コーポレートガバナンスの議論で、社長の人事の話があります。次の社長は誰が選ぶのかや、パフォーマンスの悪い社長のクビを切ることが、社長の人事の話です。
ある会社の元社長の話を聞いた以前聞いたことがあります。そこは指名委員会等設置(委員会設置)を採用しており、進んだガバナンス体制ということで有名な会社でした。
「次期社長はどのように決めますか?」と私が質問したら、社長が、「そろそろ退任したい。次期社長はXXXさんが良いと思うが検討してほしい」と指名委員会に依頼するところから、指名委員会による検討が始まる、とのことでした。
これでは、社長が指名した次期社長を追認するのが、指名委員会の仕事になってしまいます。次期社長を社内から人選するのが指名委員会の仕事ではないでしょうか?
上場会社の場合は、社内だけでなく、社外から社長を迎えるという選択肢もあります。
指名委員会がない監査役設置の場合、監査役がその役割を果たすことはまずありえないでしょう。しかし、現社長が不適任であるとか、次期社長の指名手順や指名者に問題があるかどうかについては、監査対象になります。取締役の業務執行を監査するのが監査役の仕事ですから、社長の人事を監査の対象にしてはいけないという理由はどこにもありません。
しかし、現状、コーポレートガバナンスの肝である社長人事を監査役の監査対象にする監査役がいないのは、社長が監査役の人選をしているからでしょう。自分を選んだ人をクビにするのは、非常識なことです。しかし、独立社外取締役には、社長の人事に物申すことも期待されています。社外取締役にできて、監査役にできないはずはありません。
社長から見れば、自分の人事にはノータッチの監査役制度は捨て難いのは当たり前です。このため、社長が監査役設置が良いと言っても説得力がありません。幸い、日本では冒頭の会社の例のように、委員会設置であっても、社長の人事にはノータッチの会社もあります。日本企業に監査役設置会社が合っており、監査役制度は維持すべきであるというのであれば、監査役は社長人事にも踏み込んで、監査委員会や監査等委員会と同等またはそれ以上であることを示すべきでしょう。
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