ゴーン氏との役員報酬の合意についての状況が報道されました。おそらく報道機関では、合意書などの現物コピーを入手しているのではないかと思います。
日経新聞(2019年12月20日朝刊)には、つぎのような図が掲載されました。
まず、「雇用合意書」というのがあり、これはゴーン氏の退任後の報酬に関する取り決めのようです。「競業回避契約」は、日産自動車退任後に、トヨタ、フォードなどのなどの同業他社に移籍しないための引き留め料的なものと考えらえます。一時払いなのか、月次払いなのかは分かりません。
雇用合意書のコンサル料は、退任後に支払う報酬で「顧問料」に近いと思いますが、ゴーン氏が退任後に何等かの役務(コンサルティングサービス)を会社に提供することに対する報酬と考えてもよいと思います。
この雇用合意書は、上図のように西川社長とケリー元代表取締役が署名しています。西川社長は、この事件に関する最初の記者会見で、「内部通報」によりゴーン氏の不正が発覚したとしていましたが、退任後に報酬を支払うことについては承知していたということになります。
次に、「報酬合意事項」という書類があります。これにはゴーン氏とゴーン氏の元秘書が署名しているということです。それには、上図にあるように、総報酬、支払い済み報酬、延期報酬が書かれています。「総報酬」=「支払い済み報酬」+「延期報酬」ということでしょう。
「報酬一覧」という書類には、ゴーン氏が自ら手書きで修正した記録があると報道されています。このリストは2016年までしかないですが、おそらくこれまでの報酬のうち、支払い済み額と支払延期額が記載されているリストだと思います。
これまでの報道では、取締役会では、ゴーン氏に取締役個人別の報酬決定を一任する決議をしていたということです。ということは、ゴーン氏に決定権があったということになります。
検察当局としては、この3つの書類は、ゴーン氏が決定した証拠だとしていると思います。筆者は、ゴーン氏に決定権があったとしても、その結果をゴーン氏が隠し持っており、報酬決定結果を取締役会に報告していないのであれば、決定したことにはならないのではないかと思います。
取締役会に報告をすれば、役員報酬または退職慰労金として計上されることになり、これはゴーン氏としては避けたいことでした。ゴーン氏は、退職時と退職後の報酬の決定は、その時の取締役会(会長に一任したときはその時の会長)の承認事項であると主張しているようですが、それが正しいように思います。
検察当局は、このほかに有力な証拠を持っているのでしょうか。
また、気になるのは、役員報酬として記載されていなかった金額の一部が、財務諸表には計上されていたと解釈できる日経ビジネスの記事があります(筆者のブログ「日産の決算書には役員報酬が計上されていた」)。これについても、どのような展開になるか注目されます。
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