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2014年9月20日土曜日

想定外に備える事業継続計画

(季刊 事業再生と債権管理 201175日 号(133号)掲載記事)

1.はじめに

 東日本大震災の直後に発動すべき事業継続計画がなかった会社はその必要性を痛感した。一方、事業継続計画があったにも関わらずうまく使えなかった会社も多かったのも事実であった。このため、今、多くの企業が事業継続計画の見直しや策定に着手している。我が国では、これまで特定の災害を前提とした防災計画的な事業継続計画が一般的であった。今回の震災で経験したさまざまな「想定外」の事態に対応するためには、これでは対応できない。本稿では、想定外の事態にも耐える事業継続計画のあり方について解説したい。

2.大震災によるサプライチェーンの寸断
周知のとおり東日本大震災では、多くの製造拠点が被害を受けた。その中でも部品点数が1台あたり2万から3万とされる自動車産業が大きく影響を受けたことが報道された。

震災直後の2週間にも及ぶ操業停止後、トヨタはプリウスなどのハイブリッド車3車種だけを在庫部品を使って生産した。4月中旬には国内14工場で完成車の生産を再開したが、稼働率は震災前の計画の半分程度となり、海外生産に関しては、5月上旬時点で生産レベルは4割程度であり、すべての工場でフル操業になるのは11月から12月になるとの見通しを発表している(その後これは2カ月から3カ月これを前倒しできるとした)。

一方、ホンダは栃木県に研究所、購買部門、部品工場、生産技術開発など多数の施設を抱えている。これらがかなり被災したことから、「復旧させるのは並大抵のことではない(伊東社長)」状況となった。

栃木の本部事務所が損壊した購買部門は、埼玉製作所に緊急のサテライトオフィスを設け、二次・三次を含む取引先の被災状況の確認し、部品一点一点について対策を講じた。四輪の研究開発部門についても、建屋施設の復旧に時間がかかるため、工場など他事業所にサテライトオフィスを設けた。部品供給にはいまだ課題があり、四輪生産関連の操業は当面、当初計画の5割程度にとどまり、一部の海外生産拠点でも減産を余儀なくされていると発表している(その後、国内工場の生産を8月に正常化できるとの見通しを明らかにした)。

部品供給の影響は、日本企業に限らず外国企業にも影響を与えた。GMは3月下旬に米国の1工場で1週間操業を停止。フォードでは車体に光沢を出すための日本製の顔料の供給が滞ったことから、黒と赤の車の販売を一時停止し、また4月4日から5日間ケンタッキー州の工場の操業を停止する方針を決めた。韓国ではルノーサムスン自動車が4月から2割の減産を実施した。

自ら被災した工場を持つ自動車メーカーは、設備が稼働しないことから生産ができないだけでなく、上記のように部品の供給が途絶えたことにより、震災とは無縁の外国企業にも大きな影響を与えた。東北地方には、中小企業を含め多数の自動車部品関連メーカーがあり、それらが被災したことから部品の供給ができなくなったのである。

その中でも、ルネサスエレクトロニクスの存在感が大きい。国内で5工場が被災したが、そのうち那珂工場(茨城県ひたちなか市)が大きく被災し操業停止となった。ここでは自動車メーカー向けなどのマイコンを生産していた。自動車には数個のマイコンが使われているとされており、車種ごとの特注品となっている。

このため別の会社の製品と代替することはできない。ルネサスのマイコンの世界シェアは約30%に上る。那珂工場ではその4分の1を生産するとされている。これにより海外企業への影響もあるが、実は同社は海外進出が遅れているため、日本のメーカーへの影響が特に大きい。

ルネサスは、自動車メーカーから見ると1次サプライヤーではなく、2次または3次サプライヤーであるとされている。被災した東北地方の部品メーカーはこの会社に限らず、2次、3次または4次のサプライヤーであるところも多い。

最終製品メーカーは、これまで1次サプライヤーまでは押さえていても、1次サプライヤー以降の調達先がどのようになっているのか十分把握していなかった。このようなサプライチェーンの寸断による生産停止や減産が、今回の大震災によって大きくクローズアップされた。

3.防災計画と事業継続計画の違い
日本は自然災害が多い国である。アジア開発銀行によると、1999年から2008年の10年間における世界の自然災害発生件数(地震、津波、洪水、台風など)は7191件でこのうちアジアは2909件と全体の40%を占める。これらの災害による死者・行方不明者は世界全体で124万人のうちアジアは102万人であり82%を占めた。日本に限らず、アジアは他の地域に比べて自然災害が多いことが分かる。

周知の通り大規模地震の原因の一つにプレート間地震がある。これはプレートのもぐり込みによるエネルギーにより発生する。日本列島は、下図のように4つのプレートが折り重なるように存在する世界でも稀な場所に位置する。

図1:日本を取り囲む4つのプレート
Photo_2
 

(東大阪市のウェブサイトより)

このような事情から我が国では何らかの形で防災計画を作成している会社が多い。日本の場合は特に火災と地震が防災計画の中心となる。防災計画は、火災や「震度6強」等の地震を想定し、本社や工場などの場所別に主に初動対応を定めたものである。人命の安全、建物・設備などの損害の軽減、二次被害の防止などを目的とする。

これは防災上なくてはならないものである。今回の大震災においても、しっかりした防災計画を持ち、定期的な訓練をしていたことから、すばやく非難でき人命への影響を最小限にとどめることができた企業が多くあった。

一方、事業継続計画(BCP=Business Continuity Plan)は、重要な事業を一定期間以上停止させないようにするために、予め定めた目標復旧時間内に復旧を行う手順を定めたものである。事業継続マネジメント(BCM=Business Continuity Management) は、PDCAサイクルにより持続的に事業継続計画書の実効性を確認し、改善し続ける活動である。

実は、我が国では事業継続計画を本気で検討している会社はこれまで少なかった。名称は「事業継続計画」や「BCP」になっていたとしても、中身は防災計画的なものが多いのである。地震などの自然災害を前提として、それに対応することから計画書の作成を始めると、どうしても防災計画的な事業継続計画になってしまうことがその原因の一つと考えられる。

政府や各業界団体が公表している事業継続計画ガイドラインやその作成例を見ても、地震や新型インフルエンザを前提にしているものが多い。これは地震などの脅威を前提にした方が、事業継続計画の作成が容易であるということにもその原因があると考えられる。

中小企業の場合、あまり事業継続計画に時間とお金をかけることができないし、もともと精緻なものは必要ないという事情もある。たとえ防災計画的であっても何らの事業継続計画を持つことの方が、中小企業にとって大事なことではある。

冒頭に述べたように、原材料の供給不足が国内外の多くの企業に大きな影響を与え、結果として収益の大幅減少を余儀なくされることが今回の大震災によって分かった。

この影響は、短期的な収益減少に留まらない。競合他社に顧客が流れてしまうことにより、中長期的にも大きな打撃を受け、結果として事業存続を揺るがすことになり兼ねない。実際に、東北地方で被災した多くの中小企業が倒産の危機に瀕している。中小企業においても、その生き残りのために事業を中断させない手立てを打っておくことが必要となる。

一方、日本のグローバル企業の収益は中小国家のGDPをも上回る。これらの企業の製品供給が途絶えることによる世界経済への影響は計り知れない。また、大企業には、より良い製品やサービスを継続して提供する社会的責任がある。製品供給がたとえ一時的でもできなくなることは、企業の社会的責任の観点からも大きな問題となるのである。

大企業は、中小企業を含むサプライヤーの事業継続が、自社の事業継続に直結することをこの震災によって、身をもって体験した。1次サプライヤーだけでなく2次、3次のサプライヤーが作る部品1つが届かないだけで、製造ラインがストップしてしまう事態をどのように避けるかが大きな課題となる。

このため、中小企業の事業継続を何らかの形で大企業が支援しなければならないという点を大企業は確実に認識したと考えられる。


4.脅威別の事業継続計画の課題
311日に発生した地震は、世界第4位の巨大地震であっただけでなく、想像を絶する大津波を起こして、その後に福島第一原子力発電所の機能不全が発生した。そのすべてが想定外の事態であったことは周知のとおりである。

従来、宮城県沖地震は「201011日基点で10年以内の発生確率が70%」であると文部科学省系機関である地震調査研究推進本部は評価していた。しかし、想定されていたマグニチュードは7.5であり、沖合の震源域と連動しても8.6としており、宮城県沖、宮城県沖東部、福島県沖及び茨城県沖の4つもの震源域が連動し、マグニチュード9になり得ることはどの専門家も指摘していなかった。

津波に関しては、三陸地方では昔から被害を受けており、近年では、1896年の明治三陸地震、1933年の昭和三陸地震及び1960年のチリ地震による大きな津波被害が発生していた。これらの経験から自治体がハザードマップを作成しており、それに基づいて住民は非難訓練をしていた。

三陸の各地では、観測された過去最大の津波を想定して10m規模の堤防や防波堤が建設されていた。岩手県釜石市の湾口防波堤は海の底から60mも積み上げた巨大な防波堤(ギネスブックに記録)だった。しかし、実際に襲った津波は、平野部でも海岸から5kmまで押し寄せ、津波浸水地域は想定をはるかに越えた。

 地震と津波の後に発生した福島第一原子力発電所の機能不全は、これらの想定外が生んだ新たな想定外となり、近隣の多くの住民が放射線被害を避けるために避難を強いられた。放射性物質が飛散または流出したことから、発電所近辺の農作物や魚からも高い放射線が測定されるという事態になった。

 以上から解ることは、一定の規模の災害を想定して、そのあとのシナリオに基づく事業継続計画を立案してしまうと、想定外の事態には対応できないということである。そのような事業継続計画は防災計画と大差ない。一定の想定から計画立案を始めると、それに類似した事態が実際に起こらない限り、すべてが想定外となってしまう。

つい最近、多くの企業が新型インフルエンザ対策のための事業継続計画を立案したのは記憶に新しい。火災、地震、津波、新型インフルエンザ、原子力発電所事故、電力不足そしてサプライチェーンと心配の種が続く。これらは脅威(Threat)と呼ばれる。これらの脅威別にいくつもの事業継続計画を作ればよいということなのであろうか。

答えは、NOである。実際に脅威別の事業継続計画を作成してみれば分かるが、いろいろな部分が重複する。典型的には、初動対応である。事業継続計画には初動対応が含まれる。この部分は、危機に当たって人命の尊重を最優先に行動する計画であることから、どの脅威に対しても良く似たものになる。

今回の大震災に際して、東京では当日夜に帰宅困難者が続出し、翌日以降は計画停電や交通機関の乱れなどにより、出社困難者が出た。このときに使えた事業継続計画は、実は新型インフルエンザ対策であった。

新型インフルエンザ対策では、感染を広げないように出社する人を制限する。たとえば、40%の従業員が出社できないときにどうするかについての計画が記述されているのである。この部分がそのまま使えることに気付いた会社は、大震災の直後に新型インフルエンザ対策を発動したのである。

このように、一つの脅威のために作成した事業継続計画が、そのほかの脅威に利用できる例は多い。ということは、その共通する部分をしっかり作成しておけば、どんな脅威にも対応できることが分かる。

 
経営資源別に立案する
 ここで事業の中断は、経営資源が得られなくなったときに起こるという点に着目したい。経営資源とは、建物(Building)、設備(Equipment)、テクノロジー(Technology)、人材(Human resource)、取引先(3rd party)である。我々は、これらの英語の頭文字をとって「BETH3」(ベス・スリー)と呼んでいる。

これらの経営資源が得られなくなる原因には、地震、津波、火災、新型インフルエンザ、及びサプライチェーンの寸断等があるが、その原因に拘ると「想定外」に対応できなくなる。原因は別にして、工場や本社の建物が使用できなくなる(B)、設備が使えない(E)、情報システムが止まる(T)、社員が出社できない(H)、取引先から部品仕入れができない(3)という事態になった時にどうするかを検討するのである。

建物が使えないとした場合には、冒頭のホンダの実例のようにサテライトオフィスなど別の場所に代替することを計画する。また、もともと災害にさらされるリスクが高い場所に主要施設を持たないというのも対策の一つとなる。

自社建物には被害がなくても、隣のビルが崩壊すれば、自社ビルにも立ち入りできなくなる。この場合には、自社ビルの耐震対策では対応できない。このような点は、建物の被害を想定するのではなく、建物という経営資源が利用できないという点に着目していれば、建物は耐震構造だから安全と考えて見逃してしまうということはない。

同じように設備、情報システム、社員及び取引先からのサービスや部材等が得られない場合にどのように事業を復旧し継続させるかについて検討する。

といっても実は、被災状況によって対策が異なる。事業継続計画は、その対策を文書にしたものなので、それを立案する際には、なんらかの「被害想定」をしないと、対策の立案ができない。被害想定のためには、どうしても予想される地震や津波の規模、インフルエンザの毒性や感染規模などが気になる。被害には原因があるからである。

しかし、起こりそうな地震や新型インフルエンザ感染による被害想定では、想定が甘くなってしまう。東日本大震災や米国での9.11テロ事件の例を待たず、これまで想像を絶することが起こってきたことを忘れてはならない。


今後も確実にそうしたことが起こる。このため、できる限り最悪の被害を想定することが必要となる。ここで気をつけなければならないのは、どのような原因で起こるかについて検討しすぎると、「想定外」の可能性を大きく残してしまうことになる点である。

経営資源から入ることのもう一つの利点は、網羅的な検討ができるということである。経営資源には5つ以外にはないことから、それらが得られない場合どうするかを考えたほうが、地震などのさまざまな脅威別に検討するより対策が洩れなく立案できる利点がある。

冒頭に述べたように今回の震災では、サプライチェーンの寸断には日本を代表する企業でさえ対応できていなかった。これはまさに、BETH3のうちの最後の「3」取引先の事業継続が途絶える点について、事前に戦略を立案し、それに基づき事前の対策を打ち、危機発生時において所定の手順で復旧するという計画が立案されていなかったことを示している。この5つの経営資源の観点から事業継続計画を立案していれば、この点も洩れなく計画に盛り込むことができたはずである。

この大震災に当たって、事前に検討していた行動計画があった分野については、うまく対応できたが、行動計画が予め決められていないため、震災後に検討して実行したことについては、必ずしもうまくいかなかったという声があった。どのようなことが起こるか分からないので、危機が起こったときに検討すればよいというやり方では、良い結果は得られないのである。

5.継続を優先する事業の識別
事業を継続する計画を立案するに当たって、経営資源が得られないという観点から対策を立案すると言われてもピンとこないかもしれない。事業継続計画の立案に当たっては、まず重要事業を識別することから始める。次に、それらの事業活動ごとに目標復旧時間を決め、その次に事業を継続するための対策を経営資源別に立案する。

重要事業を決めるためには、収益の減少などによる財務的な影響や製品やサービスの供給がストップすることによる社会的な影響を検討する必要がある。(社)日本建設業団体連合会が公表している「建設BCPガイドライン」では、「公共インフラ・民間企業等の復旧工事を通じて、政治経済・社会活動の早期回復に大きな役割を担う」という業界の社会的責任が強調されている。災害時においては、建設業では被災地の復旧工事にかかわる事業の復旧時間を最小限にしなければならないということになる。

月次決算、買掛金の支払い、給料支払いなどは、通常月1回実施することから、たとえば1カ月程度を目安に復旧すれば事業継続上問題ないという判断もできる。一方、資金繰りは、1カ月経たないと資金不足が分からないようでは、事業が立ち行かなくなることも考えられる。重要事業の継続には、このように関連する業務プロセスの継続も考慮することが必要となる。

あるメーカーでは、国内では工場が関東の1カ所に集中している。この工場が壊滅的な被害を受けた場合には、国内生産が最低3カ月は停止し、フル操業に戻るためには1年近くかかる。そのままでは、この企業は破綻することは間違いない。

この企業の場合は、幸い国内生産とほぼ同量の海外生産を行っている。海外で増産し、製品輸入することが可能である。しかし、現状では、海外での増産には限界があり、また、国内仕様の製品を海外で製造するための製造調整を行う時間が23カ月かかる。このような想定で、国内での製品製造が大幅に減少することに伴う決算や資金繰りに与える財務的な影響と社会的な影響を見積もる。

目標復旧時間は、このように算定した財務的・社会的影響を企業が耐えられるレベルにまで抑えるためには、どれだけの期間で復旧しなければならないかを検討して決める。

この目標復旧時間を達成するための対策が、事業継続のための具体的な対策となる。この対策には、建物や設備の耐震化、工場の分散設置、購買先の複数化などの事前の対策と、事業停止時に実施する手続がある。

具体的な事業継続計画には初動対応と事業継続対策が含まれる。この事業継続対策の立案について、前項で述べたように経営資源別に立案するのである。以上の手順をまとめると下図のようになる。

事業継続計画は防災計画ではないので、特定の災害による被災から復旧する手順を記述したものではない。目標復旧時間内において重要事業を復旧して事業を継続させるための計画を記述したものであることが、作成手順からも理解できると思う。

図2:事業継続計画立案の流れ
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6.経営戦略としての事業継続計画と事業継続マネジメント
被害想定が大きいほど、対応コストが多額になるのが普通である。コストがかかりすぎるので、被害想定を小さくしておこう、というバランスを取ってしまうことがここで起こりがちとなる。

大事なことは、これは事業継続計画を立案する担当者が判断すべき事項ではないという点である。経営意思決定としてこれを行うのであれば経営者のリスクテイクとして認められる。実際に被害想定を超える被災をした場合には、事業継続計画に従った復旧ができない可能性が高い。

しかしこれはあり得ることではあったが経営意思決定として想定しなかったことであるので、「想定外ではない」ということになる。事業継続計画は経営戦略であると言われるのは、このためである。防災計画には経営戦略はない。経営戦略のレベルになって初めて、本当の事業継続計画と言えるのである。

前項に記述した事業継続計画立案において、定めた重要事業、目標復旧時間及び事業継続対策は最低毎年一度は見直すことが必要である。経営環境の変化により事業内容は徐々に変化し、企業買収や事業売却があれば急激に変化することから重要事業の考え方が変わる。

対策の立案には最悪の事態を想定するが、今後発生するざまざまな災害や危機を踏まえてその想定を変更しなければならない。さらに技術進歩や社会の考え方の変遷により具体的な対策もそれでよいのか検討することも必要となる。もちろん役員・従業員への周知徹底と訓練を継続することも忘れてはならない。

事業継続計画は、このようなPlan/ Do/Check/Actのマネジメントサイクルにより、継続的に見直し周知徹底し続けることによって初めて「使える計画」となる。これが事業継続マネジメント(BCM, Business Continuity Management)である。

7おわりに
今回の大震災により、想像を絶する事態が目の前に起こることを多くの人が実感した。大災害の被害に遭われた方には不謹慎な言い方かもしれないが、今は事業継続計画の立案や見直しの絶好の機会である。「被害想定」をしっかり冷静に設定できる近来稀に見るタイミングであると言えるのである。

首相は、56日に静岡県の浜岡原子力発電所の停止を中部電力に要請した。筆者は、これは被害想定の目線が上がったことが要因と考える。高くした被害想定に対しては、現状の対策が十分でないという結論になった。防潮堤などの対策ができるまでは停止すべきという判断がなされたのである。

原子力の取り扱いには些かの失敗も許されない。しかし、幸い我々は失敗から学ぶことができる。震度6強の首都圏直下型地震対策や強毒性新型インフルエンザ対策に主眼に置いた防災対策的な事業継続計画から脱却する最良のタイミングを逃してはならない。


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