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2015年7月31日金曜日

東芝不正会計問題、監査法人は本当に「騙された」のか???

日経ビジネスオンライン(7月31日号)のメールが届いた。
http://nkbp.jp/1gpvVqp これは元日経記者の礒山友幸氏の記事。
新日本の監査がおかしいかもしれないという事例として下記を挙げている。
「1年前の決算で東芝は会計処理を変更。税金等調整前当期純利益が379億円も増加しているのである。利益を動かす目的で会計処理を変更することは認められていない。監査法人もうんとは言わないのが普通だ。
 東芝による会計処理方法の変更理由は「今後の設備稼働は安定的に推移するため」。それがなぜ費用を先送りする結果つながる会計処理の変更理由になるのか、にわかには理解できないが、新日本はそれを認めている。」
これは、東芝に限ったことではなく、IFRS以降会社の典型的な会計処理変更であり、それによって利益が増えることをわざわざ狙って、IFRSを採用する会社もあるはず。
と思って、調べたら東芝は下記の通り、日経コンピュータの島田優子氏が書いている

東芝が2017年3月期からIFRSへ移行、任意適用企業は61社に

http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/news/15/012900342/
IFRSの本までだしている礒山氏なので、「IFRSの採用は、2017年3月期からなので、2014年3月期で定率法から定額法に変更するのは早すぎる」と書いて欲しかった。
そう言っても、減価償却方法の変更はシステムの変更などの手間がかかることから、早めに定率法から定額法に変更する会社はあってもおかしくない。しかし、IFRS以降を口実に利益が足りない年度に早めに定額法に変更した可能性は否定できない。
礒山氏は、「監査法人もうんと言わないのが普通だ」としているが、いずれIFRSを採用するのであれば、「全社的な対応が大変な減価償却方法だけは早めに変更しておきます」と言われたら、監査法人は普通ウンと言う。

2015年7月30日木曜日

スチュワードシップ・コード

スチュワードシップ・コードの話を聞いた。コーポレートガバナンス・コードとの両輪と言われているが、こちらの方は直接仕事と関係がないので勉強になった。

まず、東芝会計不正とファンド(機関投資家)との関係。米国では、このようなことが起こると集団訴訟が起こる。これを専門にするサービス会社があり、原告団に加わりたいときは、成功報酬だけもらえる(特に出費がない)条件で参加できる。ファンドとしては、集団訴訟に加わり、株価の低下で損した分を少しでも回収することがファンドへの投資家から求められる。損害賠償金が入れば、ファンドの分配対象の収益になるそうである。

日本の場合、ファンドが株主代表訴訟に加わることはこれまでなかったのは、訴訟費用を負担して、敗訴したら逆に出費になるからとのこと。とは言っても、勝てる確率の高い株主代表訴訟にはファンドも積極的に参加するのが投資家(顧客)視点として必要となる。

機関投資家(アセットオーナー=金主を含む)にはアクティブマネジャーとパッシブマネジャーがいる。前者は、積極的に特定の銘柄に投資するマネジャー、後者はインデックス投信的に平均株価の推移レベル以上は狙わないマネジャー。実は、ファンド残高の比率では、パッシブの方が金額が圧倒的に大きく、アクティブは驚くほど少ないとのこと。

あるべき機関投資家は、長期+対話型である。日本では短期+非対話型の個人株主・海外投資家が多い。ソニーなどにいろいろ「いちゃもん」をつけて、さっといなくなった投資家は、短期+対話型となる。持ち合い株やパッシブ投資は、長期であるが非対話型。

スチュワードシップ・コードの受け入れをした機関投資家は、191社ある。(金融庁2015年6月11日発表)

・ 信託銀行等【第4回から1増加】
・ 投信・投資顧問会社等133【第4回から4増加】
・ 生命保険会社17【第4回から変動なし】
・ 損害保険会社【第4回から変動なし】
・ 年金基金等23【第4回から2増加】
・ その他(議決権行使助言会社他)【第4回から変動なし】
(合 計)
191【第4回から7増加】

各社は受け入れ方針を開示しているので、それを野村総研が評価している。昨年のコード公表時に比べて、その記載内容は改善している。投信・投資顧問会社では過半数が4段階評価の上2段階(A,B)になった。保険会社は上下に分かれ、生保トップ2社はA評価、損保は下の方になった。

機関投資家のスチュワードシップにおいて一番大事なことは、「顧客視点」である。運用会社におけるガバナンスにおいても、顧客視点が徹底しているかを監視することが必要となる。たとえば、販売会社の意向で商品設計していないか、という視点で監視する。

ただし、日本の運用会社のガバナンスには問題がある。独立社外取締役が入っていないことが普通。これには改善が求められる。また、運用会社は、金融機関の子会社(一部門)であることが多いが、利益相反についての意識が低い。この点も改善が必要。

世界最大の機関投資家である我がGPIFは、運用会社に具体的な指示をしてはいけないという法律があることから、「物言う株主」たりえない。米国カリフォルニア州のカルパースと大違い。GPIFもスチュワードシップ・コード受け入れ方針を開示しているが、A4一枚程度のあっさりしたものである。運用会社から報告を受け、監視監督するという感じの内容になっている。

我々の年金を運用するGPIFが「物言わぬ株主」でよいのか大きな疑問。

2015年7月28日火曜日

東芝の教訓(3)ーJ-SOXをゼロから見直せ

東芝の不正会計事件は、内部統制報告制度(J-SOX)が機能しなかった事例である。筆者は、別稿の『書かれてしまった「J-SOXの存在意義」』に次のように書いた。

「開示すべき重要な不備(重要な欠陥)」は、「財務報告に重要な影響を及ぼす可能性が高い内部統制の不備」と定義されている。制度の基本となる内部統制基準では「重要な影響」は比較的はっきり定義されているが、「可能性が高い」が明瞭でない。現状の実務では財務諸表に重要な影響を与える会計処理の誤りが発見された場合にのみ、「可能性が高い」としている。要するに顕在化した重要な不備だけが対象になっている。


「顕在化した不備」だけを報告の対象としているのであるから、東芝の場合には(これまでの会計不正(過年度訂正)事件と同じように)、過去の財務諸表が訂正されると同時に、内部統制報告書と内部統制監査報告書が訂正され、そこで初めて、内部統制に関して「開示すべき重要な不備」(重要な欠陥)が開示されることになる。

これでは、「J-SOXの存在意義がない」と言われても反論ができない。J-SOXは本来、早期警告システムでなればならない。実際に重要な会計処理の誤りは顕在化していないが、将来その「可能性が高い」場合に、「開示すべき重要な不備」を経営者自らが開示するというのが制度の趣旨である。「可能性が高い」というのは投資家に対する「リスク情報」である。

J-SOXの存在意義が問われるようになってしまっているのは、何が問題か? 実務における「可能性が高い」の定義が明確でないまま内部統制基準を放置していることが、諸悪の根源と言える。この点は、制度設計の段階から筆者が主張していたことであったが、筆者の言うことが理解できないのか、理解したくないのか、結局、基準や実施基準には反映されていない。会計士協会の実務指針においても、この点は触れられていない。

J-SOXにおける内部統制には、コーポレートガバナンスを含む全社的な内部統制と業務プロセスに係る内部統制がある。東芝の場合、明らかに全社的な内部統制に大きな問題があった。歴代社長3名が辞任したのは、自らが全社的な内部統制を無視(override)し、その事実を認めたからであろう。全社的な内部統制の一つである内部監査も機能しなかった。

第三者委員会報告書の再発防止策に書かれているコーポレートガバナンスの強化や内部監査の強化は、J-SOX用語では、全社的な内部統制の強化に他ならない。

東芝の場合は、言うまでもなく、会計マニュアルやそれへの準拠性のチェックなどの業務プロセスに係る内部統制も不備であった。

上場企業は、東芝事件を教訓にして、J-SOXの体制をゼロから見直してほしい。

ほとんどの上場企業は、J-SOX導入前に比較的多額の予算を割り当てていた。しかし、一旦制度が導入されると、その後急にJ-SOX対応人員数や対応時間を減らすような会社が続出した。「あんな金のかかる制度を誰が入れたのか?」「J-SOXは何の意味もない。無駄金を使った。」と公言する社長もいたと聞く。

制度を作った金融庁としては、ソフトランディングを求めすぎたきらいがあり、経団連などの産業界との調整のために奔走した結果、内部統制基準に曖昧な記述が散見されることになったと考えられる。上述の「可能性が高い」は、その典型例である。

上場企業では、J-SOX導入当初のこのような状況を知っている人も少なくなったのではないか。ここで、J-SOXの基本に立ち返って、内部統制基準の文字ヅラを追うだけでなく、本来の意味をしっかり理解した上で、自社のJ-SOX体制をゼロから見直してほしい。また、これを喚起するため、金融庁は内部統制基準の見直しを行う必要がある。







2015年7月26日日曜日

東芝不正経理ー1518億円の意味

第三者委員会報告書には、2008年度から2014年度の連結会計年度別修正額の累計額が1518億円とされている。これは単年度の修正額の累計額であり会計上何の意味もない数字ではないかと考えられる。収益の繰上げや費用の繰り延べはいつかはどこかで決着される必要がある。それら(戻し額)が各年度の修正額に反映されていれば、1518億円は、2014年度の期末剰余金への影響額として意味がある。しかし、恐らくそうではないと筆者は推測している。

もし、1518億円が2014年度末への影響額であるとしても、第三者報告書には下記のように記述されており、8月末に提出される有価証券報告書を見ないと、結果としての不正経理の金額(虚偽記載額)が分からない。

このため、東芝事件の虚偽記載の額は1000億円なのか、2000億円なのか、有価証券報告書の提出待ちというのが現状である。


委嘱事項の調査を通じて、過年度の有価証券報告書(有価証券届出書等で参照されている場合も含まれる)への修正の必要性が識別されている。本委員会では、当該修正を行った結果生じる、派生的な修正項目への影響は考慮していない。例えば、以下の項目に対して派生的な影響が生じることが考えられる。
ア 棚卸資産の評価に関する事項
イ 固定資産の減損に関する事項
ウ 繰延税金資産の回収可能性に関する事項


東芝の教訓(2)ー内部監査は社長直轄にするな

内部監査部門は、社長直轄ではなく、監査委員会(監査役、監査等委員会)直轄とし、監査委員会(監査役、監査等委員会)が内部監査を指揮命令すべきである。

東芝の有価証券報告書(平成26年3月期)の「コーポレートガバナンスの状況等」には下記のように記載されている。経営監査部(内部監査部門)は、社長直轄であり、社長の指揮命令下にあった。そのような状況では、社長の意に反するような監査は実施し得ず、不正な会計処理に気づいていたとしても、それが社長の指示に基づいた結果であれば、監査上の指摘事項とすることはできない。

下記の記述では、監査委員会には専任スタッフがいたとしているが、経営監査部の44名に比べると少人数であったことは間違いないだろう(第三者委員会報告では「監査委員会の補助スタッフとして、財務・経理に精通した人員が多く配置されていなかった。」と記述されているだけであり、人数は不明 )。

実際上、日本企業においては東芝に限らず、委員会設置会社でも、このように運営されている監査がほとんどである。従来の監査役設置会社の考え方から抜け出ていない。

内部監査部門は、監査委員会直轄とし、監査委員会が内部監査を指揮命令すれば、社長を監査の対象とすることができ、社長の不正も見抜くことができる。「社長は悪いことをするはずがない」という前提は誤りであることが、東芝事件により明らかになった。内部監査部門を監査委員会直轄にする委員会設置会社が増えてくることが望まれる。

なお、東芝の場合、監査委員会委員長が元CFOであり、社長の意向に従って不正会計を指揮していたのであるから、監査委員会が機能不全を起こしていたという別の問題があった。

新会社法により導入された監査等委員会設置会社では、委員会設置会社と同様に、内部監査部門を監査等委員会の直轄にすべきである。

監査役設置会社の場合は、内部監査と監査役スタッフを分け、内部監査は社長が直轄する実務が定着している。監査役にしっかりした監査をしてほしくないから、社長が内部監査を手放さないだけであり、監査役が内部監査を直轄しても会社法違反にならない。(社長直轄の内部監査を監査役が指揮することはできないので、監査役スタッフというのが生まれた)

いずれにしても、前向きに企業成長を目指すのが仕事の社長が、内部監査のことを真剣に考える余裕はないし、そもそも監査の専門性もないということを理解しなければならない。多くの会社に定着している「内部監査は社長直轄」の考え方を見直す時期に来ている。

東芝の有価証券報告書(平成26年3月期)の「コーポレートガバナンスの状況等」の記述抜粋

社外取締役のスタフの配置状況については、監査委員である社外取締役3名に対して、専任の監査委員会室スタフがサポートしている

内部監査部門として、社長直属の経営監査部(人員:44名)を設置し、業務執行の正当性、結果責任及び遵法の視点から、社内カンパニー、スタフ部門、当社グループ会社等の監査を行っています。(中略)監査委員会は、当社及びグループ会社の内部統制システムの整備、機能状況の詳細な調査等を原則として経営監査部による実地調査に委ねています。経営監査部の監査結果については、監査委員会は都度報告を受けますが、当該報告等により必要と判断した場合は、監査委員会自ら実地調査を行うこととしています。」

2015年7月24日金曜日

中期経営計画は誰もためのものか?

中期経営計画の話を聞いた。

・IRやアナリストのための中期経営計画の策定になっていないか?
ー 外向きの経営計画では、社内で別の計画が運用されダブルスタンダードになる。

・「ホッチキス中計」になっていないか?
ー各部が取りまとめた計画をホッチキスで留めただけの計画。計画が形骸化する。

・ダブルスタンダードの割合は?
ー15−20%ある。義務としての数値目標なので、営業利益で50%が未達、売上で20%が未達(伊藤邦雄などを参考に大和総研算定)

・どのような投資家に向けた中期経営計画か?
ー長期投資を行う投資家が将来の姿から現在の企業価値を測定できるような中計が必要。決算予想や短期目線のアナリストのための中計ではない。

・ガバナンスの観点からの中計
ー株主の代弁者としての社外取締役がモニタリングするという観点から、ダブルスタンダードは許されない。義務としての外向きの中計ではガバナンスはできない。そのために、適切な中計を策定しないとガバナンスができないと言える。目標達成の如何により、経営者の交代を迫ることが必要になる。中継は、経営者能力の判断指標となる。

・ROEと中計
ーROEは結果であって、経営目標たりえない。

・ローリング中計
ー3年ごとの中計では経営環境の変化が反映できない。1年目は3年後の将来の計画であるが、3年目だと将来計画が提示されていない状況となる。ローリング中計は常に将来計画が提示されるメリットがある。為替や商品相場などの基本的な想定が大きく変わった場合、当初の中計を変更しないと経営計画として意味がなくなる。ただし、毎年見直すことから、朝令暮改的な中計と批判されることもある。ローリングが適切な業種がある。


2015年7月23日木曜日

東芝の教訓(1)ー CFOはカラダを張ってブレーキになれ!

下記のような社長の発言があった場合、CFOはどのような行動をとったのだろうか。 CFOは適正な会計処理のあり方を理解しているはずである。社長の発言どおりに決算をしたら「まずい」ということは当然理解していたはず。「御意。」ではなく、「殿!それはまかりなりませぬ!!」と止めるのがCFOの役割ではないか。

社長は、会計の専門家ではない。力任せにいい加減な発言をすることがある。そのようなときに、これを正すのがCFOの役割である。社長の意向を現場に伝えたり、監査法人をうまく丸め込むのがCFOの仕事ではない。

東芝の歴代社長に問題があったことは事実としても、CFOは、その役割の基本である「ブレーキ役」が果たせていなかった。
取締役会は、ブレーキ役がしっかり果たせる骨のあるCFOを選任する必要がある。(東芝の場合取締役会が機能していなかった。これは別稿で検討する。)

<田中久雄社長>
l  「テレビ事業の下期黒字化は公約です。ありとあらゆる手段を使って黒字化をやり遂げなければなりません。」(20136)

l  (ETCの工事損失について)できるだけ第3四半期ではなく、第4四半期で認識する方向でお願いします。」(201311月)

l  「損益インパクト4億ドルのマイナスの見積もりを採用することは認められない」(20141)

<佐々木則夫社長>
l  「改善チャレンジへの回答となっていない。自分たちの提出値を守りますというだけ。全くダメ。やり直し」 (20129)

l  「一番会社が苦しいときにノーマルにするのは良くない考え。」(200910)

<西田厚聡社長> 
l  「いくら為替が悪いと言っても話にならない。とにかく予算を達成してほしい。」(200811)

l  「こんな数字はずかしくて公表できない」(200812月)

l  「このままでは売却になる。事業を死守したいなら最低100億円(利益の嵩上げを)やること。」(20091月)

l  「今期はすこしぐらい暴走しても良いので、東芝の営業損益に貢献せよ。」(20096月)

2015年7月16日木曜日

2030年の温室効果ガスの削減目標と電源構成

滝順一氏(日経新聞論説委員)の話を聞きました。(2015/7/1 東京ウィメンズプラザ)私見を交えて報告したいと思います。

2030年の各国目標が出揃った。この前日に中国の削減目標が発表され、セミナー資料には反映されていませんが、それを加えると次のとおりになります。


1990年比 2005年比 2013年比
日本 18.0% 25.4% 26.0%
米国 14-16% 26-28% 18-21%
欧州(EU) 40% 35% 24%
中国 60-65%(*)
*中国の目標は、排出原単位(GDP(生産量)比での削減)
出所:滝氏の資料に筆者が中国を追加した。

(筆者注)201111月にダーバンで開催されたCOP17では、ダーバン・プラットフォームが合意されたことは日本であまり報道されなかったですが、「すべての国が参加する温暖化対処のための2020年以降の枠組みを2015年までに合意すること」でした。それに基づき、各国が国連に削減目標を提出しているのです。ちなみに筆者は、南アへの出張を兼ねてCOP17を覗いてきました。(WBCSDを通じて登録しました)

各国の目標の比較年度は異なります。欧州は1990年比、米国は2005年比、日本は2013年比(上表では太字)です。これは、各国が見栄えの良い比較年度を取ったからというのがその理由です。国連のルールとしては、基準年はどこを取っても良いということになっています。

さてここで、1人当たり排出量(2012年)は、日本9.6トン、米国16.4トン、ドイツ9.0トン、中国6.7トン(筆者)です。1人当たりでは、米国が圧倒的に高い。省エネ余地が高いことが明白です。

それでは、中国の2005年比で60-65%はどういう意味でしょうか?滝氏によると、2030年までに排出量(絶対値)を今から2倍にする計画ということになるそうです。

絶対値(2012)ではどうでしょうか? 日本12.2億トン、米国50.7億トン、ドイツ7.6億トン、中国82.5億トン(筆者)となります。こちらは中国が断トツになります。中国の排出量は世界全体の1/4と言われています。

新聞情報では、この点はあまり触れられていません。新聞を読んで、中国がすごい削減をコミットしたかのように考えていた方も多いと思います。中国の削減目標は、GDP比ですので、GDPが増えると排出量の絶対値も増えます。要するにGDPの伸びほど排出量は増やさないということになります。

次に日本の電源構成を見てみましょう。
再生エネルギーは震災前の2倍の20-24%
原子力は震災前の7割の20-22%
化石燃料は減らして:天然ガス、石炭、石油で55%前後

原発反対の方には、「20-22%」に納得がいかないと思います。私は、原発は当面稼働させるとしても、再生エネルギーの比率20-24%がまだ小さいと思います。

原発再稼働の現状は次の通りです。こういう状況なので、原発はこの夏の需要期には稼働しないことが確定していると言ってよいでしょう。
・川内(せんだい)原発1、2号機:今年の8−9月に再稼働へ
 ~鹿児島地裁が運転差し止め仮処分を却下しました。
・高浜原発3.4号機:今年の2月に適合性審査に合格
 ~福井地裁が運転差し止め仮処分を決定「規制基準は緩すにかにすぎ、合理性ない」
・伊方3号機:今年5月に適合性審査に合格、プルサーマルで今冬再稼働を目指す。
 ~松山地裁で差し止め仮処分の審理中

最後に、今年の11月30日から12月11日までパリ郊外(北東)のブルジェLe Bourgetで開催されるCOP21についてです。
上記のとおり、主要各国思い思いの削減目標が提出されている中で、世界全体としてどのような目標を設定するかの合意がされるかどうかが注目されます。滝氏の意見では、「拘束力が弱い合意」なら可能で、議長国のフランスは合意優先で会議を進めるだろうとのことです。高い目標ではなく、各国が持ち寄った削減目標を積み上げるボトムアップの目標設定になるだろうというのが、滝氏の予想でした。

さらに、2050年に向けての削減目標が次の焦点になるとのこと。COP21で話し合われるのでしょうか?