大和銀行事件の判決(大阪地裁平成12年9月20日)では、社外監査役の責任または職務について、以下のように判示しています。
「社外監査役が、監査体制を強化するために選任され、より客観的、第三者的な立場で監査を行うことが期待されていること、監査役は独任制の機関であり、監査役会が監査役の職務の執行に関する事項を定めるに当たっても、監査役の権限の行使を妨げることができないことを考慮すると、社外監査役は、たとえ非常勤であったとしても、取締役からの報告、監査役会における報告などにもとづいて受動的に監査するだけでは足りるものとは言えず、常勤監査役の監査が不十分である場合には、自ら調査権を駆使するなどして積極的に情報収集を行い、能動的に監査を行うことが期待されているものと言うべきである」
この文章は長く、独任制とか監査役会のことを最初に言っているため、何のことかと思ってしまいます。要するに、社外監査役は、独任制であり、常勤監査役の監査に問題があるときは、社外監査役が自ら積極的に乗り出して監査をすべきであるということを言っています。
この判決は、直接不正行為を行った取締役の損害賠償責任ではなく、社内のリスク管理を怠ったことに関して、取締役の注意義務違反を論点にした点で画期的なものとされてます。
この判決では、取締役11人に対して連帯して約262億円(2億4500万ドル)
の損害賠償金を会社に対して支払うことを命じました。一方、監査役については、ニューヨーク支店の往査をした常勤監査役には任務懈怠の責があるされましたが、損害の立証がないとして請求は棄却されています。
冒頭の社外監査役に係る判決文は、考え方を述べたまでで、結果として監査役の損害賠償責任は認められませんでした。監査役による監査は十分であったか、そうでなかったかはわかりませんが、いずれにしても監査役は不正行為を知ることがなかったので、責任追及しなかったということになります。
冒頭の考え方に基づけば、常勤監査役の監査が不十分と判断した場合には、社外監査役が独任制に基づき、追加的な監査を実施することが必要ということになります。ニューヨークに実際に行って監査をした常勤監査役でさえ、ニューヨーク支店での不正の事実を発見できなかったのですから、社外監査役が乗り出すきっかけは何もありません。
ただし、例えば、ニューヨークに行った常勤監査役がゴルフをしただけで帰ってきたのであり、その事実を社外監査役が知っていたのであればどうでしょうか。この場合は、明らかに監査が不十分ですので、社外監査役としては何等かのアクションを起こさないと責任を問われることになるでしょう。
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