Translate

2018年7月31日火曜日

日本ボクシング連盟問題:一般社団法人への助成金は禁止すべし

日本ボクシング連盟の会長を333名が告発するという事態になりました。

1 会計検査では限界がある
 今回は、助成金の不正流用があったと告発されていることから、会計検査院がこの点を検査することは間違いないと思います。これまでスポーツ振興の助成金は、国の予算から支出されていることから、会計検査院による検査対象になっており、不正経理事例があれば報告されています。

 日本ボクシング連盟の平成28年度の正味財産増減計算書内訳表がウェブサイトに公表されています。これを見ると、経常収入合計114,433千円のうち、受取会費37,356千円、受取助成金46,810千円が大部分を占めています。助成金のうち最大額はJOCからの助成金で41,629千円となっています。スポーツ振興助成金とともに、JOC助成金も会計検査の対象になるのでしょうか? これまでの会計検査報告の内容を見ると、これらはともに検査対象になっているようです。要するに、経理処理が妥当であったかについての検査は、会計検査院が実施しているということになります。

 会計検査では、支出が根拠に基づいて実施されているか、ということが検査されます。
今回の日本ボクシング連盟のような事態になった場合には、会計検査院はもう少し詳細な検査を実施することもあると思いますが、日本ボクシング連盟の意思決定プロセスや意思決定内容が妥当であったかどうかについて、踏み込んだ検査まではしないと思います。検査報告にその点が記載されていたとしても、問題を是正させるような権限は、会計検査院にはありません。

2 ガバナンスが問題

 平成28年スポーツ振興振興事業に対する助成金交付対象事業一覧(団体別)(平成28年4月1日)によれば、「(公財)日本オリンピック委員会及び(公財)日本体育協会の加盟競技団体に対する助成金」支払先のうち、公益法人以外の団体は、日本ボクシング連盟(3,361千円)を含み、17団体ありました。そのうち、助成金が10,000千円を超える団体は次のとおりです。

一般社団法人等の名称
助成金額(千円)
クレー射撃協会
51,459
全日本野球協会
15,544
日本サーフィン連盟
16,154
日本女子サッカーリーグ
80,000
(公財)日本オリンピック委員会及び(公財)日本体育協会の加盟競技団体に対する助成金のうち、助成金が10,000千円を超える団体

 公益法人(財団・社団)については、いわゆる公益法人改革が行われ、「公益法人制度改革関連3法」が2006年5月に成立しました。これは2008年12月から施行され、新制度に移行していいます。これにより公益社団法人は、社員総会ー理事会ー監事、公益財団法人は評議委員会ー理事会ー監事のガバナンス体制が求められるようになりました。大規模法人(収益1,000億円以上など)には、公認会計士等による会計監査人の設置が規定されています。

 公益法人改革により、業務執行を行う理事会と監視監督を行う評議委員会または社員総会が区分され、理事会をしっかり監視監督する体制が求められるようになりました。日本ボクシング連盟の会長は、「終身会長」になったとのことですが、公益法人のガバナンス体制の下では、その承認を得るのはかなりハードルが高いと思います。

3 助成金支出先の団体は公益法人に限るべき

 公益法人以外の、例えば一般社団(財団)法人やNPO法人であるスポーツ団体に対して、助成金の支出を禁止べきであると思います。
 上記の「(公財)日本オリンピック委員会及び(公財)日本体育協会の加盟競技団体に対する助成金」の支出先は全部で75団体あり、そのうち17団体が公益法人ではありません。このような団体は、できる限り早く適切なガバナンス体制を構築し、公益法人に組織替えすべきであり、そうしないと助成金が受けられないというルールにすべきです。
 

0 件のコメント:

コメントを投稿