4月26日の日経新聞に下記の記事が掲載されました。
東芝、監査法人変更へ 本決算巡りあらたと溝
(略)4~12月期決算は財務諸表の適正性が分からないことを示す「監査意見不表明」となった。適正意見のない決算は東京証券取引所の上場廃止基準に抵触し、理由や経緯を東証が審査する。東芝は内部統制に問題のある特設注意市場銘柄にも指定され、同銘柄の解除を巡って審査中だ。いずれの審査でも不合格になれば株は上場廃止となる。(略)
私のブログ「東芝の四半期決算発表の言葉遣い」でお話ししましたように、四半期報告書に対する監査法人の四半期レビューの「結論不表明」であって「監査意見不表明」ではありません。これは、監査法人の四半期レビューは、監査ではないレビューというものだからです。このため、四半期監査ではなく、四半期レビューと呼ばれます。レビューは監査より簡易な手続によって実施します。
このため、上記の日経新聞の記事の「監査意見不表明」は、誤りです。メディアは「結論不表明」がお好きでないようです。ちなみに、昔、内部統制報告制度(一般にはJ-SOXと呼ばれているものです)が導入される前に、日経新聞は、内部統制のことを「企業統治」と記載していました。内部統制基準を企業統治の基準とか書いていたと思います。今はさすがに、企業統治はコーポレートガバナンスであり、内部統制とは異なることは、記者の方々も十分理解されていると思います。
四半期レビュー結果の不表明は、「結論不表明」です。ぜひ、正しい用語を使ってもらいたいものです。
ところで、上記の記事には、「適正意見のない決算は東京証券取引所の上場廃止基準に抵触し」と記載されています。この「適正意見のない決算」は四半期決算のことでしょうか、それとも2017年3月期の本決算のことでしょうか。上場規程を調べてみました。
上場廃止基準については、有価証券上場規程の912条に記載されており、意見不表明などについては、以下のように規定されています。
ハ 発行者の財務諸表等に添付される監査報告書又は中間財務諸表等に添付される中間監査報告書において、公認会計士等によって、監査報告書については「不適正意見」又は「意見の表明をしない」旨が、中間監査報告書については「中間財務諸表等が有用な情報を表示していない意見」又は「意見の表明をしない」旨が記載された場合であって、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると当取引所が認めるとき
これによって、監査報告書または中間監査報告書に「意見の表明をしない」旨が記載されている場合は、上場廃止基準に抵触することがわかります。四半期レビューのことは書かれていません。したがって、四半期レビューにおける「結論不表明」は上場廃止基準とは関係がないということになります。
なお、監査報告書は本決算の財務諸表に対する監査の報告書ですが、中間監査報告書というのは、何でしょうか。四半期報告書は上場企業だけに要求されています。非上場会社は、中間財務諸表を含む半期報告書を提出することになります。話せば少し長くなりますので、ここでは簡単にご説明します。
実は、有価証券報告書を提出している会社の中で、数は多くないですが上場していない会社があります。非上場会社は、本決算から6ヶ月後に中間決算を行い、半期報告書を提出することになります。中間監査は、「中間決算の監査」ではなく「中間監査」という日本独自のものです。また機会があったら、これについては詳しく説明します。
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