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2018年7月7日土曜日

有事の監査役1-監査役協会による研究報告

 有事の際に監査役がどのように動いたか、事例を元にして検討してみようと考えました。日本監査役協会が、「企業不祥事防止と監査役の役割」(平成15年9月)とその更新版である「企業不祥事の防止と監査役」(平成21年10月)を公表しています。

 この中で、有事と平時はそれぞれ次のように定義されています。
有事=不祥事等が発生することまたは発生したこと
平時=不祥事等が発生していないとき

 ここで、不祥事とは次のように定義されています。
不祥事=会社の役職員による、不正の行為または法令もしくは定款に違反する重大な事実、その他会社に対する社会の信頼を損なわせるような不名誉で好ましくない事象
不祥事等=不祥事及び不祥事予備軍をいう
不祥事予備軍=早期に適切な対応がなされないと不祥事に拡大するおそれのある事象・問題をいう

 有事かどうかは、不祥事が発生しているかどうかで判断すると考えてもよいと思います。この研究報告は、弁護士さんが手伝って作られたためでしょうか、不正の行為、法令違反、その他社会の信頼を損なわせるような事象が不祥事として定義されています。会社に損害を与える行為や事象は、ほとんどがこの分類に入るとは思います。しかし、巨額損失が発生するというのは、有事にならないのでしょうか。巨額損失が発生すると信頼喪失に繋がるとは思いますが、その場合は信頼喪失は2次被害であると言えます。

 COSO-ERMの昔のリスクの定義を元にすると、重要なリスクすなわち「事業戦略やビジネス目標の達成に対して重要なマイナス要因となる事象」が発現している状態が有事であると考えることもできますが、事業戦略の失敗に伴う業績悪化も有事になり、ちょっと有事の範囲が広すぎる感じもします。
 この定義によれば、一時のソニーがその状態でしたし、東芝は不正会計から3年経ってようやく、いわゆる有事からは抜け出したところですが、今後の業績回復が懸念されることから、まだ有事であると定義されます。

 有事の定義については、もう少しゆっくり考えることにして、とりあえずここでは、日本監査役協会の研究報告で使われている「有事=不祥事等が発生することまたは発生したこと」ということにしていくことにしましょう。

 これから少し「有事の監査役」を考えてみたいと思います。

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