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2015年7月30日木曜日

スチュワードシップ・コード

スチュワードシップ・コードの話を聞いた。コーポレートガバナンス・コードとの両輪と言われているが、こちらの方は直接仕事と関係がないので勉強になった。

まず、東芝会計不正とファンド(機関投資家)との関係。米国では、このようなことが起こると集団訴訟が起こる。これを専門にするサービス会社があり、原告団に加わりたいときは、成功報酬だけもらえる(特に出費がない)条件で参加できる。ファンドとしては、集団訴訟に加わり、株価の低下で損した分を少しでも回収することがファンドへの投資家から求められる。損害賠償金が入れば、ファンドの分配対象の収益になるそうである。

日本の場合、ファンドが株主代表訴訟に加わることはこれまでなかったのは、訴訟費用を負担して、敗訴したら逆に出費になるからとのこと。とは言っても、勝てる確率の高い株主代表訴訟にはファンドも積極的に参加するのが投資家(顧客)視点として必要となる。

機関投資家(アセットオーナー=金主を含む)にはアクティブマネジャーとパッシブマネジャーがいる。前者は、積極的に特定の銘柄に投資するマネジャー、後者はインデックス投信的に平均株価の推移レベル以上は狙わないマネジャー。実は、ファンド残高の比率では、パッシブの方が金額が圧倒的に大きく、アクティブは驚くほど少ないとのこと。

あるべき機関投資家は、長期+対話型である。日本では短期+非対話型の個人株主・海外投資家が多い。ソニーなどにいろいろ「いちゃもん」をつけて、さっといなくなった投資家は、短期+対話型となる。持ち合い株やパッシブ投資は、長期であるが非対話型。

スチュワードシップ・コードの受け入れをした機関投資家は、191社ある。(金融庁2015年6月11日発表)

・ 信託銀行等【第4回から1増加】
・ 投信・投資顧問会社等133【第4回から4増加】
・ 生命保険会社17【第4回から変動なし】
・ 損害保険会社【第4回から変動なし】
・ 年金基金等23【第4回から2増加】
・ その他(議決権行使助言会社他)【第4回から変動なし】
(合 計)
191【第4回から7増加】

各社は受け入れ方針を開示しているので、それを野村総研が評価している。昨年のコード公表時に比べて、その記載内容は改善している。投信・投資顧問会社では過半数が4段階評価の上2段階(A,B)になった。保険会社は上下に分かれ、生保トップ2社はA評価、損保は下の方になった。

機関投資家のスチュワードシップにおいて一番大事なことは、「顧客視点」である。運用会社におけるガバナンスにおいても、顧客視点が徹底しているかを監視することが必要となる。たとえば、販売会社の意向で商品設計していないか、という視点で監視する。

ただし、日本の運用会社のガバナンスには問題がある。独立社外取締役が入っていないことが普通。これには改善が求められる。また、運用会社は、金融機関の子会社(一部門)であることが多いが、利益相反についての意識が低い。この点も改善が必要。

世界最大の機関投資家である我がGPIFは、運用会社に具体的な指示をしてはいけないという法律があることから、「物言う株主」たりえない。米国カリフォルニア州のカルパースと大違い。GPIFもスチュワードシップ・コード受け入れ方針を開示しているが、A4一枚程度のあっさりしたものである。運用会社から報告を受け、監視監督するという感じの内容になっている。

我々の年金を運用するGPIFが「物言わぬ株主」でよいのか大きな疑問。

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