報道では、ルノーが日産の株式を43.4%所有し、日産が15%所有しているとされています。議決権に関しては、ルノーが日産に対する議決権はあるが、日産のルノー株式15%については議決権がないとされています。
ルノーが日産の株式を買い増して影響力を強化するのではないか、というような報道もされています。
1 日産がルノー株式を買い増して25%以上にするとどうなるか
もし、日産がルノー株を買い増したらどうなるでしょうか。ルノーと日産は、「株式相互持合」の状況です。日産のルノー持株は現在15%ですが、これが25%以上になれば、ルノーが持っている43.4%の議決権が行使できなくなります(会社法308条1項)。今のルノー株は値下がりしているようですので、2000億円あれば、10%の買い増しができるそうです。(日経ビジネス2018.12.03, P15)
これは、日本の会社法では、ある会社が25%以上保有しているということは、ある程度言うことを聞く株主であるということです。このような株主は、自社の言うなりに議決権行使させることができ、他の株主の権利を損なうことになります。これを排除することが、この規定の目的です。
ルノーと日産を想定すると、この話が分からなくなりますので、A社とB社で説明しましょう。以下の場合は、B社の株主総会で、A社が所有する100株の議決権行使ができないというのが会社法の規定です。
・A社がB社の株主であり、100株所有している
・B社はA社の株式の25%を所有している
A社は、B社に株式の25%を所有されていますので、B社の関係会社です。株式の相互持合いで、A社が関係親会社のB社株式100株を持っていても、その100株の議決権が行使できないというルールになっているのです。
A社はB社の関係会社なので、B社の指示に従って、B社の株主総会で議決権行使すると考えられます。これはB社の他の株主の権利を損なうことになるため、A社の議決権行使ができない(停止される)のです。
そのルールが規定されているのは、下記の会社法308条1項です。()内のアンダーラインがそのことを規定しているのですが、非常に分かりにくい条文です。
第308条
1.
株主(株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有することその他の事由を通じて株式会社がその経営を実質的に支配することが可能な関係にあるものとして法務省令で定める株主を除く。)は、株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。ただし、単元株式数を定款で定めている場合には、一単元の株式につき一個の議決権を有する。
「株式会社がその総株主の議決権の四分の一以上を有する場合を除き、株主は株主総会において、その有する株式一株につき一個の議決権を有する。」と理解すればよいと思われます。
なお、ただし書きは、「株式会社が単元株式数を定款で定めている場合には、一単元未満の端株については議決権がない」という意味なのだそうです。
2 ルノーと日産の株式相互持合に25%ルールは違和感がある
上記の会社法の規定は、言うことを聞かせられる株主(25%以上所有)の議決権がないということでした。日産がルノーの持株をあと10%買い増して、25%以上にしたら、ルノーは、日産の株主総会での議決権がなくなるのですが、ルノーは言うことを聞かせられるような株主なのでしょうか。
言うことを聞かないから日産が困っているわけです。会社法は、前述のA社とB社のような状況を想定しているのであり、そもそも支配関係が反対で、親会社が子会社を支配する関係であるときに、子会社が親会社の株式を25%所有したら、親会社が子会社を支配できなくなるということも想定しているのでしょうか。
この辺りは、深入りすると、難しい会社法の世界になるので、専門家の議論におまかせすることにしたいと思います。
3 日産が所有するルノー株式15%の議決権
現状は、日産が持っているルノー株式15%について議決権がないと報道されています。これは、フランスの会社法に日本の308条1項のような規定があるのか、またはルノーと日産の取り決めがあるのか、のどちらかだと思います。このどちらなのかについて、これまでの報道を筆者が見る限り分かりません。どなたか分かる方がおられたらご教示ください。
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