今の所、コーポレートガバナンスと企業業績の関係は仮説であり、アベノミクスの国家再興戦略でそのように謳ったことから、少しは説得力があるとしても、いち早く委員会設置に移行したソニー、日立、東芝の状況を見れば、疑わしいと思わざるを得ないのです。
平成28年度の経済再生白書では、下記のとおりコーポレートガバナンスとROEに有意な関係があることが記述されています。ただ、業績の良い会社は、財政的な余裕があるためコーポレートガバナンスだけではなく、ESG全部について熱心という傾向があることも事実ではないでしょうか。下記の宮島・保田(2015)などの先行研究でも、我田引水的な感じが否めません。
コーポレートガバナンスとROEの関係を証明するためには、もう少し時間がかかりそうです。
「平成28年度の経済再生白書」から抜粋
3-1 コーポレート・ガバナンスに関する先行研究 コーポレート・ガバナンスへの取組と企業の収益力等との関係については、先行研究において、これまでも様々な分析がなされてきた。本コラムでは、主な先行研究を紹介する。 まず、外国人株式所有比率や政策保有株式と企業の収益力の関係については、宮島・保田(2015)では、海外・国内機関投資家の保有比率が高いほど、トービンのQで測った企業価値やROAが高まるといった関係を報告している。また、光定・蜂谷(2009)では、外国人株主比率と株式超過収益率の間には有意な正の関係がみられたとしている。 独立社外取締役の導入については、清水(2011)では、社外取締役比率が高いほど企業価値が高い傾向になることに言及している。一方、財務省財務総合政策研究所(2003)では、社外取締役制度の導入自体とROA等を含む企業パフォーマンスとの間に有意な正の関係は認められなかったとしている。 コーポレート・ガバナンス指標の動きをみると、いずれの指標も2014年度にかけて上昇している姿が確認される(第3-2-3図)。独立社外取締役については、第三者の立場から、経営者に対して客観的な監督を行うという役割を担っており、その導入が進むことにより(経営者に対する)取締役会の監督機能の強化が期待されている。また、外国人株式所有比率については、その比率の高まりが、企業のコーポレート・ガバナンスへの取組に影響を与える可能性が指摘されている27。政策保有株式については、企業間の持ち合い等によって資本の効率的な活用が妨げられるといった可能性が指摘されており、株式の持ち合い等の解消が進むことで、株主資本に対する収益性の向上が期待されている。 ●コーポレート・ガバナンスへの取組を強化した企業では、収益性が高まる可能性 コーポレート・ガバナンスへの取組は、企業の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上につながると考えられている。ここでは、実際に、最近のコーポレート・ガバナンスへの取組が企業の収益力や投資等に与える影響を検証する。 具体的には、それぞれのコーポレート・ガバナンス指標を基に、取組の進展に応じて企業を区別した上で、ROEや設備投資、研究開発費の動きを比較した。例えば、「独立社外取締役数」については、2011年度から2014年度にかけて、独立社外取締役数が減少または変化していない企業と1人増加した企業、2人以上増加した企業とに企業を区分28した上で、増加した企業をコーポレート・ガバナンスへの取組が進展したとみなし、3つの企業群で、同期間中におけるROE(第3-2-4図)、設備投資・売上高比率(第3-2-5図)、そして、研究開発費・売上高比率(第3-2-6図)の動きを比較した。 企業のコーポレート・ガバナンスへの取組とROEの関係をみると、「独立社外取締役数」については、増加した企業群、そして、「外国人株式所有比率」については、議決権の3分の1を上回る企業群といったように、いずれも、コーポレート・ガバナンスへの取組が進んでいる企業群において、ROEが高くなる傾向が示された。他方、「政策保有株式数」については、政策保有株式が減少した企業群のROEが高くなるといった結果は得られなかった29。設備投資、研究開発費についても、おおむね同様の傾向が示されており、コーポレート・ガバナンスへの取組を強化した企業では、投資機会の拡大や収益性の向上が図られる可能性が指摘できる。 マクロ的な経済環境に改善がみられる中、我が国経済を持続的な成長軌道に乗せ、中長期的な成長力の強化を図るためには、投資を含めたより積極的な行動を促す環境を整備することを通じて、企業レベルでの取組を促すことが重要となっている。
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