日産自動車とゴーン氏らが起訴されました。その容疑の内容は、次のとおりです。
「地検の発表資料によると、両被告は2011年3月期のゴーン被告の報酬や賞与などが約17億7700万円であったにもかかわらず、9億8200万円と記載した有価証券報告書を同年6月に関東財務局長に提出した。同様に12年3月期から15年3月期の報酬などに関して、約80億7800万円だったのに40億500万円と記載するなど重要事項について虚偽の記載のある有価証券報告書を提出した。」(Bloomberg
2018/12/10)
以上をまとめると次のようになります。
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事業年度
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正
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記載額
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差額
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1
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2011年3月期
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約17億7700万円
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9億8200万円
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約7億9500万円
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2
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2012年3月期から2015年3月期
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約80億7800万円
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40億500万円
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約40億7300万円
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日経新聞は、「日産は公訴時効が成立した11年3月期を除く4年分で起訴された。」としています。ということは、2の4年間で起訴されたということになります。Bloombergが1と2に分けて書いたのは、これが理由のようです。
日経イブニングスクープ(2018/12/10)では、「記載されていなかった役員報酬に絡む費用を2019年3月期決算で一括処理する方針だ。正しい決算を作成するための社内管理体制が整っていると上場企業が投資家に向けて宣言する文書、「内部統制報告書」の訂正も検討する。」と書いています。
筆者が12月5日のブログ「日産の決算書には役員報酬が計上されていた」で紹介した日経ビジネス2018年12月3日号「役員報酬開示の闇」によれば、「EY新日本監査法人の複数の関係者によると、同じ期間中の各期の損益計算書の販売管理費(給与及び手当の項目)には、ゴーン氏に支払うSARの受け取り確定額が計上されているという」となっていました。
これまでの新聞各社の記事では「役員報酬が過少記載」とするだけで、その役員報酬は有報の「第四 提出会社の状況」と「第五 経理の状況」の財務諸表のどちらも同額過少記載されていたような書き方になっています。
しかし、日経ビジネスが、「EY新日本監査法人の複数の関係者によると、同じ期間中の各期の損益計算書の販売管理費(給与及び手当の項目)には、ゴーン氏に支払うSARの受け取り確定額が計上されているという」としている以上、有報の「第四 提出会社の状況」の役員報酬と「第五 経理の状況」の財務諸表が一致していない状況であると考えられます。
しかし、「記載されていなかった役員報酬に絡む費用を2019年3月期決算で一括処理する方針」と報道されているのですから、決算の訂正も必要ということになります。
以上から、有報の「第四 提出会社の状況」の役員報酬には、退任後に支払う役員報酬が全額記載されておらず、「第五 経理の状況」の財務諸表にはその一部が計上されていたということと推定されます。
この点は、近いうちに明らかになると思います。
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