日経新聞の今日(2015年9月29日)の記事にトヨタ自動車の国際税務の実務家として知られた槙祐治氏(57)が常務役員に抜てきされたことが記事になっている。
http://www.nikkei.com/article/DGXLASM404H06_V10C15A9MM8000/
筆者は、ROEを経営指標にするのであれば、収益の拡大と費用(コスト)の削減だけでなく、法人税の節税を経営目標に掲げるべきであると従来から主張している。ROE=税引後の当期純利益/自己資本であるから、税金もコストとして削減する努力が必要。
日本の経営者は、「払うべき税金は払えばよい」または「払うしかない」と考えている節がある。また、CFOに指示しても「これはどうにもなりません」と言われたら「そうか」と答えるしかない。
グーグル、アマゾン、スターバックスの過度な国際的な節税が問題となり、OECDがBEPS(税源侵食と利益移転=Base Errosion and Profit Shifting)の対策に取り組んでいる。OECDのガイドラインがでたら、それに基づき、加盟国が各国の税制改正をするという手順になる。
「それ見たことか、無理なことをしたら結局そのうちできなくなる。当社はそんことに手を染めていないので安心です」と考えるのは早計である。
国際的な節税対策をやれることをやったのかというと、ほとんどの日本企業は不十分と考えてよい。よく聞く話は、「日本の税制上、グーグルのようなことはできません」ということである。
グーグルができるのであれば、米国子会社がやろうと思えばできるのではないのか?ヨーロッパの子会社はどうか? 海外で利益が出ていないのであれば、どうしようもないと考えるのも早計。
BEPSの”Profit Shifting”というのは、税率の低い国で利益がでるようなビジネスするということ。人の移動や場合によっては本社の移動も考える。知財センターをアイルランドに作る、というようなことも検討対象になる。
こうなると、CFOや税務担当部長では、対応できない。税金対策のために、事業部門を動かす必要が出てくる。日本企業の国際税務戦略ができていないのは、これができないからである。
トヨタはこれに気づいたのかもしれない。国際税務の専門家を常務にしたのはこのためであれば、「あっぱれ!」を3つ。
なお、OECDのBEPS対策ガイドラインは、法律ではなく、各国の税法改正が前提。いろいろな税制インセンティブで企業を呼び込む政策を取っている国が、簡単にこれに応じることはないと考えられる。
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