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2017年4月11日火曜日

東芝の四半期決算発表の言葉遣い


東芝は、今日411日に昨年12月までの第3四半期の決算発表を実施しました。新聞報道では、言葉遣いが気になりましたので、ここで確認しておきたいと思います。

1 決算発表は決算短信で行う

「決算発表」とは、「決算短信」という書類を証券取引所に提出することを言います。東証にある兜クラブという記者クラブの会議室で記者を呼んで発表することが多いです。東芝の場合は、記者が非常に多いことからたもっと広い会場が必要になると思います。兜クラブの広い方の会議室でも、30人も入れば満員になると思います。(ちなみに、兜クラブは昔は東証の2階か3階にありましたが、今は地下1階に移りました。)

さて、決算短信については、新たな方針を東証が打ち出しています。詳しくは、私のblog「決算短信の自由度の向上」をご覧ください。要は、決算の早期発表のために、監査法人の監査を受ける前にこれを提出してもよいということです。

もともと事前に監査を受けておくことが義務づけられていたわけではありませんが、これが慣行化していたので東証が確認の意味で「決算短信に監査は不要」と明言したのです。その目的は、決算が完了したら監査法人の監査が終わる前でもあってもできるだけ早く発表してください、ということになります。

東芝の場合には、第3四半期の決算ですので、「四半期決算短信」により決算発表するということになります。

2 四半期報告書には監査は実施されない

東芝の決算発表の新聞記事を見ると、「適正意見のつかない決算発表」(産経ニュース)「監査法人のお墨付きなしで」(NHK)、「監査法人が決算内容に「適正意見」を付けない異例の公表」(日経電子版)となっています。

発表が2度延期されたのは第3四半期の決算ですので、四半期決算に対してそもそも監査法人は、監査を実施しないという点が気になります。監査法人が実施するのは監査より保証水準が低い(要するに簡易な手続で結論を出していよいというルールに基づいた)「四半期レビュー」を実施します。

四半期レビューは本格的な「監査」ではないので、監査法人は「適正意見」を表明せず、「適正に表示していな いと信じさせる事項がすべての重要な点において認められなったかたかどうか」について結論を述べます。これは「消極的な形式による結論」と呼ばれています。ちょっと、専門用語が多くて分かりにくいですね。

監査法人が出すのは、「適正意見」ではなく「四半期レビューの結論」です。この点では、NHK「お墨付き」の方が「適正意見」よりは、まだマシだと言えます。

3 監査法人は四半期レビュー報告書を出したのか

次に、冒頭で述べたように、そもそも決算発表には監査も四半期レビューも不要です。会社の判断で公表すればよい、ということになっています。東芝の場合、なぜこの点が問題視されているのでしょうか。

実は、四半期レビューが必要なのは四半期報告書という、「金融庁」への提出書類です。四半期の場合は、四半期決算後45日以内に提出する必要があります(もう一度確認ですが、決算発表を行うための決算短信は「東証」に提出します)。

東芝は、この四半期報告書の提出が遅れていたのです。そもそも決算の早期発表の観点から四半期報告書の提出より、四半期決算短信による決算発表を先にすべきです。東芝は、その両方を提出していなかったということです。このため、新聞記事が分かりづらくなっていたのです。

東芝の場合、監査法人の四半期レビュー報告書が提出されなかったわけではありません。その点では「お墨付きなし」や「適正意見が付かない」だと、監査報告書に相当する「レビュー報告書」自体が付いていない状態で金融庁に提出されたとも読めます。

東芝の監査をしている「あらた監査法人」は、四半期レビュー報告書を提出したのですが、まだレビューの手続が終わっていないので、「結論不表明」としたということです。

レビューは監査ではないことから、その結論は「監査意見」ではないということになっています。このため意見不表明ではなく結論不表明という言葉遣いになっています。この点、東芝のプレスリリースは正しいです。

4 結論

この記事を筆者が書くとすると「東芝が延期していた四半期報告書を金融庁に対して提出したが、それに含まれる監査法人の四半期レビュー報告書は結論不表明だった。それと同時に東芝は四半期決算短信を東証に提出し、四半期決算の内容を公表する記者会見を開催した。」ということになります。

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