あるアナリスト(外国人)の講演会に行ってきました。
米国ではアクティビストファンドは12-13兆円、日本も増えてきて1.5兆円ぐらいとのこと。近いうちに世界で2番目の市場になるとのこと。といっても、まだまだ米国よりは資金が小さいです。
別のブログでも書きましたが、最近は、1-2%の株式所有でも、機関投資家に影響力を与える(機関投資家が同調せざるを得ない要求をする)ことにより、アクティビストは、企業に対して大きな発言力を持つようになったということです。
そのようなこともあり、「ハゲタカ」や「Green Mailer」と呼ばれていたアクティビストは、最近では「物言う株主」の一員になってきたということです。
アクティビストが狙う企業のタイプをまとめると次のようになります。
・株価が低い(PBR, PER等が低い)
・低評価の理由が分かりやすい(経営者が悪い、不良(有休)資産がある、不採算事業がある)
・不祥事を起こした
アクティビストのタイプで分けると次のとおり。
・単に株価が低いというだけで株式を買う
・特定の事業に詳しく、磨けば光ると考える
・財務比率が悪いので、それを改善すればよいと考える
財務比率については、面白い話を聞きました。
日本企業は、「稼ぐ力」が弱い、すなわち売上高利益率が欧米企業に比べて低い、と考えられてきました。この視点から、「攻めのガバナンス」を標榜して、政府はコーポレートガバナンス・コードを導入したということは、良く知られています。
しかし、今、売上高営業利益率を比較すると、日本の上場会社の平均が5.5%で、英国6.1%、米国8.9%には及びませんが、ドイツ3.1%、フランス5.7%で欧州企業とほぼ同じです。
ROEの構成要素である資産回転率はさておいて、3つ目のレバレッジ比率(総資産/自己資本)は日本が2.5、米国が3.0です。
ROEを改善するために、日本企業のレバレッジ比率を米国並みの3.0に引き上げたら、日本企業のROEは12.3%となり、欧米企業を抜き、世界2位になります(米国17.2%)。
レバレッジ比率を改善するのは、人為的にできますので、アクティビストはROEの改善を次のように要求します。
一番効果がありそうなのは、自己株式の買い取りです。日本企業はキャッシュリッチなので、手持ち現金で自己株式を買い取れば、利益は同じでもROEの分母が小さくなります。
次に、考えられるのは、配当を多めに支払って、自己資本のうちの利益剰余金を減らすやり方です。これも手持ち現金があればできます。
もっと大きな効果があるのは、追加的な借入(または社債発行)を行って、その資金で自己株買い取りと配当を実施することです。
つい最近、コマツとキャタピラーの財務状況を比較したことがあります。コマツのROEは14.7%(2019年3月期)で、決して低い数値ではありません。しかし、キャタピラーのROEは、実に44.1%。
何でこうなるのか調べてみたところ、自己株式の買い取りでした。キャタピラーの自己株式残高(資本金のマイナス項目)は、2兆円を超えています(2018年12月期)。キャタピラーの売上高が約5兆円なので、その40%が自己株式です。
これが米国企業のやり方なのかもしれません。CFOの腕の見せ所?かも。ビジネスはさておいて、ROEを改善するのは比較的簡単です。
こういうことを、アクティビストが日本企業に要求し、それを日本企業が実行したら、株価が急騰し、アクティビストが儲かる、というストーリーになります。
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