(月刊監査役2008年1月号 掲載原稿)
日本公認会計士協会が「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」(以下、「内部統制監査実務指針」)を平成19年10月24日に公表した。これにより、内部統制報告制度に係る法令及び基準類がようやく出揃い、制度全体を見渡せることができるようになった。本稿では、内部統制監査実務指針の内容を踏まえ、上場会社が制度対応上留意すべき事項と監査役の役割について検討したい。
1.財務報告に係る内部統制に関する法令と基準
平成18年6月に成立した金融商品取引法により、上場会社を対象に、財務報告に係る内部統制の経営者による評価と公認会計士等による監査が義務づけられ(内部統制報告制度)、平成20年4月1日以後開始する事業年度から適用されることとなった。
この制度に上場会社が対応するための指針として、金融庁に設置された企業会計審議会は「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準並びに財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準の設定について(意見書)」(以下、「内部統制基準及び実施基準」)を平成19年2月15日に公表した。これは、前文、基準及び実施基準により構成されている。
金融商品取引法は、その運用上の詳細を内閣府令等に委ねているが、金融庁は、平成19年5月17日に「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令(内部統制府令)」を公表し、平成19年10月2日に「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」の取扱いに関する留意事項について(内部統制府令ガイドライン)」を公表した。あわせて、金融庁総務企画局より「内部統制報告制度に関して寄せられた照会等に対して行った回答等のうち、先例的な価値があると認められるものを整理したもの」として、「内部統制報告制度に関するQ&A」が公表されている。
その後に、日本公認会計士協会による内部統制監査実務指針が公表されたのである。内部統制監査実務指針は、上記の法令並びに内部統制基準及び実施基準のすべてを踏まえて、公認会計士または監査法人が外部監査としての内部統制監査を実施するに当たっての実務上の指針を定めている。内部統制監査実務指針は、監査・保証実務委員会報告第82号として公表されている。委員会報告は、日本公認会計士協会の会員を拘束する指針であり、すべての公認会計士及び監査法人は、これに従うことが必要となる。
以上の法令及び基準類を要約すると下表のとおりとなる。
<図表1:財務報告に係る内部統制に関する法令と基準類>
法令・基準等名称
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種類
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設定主体
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金融商品取引法
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法律
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国会
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財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令 (内部統制府令)
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内閣府令
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金融庁
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「財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令」の取扱いに関する留意事項について
(内部統制府令ガイドライン)
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ガイドライン
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金融庁
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財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準
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基準
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企業会計審議会
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財務報告に係る内部統制の評価及び監査の実施基準
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実施基準
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企業会計審議会
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内部統制報告制度に関するQ&A
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Q&A
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金融庁
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財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い
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委員会報告
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日本公認会計士協会
監査・保証実務委員会
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2.内部統制監査実務指針の概要
内部統制監査実務指針においては、内部統制監査に直接関係する監査計画の策定から監査意見の表明までの監査実施の一連の過程で留意すべき事項が取りまとめられている。日本公認会計士協会による実務指針(監査上の取り扱い)としては異例と言える全72ページという大部となっている。ちなみに、企業会計審議会による内部統制基準及び実施基準は121ページであり、これも同様に大部となっている。
内部統制監査実務指針の構成は、以下のとおりである。
<図表2:「財務報告に係る内部統制の監査に関する実務上の取扱い」の目次>
1.はじめに
2.用語
3.内部統制監査の意義
4.財務諸表監査と内部統制監査との関係
5.外部監査人の独立性
6.監査計画の策定
7.評価範囲の妥当性の検討
8.全社的な内部統制の評価の検討方法
9.業務プロセスに係る内部統制の評価の検討方法
10.ITに係る全般統制の評価の検討方法
11.内部統制の重要な欠陥
12.不正等への対応
13.経営者の評価の利用
14.他の外部監査人等の利用
15.監査調書
16.内部統制監査報告書
17.内部統制監査において入手すべき経営者による確認書
18.適用
付録1 内部統制監査において監査調書に記載する事項の例示
付録2 統計的サンプル数の例示
付録3 結合型内部統制監査報告書の文例
付録4 経営者確認書の文例(連結及び個別財務諸表監査並びに内部統制監査一体用)
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本稿においては、紙数の関係上これらのすべてについて解説することはできない。また、外部監査人向けの指針のすべてについて、上場会社の役員・従業員が知っておく必要はないとも言える。このため、本稿では、内部統制報告書制度への対応準備をしている上場会社が、特に留意すべき事項に焦点を当てて検討することとする。
3.財務諸表監査との一体監査
3.1 評価範囲の違い
内部統制監査と財務諸表監査は、別に実施されるのではなく、両者が一体として実施される。周知のとおり財務諸表監査においても、外部監査人は内部統制の評価を実施してきた。これは、財務諸表の適正性を監査するに当たり、内部統制に依拠した監査を実施することが有効であるか、または効率的である場合に、外部監査人の判断において実施されてきたものである。
すなわち、本来、財務諸表監査は、貸借対照表及び損益計算書等に記載された残高等の情報の適正性を監査することを目的としている。しかし、そのような残高を作り出すプロセスである内部統制が信頼できるのであれば、それに依拠することにより、残高検証の範囲を狭くすることができる(効率性の観点)。また、残高に計上された金額の実在性の検証は比較的容易にできても、計上されていない残高があるとすると(網羅性の問題)、それは残高の検証だけでは不十分であることが多い。このため、内部統制を評価するのである(有効性の観点)。
内部統制監査では、外部監査人は、経営者による内部統制評価結果の適正性について意見を述べる。経営者による内部統制の評価範囲は、内部統制基準及び実施基準において記述されている。上場会社は、そこに記述された方法に基づき、外部監査人と協議の上、評価範囲を決めることとなる。
ここで留意しなければならないのは、次の2点である。
(1) 経営者の評価範囲のすべてが、外部監査人による内部統制監査の対象となるとは限らない。
(2) 経営者の評価範囲と、財務諸表監査のために外部監査人が実施する内部統制評価の範囲が同じとは限らない。
財務諸表監査において、外部監査人は、その専門的な判断により選定した事業拠点等に往査し、そこで勘定残高等をサンプリングにより検証してきた。内部統制監査においても、その点は同じである。外部監査人の判断により監査の対象となる範囲が決る。このため、上記(1)のとおり、外部監査人による検証は、必ずしも経営者による評価範囲の全部とは限らない。
上記(2)はもう少し複雑である。前述のとおり、外部監査人は財務諸表監査において、有効性ないし効率性の観点から、内部統制評価を実施する。外部監査人は、財務諸表監査目的のため、経営者による評価範囲外の内部統制を評価することがありうる。
すなわち、実施基準では「企業の事業目的に大きく関わる勘定科目(例えば、一般的な事業会社の場合、原則として、売上、売掛金及び棚卸資産)に至る業務プロセスは、原則としてそのすべてを評価の対象とする。」としている。財務諸表監査では、これ以外のたとえば、固定資産の取得・売却・除却・減価償却に係る内部統制を評価の対象とすることがある。
なお、これとは反対に、財務諸表監査の対象とはならない有価証券報告書記載事項(大株主の状況など)に係る内部統制が内部統制報告制度の対象となることも忘れてはならない。両者の範囲は、図表3のとおりである。
<図表3:内部統制評価範囲-内部統制監査と財務諸表監査の違い>
3.2 評価対象期間
内部統制報告制度においては、期末現在の内部統制の有効性が対象となる。このため、期中において重要な欠陥が発見されたとしても、期末までに是正すれば内部統制は有効という報告をすることができる。
一方、財務諸表監査では、損益計算書を含む財務諸表に記載された残高の適正性に対する意見表明を行うため、期間を通した(1年間の)内部統制の有効性に依拠しなければならない。たとえば、売上高が適正であるとするためには、1年間の売上高に係る内部統制の有効性に基づいて、監査を実施することになる。
3.3 会社としての対応
経営者の評価範囲のすべてが、外部監査人による内部統制監査の対象となるとは限らないとしても、会社としては外部監査人が内部統制監査の対象とする範囲だけの評価を実施することはできない。評価範囲の妥当性が監査対象となっており、外部監査人は評価範囲を検討した後に、往査する事業拠点等や検証する業務プロセスを決定する。
反対に、経営者の評価範囲より、財務諸表監査のために外部監査人が実施する内部統制評価の範囲が広い場合があるということは、会社が評価しない内部統制を外部監査人が評価することを意味する。そのような範囲に重要な欠陥がないようにしなければならない。重要な欠陥だけではなく、経営者による評価範囲外の不備と評価範囲内の不備が集計され、結果として重要な欠陥となることも想定されるため、不備がないことが望ましい。
このため、本来、経営者評価の対象外の内部統制に不備や重要な欠陥があることが予想されるのであれば、経営者評価の対象とすべきである。もともと、虚偽記載リスクの可能性が高い業務プロセスに係る内部統制は、評価範囲に含める必要があることは、実施基準に規定されている。リスクアプローチを採用すれば、そのような範囲は自ずから評価対象となるはず、とも言える。
経営者の評価は期末の有効性が対象となるが、評価は期間を通じて実施することが望ましい。期末日に全社の内部統制を評価することは不可能であるのは明らかであるとしても、期末近くに一斉に評価するのではなく、期間を通じてこれを実施することにより、評価担当者の負荷を平準化することができる。また、外部監査人は、財務諸表監査においても、この期間を通じた経営者評価を利用することができるため、財務諸表監査の効率化(監査報酬の低減)も期待できる。
4.内部統制監査報告書
4.1 一体型の監査報告
前述のとおり、内部統制監査と財務諸表監査は一体として実施される。このため、監査報告も両者を包含した1つの監査報告書として作成することが原則となる。内部統制監査実務指針の付録3において、6つの文例が掲載されているが、いずれも「独立外部監査人の監査報告書及び内部統制監査報告書」という一体型の表題となっている。
4.2 監査報告の種類
内部統制監査においては、次の監査意見があり、内部統制監査実務指針では、それぞれについて文例が記載されている。
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無限定適正意見
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除外事項を付した限定付適正意見
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不適正意見
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意見不表明
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監査範囲の制約に関する除外事項を付した限定付適正意見
4.3 無限定適正意見
上記は5種類であるのに、文例が6つあるのは、無限定適正意見については、内部統制が有効である場合と、内部統制が有効でない場合の2種類の文例が用意されているためである。内部統制が有効であれば、無限定適正となるのは明らかである。一方、経営者が内部統制報告書において、重要な欠陥があるため内部統制が有効でないとした場合に、それが適正であれば、外部監査人は無限定適正意見を表明する。ただし、この場合に外部監査人は、下記を追記情報として内部統制監査報告書に記載し、有効である場合の無限定適正意見と区別する。
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重要な欠陥の内容
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重要な欠陥が是正されない理由
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当該重要な欠陥が財務諸表に及ぼす影響
4.4 除外事項を付した限定付適正意見
重要な欠陥が1つでもあれば、内部統制は有効でないとしなければならない。反対に、内部統制の欠陥が不備のレベルであれば、内部統制は有効となる。したがって、不備と重要な欠陥の中間の不備がある場合に、除外事項を付した限定付適正意見が表明されるという考え方はない。
実施基準においては、期末日後に実施した是正措置を内部統制報告書に記載している場合において、外部監査人が当該是正措置に関する経営者の記載は不適切であると判断した場合の例示がある。一方、内部統制監査実務指針における文例3では、株式取得により連結子会社となった会社について、やむを得えない事情により十分な評価手続が実施できなかった場合が例示されている。
4.5 不適正意見
外部監査人は、内部統制報告書において、経営者が決定した評価範囲、評価手続、及び評価結果に関して著しく不適切なものがあり、内部統制報告書が全体として虚偽の表示に当たると判断した場合には、内部統制報告書が不適正である旨の意見を表明する。この場合には、内部統制監査報告書に以下の事項を記載する。
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内部統制報告書が不適正である旨
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不適正である理由
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財務諸表監査に及ぼす影響
4.6 意見不表明
意見不表明は、外部監査人が、経営者による内部統制報告書の適正性について意見を述べないということである。これは、監査範囲の制約を受け、重要な監査手続が実施できなかった場合に限定される。内部統制監査実務指針の文例5では、主要な連結子会社の本社社屋が火災により焼失し場合の例が記載されている。
4.7 監査範囲の制約に関する除外事項を付した限定付適正意見
外部監査人が評価対象とすべきであると判断する内部統制が、経営者によって評価されないことがある。それは次の場合である。
(1) 期末の財務諸表監査の過程で外部監査人により財務諸表の重要な誤謬が指摘され、当該誤謬が経営者による内部統制評価の対象ではない業務プロセスから発生している場合
(2) 外部監査人が財務諸表監査目的で経営者による内部統制評価の対象ではない業務プロセスの評価を実施し、重要な欠陥に相当する内部統制の不備を特定した場合
上記(1)は財務諸表監査と内部統制監査が一体として実施されるため、財務諸表監査の結果から、遡って検討した結果、その問題が内部統制に起因している場合である。また、上記(2)は前述のとおり、財務諸表監査において外部監査人が評価する内部統制と、経営者が評価する内部統制とは異なることから起こる。
そのようなときに、時間的制約から経営者による評価が不可能な場合は、外部監査人は、監査範囲の制約として除外事項を付した限定付適正意見を表明する。文例6では、株式取得により連結子会社になった会社を評価対象外としており、それがやむを得ない事情に相当するとは認められない場合が例示されている。
5.会社法監査と重要な欠陥の報告
内部統制報告制度は、金融商品取引法の枠組み内で実施される。それとは別にわが国では会社法の枠組みに基づく財務報告と外部監査制度がある。この2つの制度に対応するためには、それぞれ別々に法律要件を満たすことが必要であるが、対応するのは同じ当事者となる。そのため、両制度の間でなんらかの調整をすることが必要となる。
監査役としては、監査報告日より前に外部監査人から重要な欠陥の報告を受けることが必要となる。しかし、このような会社法上の要請が、必ずしも内部統制報告制度において当然に対応されている訳ではない。
この点について内部統制監査実務指針においては、「経営者の内部統制報告書のドラフトを入手し、内容を確認の上、書面又は口頭により報告を行う。会社法監査終了日時点での外部監査人の報告は、あくまでも内部統制監査の経過報告であることに留意する。」とされている。
会社法監査の終了日時点では、通常大部分の内部統制監査の手続の実施が終了していることが想定される。しかし、内部統制監査の一部の手続(例えば、有価証券報告書の作成に係る決算・財務報告プロセスの評価の検討)については終了していないと考えられる。したがって、内部統制監査報告日(通常、株主総会直後)までの間に実施する手続により、経営者や監査役等に報告すべき内容が変更又は追加される可能性がある。
なお、実施基準では、外部監査人による取締役等への報告には、不備と重要な欠陥を区別することとされている。一般的には、外部監査人による不備の報告は、マネジメントレターにより実施されるが、その記載において、不備と重要な欠陥の区別がなされることになる。
6.監査役の位置づけ
会社法においては、監査役は、必要があれば外部監査人に報告を求める権限を有し、会計監査人の会計監査の方法・結果の相当性について判断することになる。また、外部監査人の選任に当たっては同意権を有し、また、会計監査人を解任する権利も有する。会社法において、監査役に会計監査人の選任権を付与すべきかについて検討がなされていることは周知のとおりである。
一方、金融商品取引法では、監査役の監査活動は統制環境及びモニタリングの一部と捉えられる。このため、監査役監査は、経営者が評価する内部統制の一部に含まれ、結果として外部監査人の監査の対象ともなる。
すなわち、会社法では、監査役は、株主や債権者保護の観点から、独立した機関として取締役の業務執行を監査する役回りとなっている。しかし、金融商品取引法の枠組みでは、潜在的な株主を含む投資家保護の見地から、監査役監査は会社側の内部統制の一部と考えられているのである。
この両者の立場を若干調整する意味で、内部統制基準及び実施基準の前文において、次のように記載されている。
「本基準で示す内部統制の監査において、外部監査人は、監査役が行った業務監査の中身自体を検討するものではないが、財務報告に係る全社的な内部統制の評価の妥当性を検討するに当たり、監査役等の活動を含めた経営レベルの内部統制の整備及び運用状況を統制環境等の一部として考慮することとなる。」
7.監査役監査における内部統制監査への対応
上述のとおり、会社の統制環境やモニタリングの一部として内部統制を担っているため、監査役は、内部統制報告制度は、会社法とは別枠で実施される制度であるとして傍観することはできない。
このため、現状の取締役の業務執行の監視の一環として、内部統制報告制度への準備の状況を把握し、検討しておくことが必要となる。その際、監査役は次のような点に留意して会社の準備状況を検討することをお勧めする。
7.1 内部統制の評価範囲
内部統制基準及び実施基準並びに内部統制監査実務指針において内部統制の評価範囲についての詳しく記述されている。評価範囲は外部監査の対象となる。また前述の「財務諸表監査との一体監査」の項で述べたとおり、経営者の評価対象の範囲外から不備または重要な不備が発見されると、時間的な制約から会社としては対応できなくなる。
監査役は、これまでの監査役監査から得られた情報を基にして、会社ないし外部監査人による評価範囲についての判断が適切であるかどうかを確かめておくことが望まれる。
7.2 キーコントロールの識別
キーコントロールは、内部統制基準では「統制上の要点」と呼ばれている。名前のとおり主要な内部統制であり、会社及び外部監査人は、このキーコントロールの評価を実施する。反対にそれ以外の内部統制の有効性評価は、制度対応目的としては不要ということができる。
したがって、キーコントロールをしっかり識別して決定することが、その後の作業に大きな影響を与えることになる。効率的な制度対応のためには、キーコントロールは許される範囲内で、できる限り少ない数に絞ることが得策である点に留意すべきである。
キーコントロールについては、外部監査人に事前に見せ、できる限り外部監査人から同意を得ておくことが望ましい。
7.3 内部統制の評価
内部統制の評価には、整備状況の評価(ルールが適切か?)と運用状況の評価(ルールが守られているか?)がある。内部統制の有効性評価のためには、この両方を実施する必要がある。ただし、整備状況が有効でない内部統制について、運用状況の評価を実施しても無駄である。この点を会社担当者が理解していないことがあり、整備されていない内部統制の運用テストを実施してしまうケースがあるので、留意すべきである。
7.4 内部統制の不備の改善
不備がある内部統制の改善に当たっては、その整備状況を改善するまでに時間がかかるのが普通である。特にIT統制の改善にはシステム上の対応が必要となることあり、時間とコストが掛かる場合がある。
内部統制の不備を改善するためには、予算措置を含め、経営者による積極的な関与が必要となる。この点が十分であるかについて、留意すべきである。
7.5 外部監査人による予備的な監査
本番の経営者評価の前に、予備的な評価を実施した後、外部監査人から予備的な監査(ドライラン)を受けることをお勧めする。部分的に経営者評価ができたところから、順次この予備監査を受けることができる。必ずしも、経営者による予備評価のすべてが終了しないと、外部監査人の予備的な監査が受けられないというわけではない点に留意されたい。
8.おわりに
前述のとおり、監査役監査は、全社的な内部統制の一部と考えられる。このため、内部統制報告制度への対応準備は、監査役自身にも求められる。しかし、相手が監査役であることから、会社の内部統制報告制度対応プロジェクト担当者としては、手がつけにくいことも事実である。このため、監査役監査の評価について、準備が遅れがちになっているケースが見受けられる。
一般に、監査役監査に限らず、全般的な内部統制については、内部監査による独立的評価を効果的に実施することが困難であることが多い。このため、できる限り充実した自己点検を実施して、その結果について経営者評価を受ける方法がよいと考えられる。監査役自身も、早めに自己点検シートを作成し、予備的な評価を実施しておかれることをお勧めする。
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