ある高収益企業の社長が次のように新聞に書いています。
「取締役が多いと意思決定が遅くなり、競争力が落ちるのではないかと指摘されるが、それは違う。単に決断を早くすることだけが社会や企業のためになるのではない。各分野に精通した担当取締役がしっかりと主導すれば意思決定が遅くなることもない。そもそも数年で替わる社外取締役が経営判断に参画するには限界がある。財務諸表などの数字だけでは適切に判断できない。」
揚げ足取りはしたくないですが、私は次のように考えます。
「取締役が多いと意思決定が遅くなり」・・・取締役会は意思決定するところ、という考え方からこの議論が始まっているようです。新しいガバナンスの考え方は、取締役会は、モニタリングボードであるという考え方です。意思決定は取締役会ではなく、その下の経営会議などで十分議論して行うのが前提です。このため、取締役会に上程する議題はモニタリングに関する議題を主とし、意思決定は最小限にするのが原則です。
「各分野に精通した担当取締役」・・・取締役が各分野に精通していなくてもよいと思います。経営者が各分野に精通してください。社内のしがらみがない第三者(取締役)に説明するのが経営者の役割です。
「そもそも数年で替わる社外取締役が経営判断に参画するには限界がある」・・・社外取締役の役割は、経営判断ではありません。経営判断する取締役をモニタリングすることです。
そもそも経営者は、自分をモニタリングする人を置きたくないはずですので、モニタリングボードとしての取締役会にするという意思決定をほっておいたらやらない経営者もいると思います。会社に任せて、それぞれの会社が決めたら良いということではないように思います。
そういうことから、コーポレートガバナンスコードが東京証券取引所のルールとして導入されたわけです。上記の社長の会社の取締役会は、意思決定ボードになっているという前提で理解すれば、納得できます。コーポレートガバナンスコードは、comply or explainルールの下、会社が決めたら良いという部分を残しています。意思決定ボードでよいと考えるのであれば、それも認められます。
儲かっている会社は、儲かっているうちは良いのですが、いつまでも儲かる会社を続けられるわけではありません。そういうときに、また、そうならない前に、社長の交代を含めて早めに手を打つことができなければなりません。大勢の社内取締役がいたら、どうしても権力争いが起きて、そういうことが難しくなるのではないでしょうか。
意思決定ボードからモニタリングボードにしたら、直ぐに会社が儲かるようになるということはないかもしれませんが、中長期的に下方硬直力の強い会社になると思います。また、会社は「社会の公器」ですから、「儲かっていれば文句ないだろう」ということではないという面もあることを忘れてはなりません。
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