した自己株式を消却した場合)。
自社株買いは、昨年12月の第三者割当増資に応じた株主だけにするということはできないと思います。さらに、この第三者割当増資で出資した株主のうち一部は、東芝の株主を続けたい意向のところもあるのではないでしょうか。今後、物言う株主として東芝の経営に口出しをして、株価をしっかり上げてから売ろうと考える株主もいると思います。
東芝がこの時点で、自社株買いを発表したのは、6月27日に予定されている株主総会前にこの情報を出しておこうということだと思いますが、株主総会でこららの株主がどのような提案をするのか大変気になるところです。
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