12月20日の東京地裁による勾留延長請求の却下を受けて、検察当局は一転して、ゴーン氏の3度目の逮捕容疑を特別背任罪に切り替えました。
ゴーン氏の資産管理会社による新生銀行とのデリバティブ取引契約において、リーマンショックの影響で多額の損失が発生したことから、その評価損約18億5000万円の負担を日産に付け替えたということです。これは、すでに雑誌などで報道されていた内容でした。
注目すべきは、新日本監査法人が、「会社が負担すべき損失ではなく、背任に当たる可能性もある」と日産に対して指摘していたと22日の日経新聞に報道されたことです。
筆者のブログで紹介したように、新日本監査法人は「ゴーン氏に対する業績連動報酬は決算書に計上されていた」(全額ではなくその一部と筆者推定)との情報を日経ビジネスに提供しています。それに加えて、この日経新聞の報道です。
これまで、監査法人は守秘義務を盾にとり、裁判所の命令などがない限り、監査の過程で得られた情報を外部に提供することはありませんでした。
拙著「東芝事件総決算」で紹介したように、日本取引所自主規制法人の佐藤理事長は「(監査法人は)契約相手方である企業が、守秘義務を限定的に解除すれば、世間に対して、投資家に対して、もっと説明することは可能ではないでしょうか」と語っています(文藝春秋2017年12月号)。
東芝の監査を実施していた新日本監査法人は、ここでの「監査法人」の一つでした。筆者の想像ですが、新日本監査法人は、元金融庁長官であった佐藤理事長のこのような発言が念頭にあり、監査法人がある程度の情報を外部に提供してもよい時代になったと認識したのではないでしょうか。
これも筆者の想像ですが、新日本監査法人は日産から了承を得るだけでなく、金融庁とも事前に話をして、この評価損の付け替えについて、彼らの監査ではどのように扱ったのかについて、マスコミに対して情報提供したのではないかと思います。
筆者が監査法人に勤務していた時代は、監査先の監査内容についてのマスコミによる取材は一切受けないという方針でした。他の監査法人も同じ方針だったと思います。
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