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2014年9月21日日曜日

「第2回 内部統制ラウンドテーブル」での報告

(「第2回内部統制ラウンドテーブル」20101124日開催 提出原稿)

1.内部統制報告の現状

l  依然として経営者の本制度への理解が十分でなく、経営者評価が過度または不十分である会社があった。
l  重要な欠陥の表明率が低いことから、本制度への対応をできる限り簡略化または形式化する会社が増加しているのではないかと感じる。
l  2年目で過去の財務諸表を訂正している会社について、1年目の内部統制評価の妥当性に疑問が残る。1年目においてそのような兆候を見出すことが本制度の本旨と考えられる。
l  1年目、2年目ともに重要な欠陥として報告されたものの約8割が「顕在化した」重要な欠陥であった。

2.内部統制報告制度の見直し

(1) 重要な欠陥と数量指標
l  上記のような課題が見られる要因は次の2つと考えられる。
Ø  基準・実施基準が数量指標を含む手続的な記述になっており、それに準拠した評価手続を実施すれば内部統制の有効性を確かめることができると誤解され、制度の本来の趣旨が十分理解されていない。
Ø  重要な欠陥の定義のうち、特に「発生可能性が高い」という点の理解が困難であることから、経営者と外部監査人間の意見が分かれる余地が大きく、また投資者や社会からも誤解されることがある。

l  このための対応として、手続的な記述を原則主義的な記述に改めることが考えられる。

l  その際、2/3、3勘定、すべて、5%、95%、25件等の数量指標等を撤廃し、自社における内部統制のあり方について、経営者自らがリスクアプローチの観点に基づいて考えるべきであることを明確にしてはどうか。

l  評価・監査の目的である重要な欠陥の有無については、発生可能性すなわちリスク概念が絡むため、理解が困難となる。これについて十分な理解ができるような指針を明示することが必要となる。

l  監査からレビューに変更すべきとの意見がある。しかし、そのための経営者評価と外部監査人のレビュー手続を再定義し、実務を変更することに大きな社会コストがかかる懸念がある。また、現状のやや形式的な対応をさらに助長する可能性もある。

l  基本的な考え方を変更する余地があるとすれば、レビューに変更するのではなく、むしろ重要な欠陥の定義を再検討してはどうか。重要な欠陥の定義を「財務報告において実際に重要な影響を及ぼした内部統制の不備」とすることを検討されたい。これにより、当期中に財務報告に重要な影響を及ぼした内部統制の不備のうち、期末においても改善されていないものが重要な欠陥として報告されることになる。

l  上記の定義変更により、次のような利点が考えられる。
Ø  経営者、外部監査人、投資者、社会に理解されやすい。
Ø  経営者は、内部統制の不備が財務諸表の重要な虚偽記載に至らないように努力しなければならないことが明確なメッセージとして伝わる。
Ø  顕在化しているため、重要な欠陥という呼称にふさわしい。
Ø  投資者にとって意味が薄いと考えられる提出済みの報告書の形式的な訂正の必要がなくなる。

(2) 運用状況の評価方法
業務プロセスに係る内部統制の運用状況の評価において、サンプリングには必ずしも馴染まない質問や観察による評価が効果的かつ効率的である場合も多い。また、一定件数のサンプリングさえ実施すればよいという誤解を生む可能性もある。このため、サンプリングを原則とすることは望ましくないと考えられる。

一方、全社的な内部統制の運用状況の評価については詳細な記述がない。このため、トップダウンリスクアプローチにおいて、重要な位置を占める全社的な内部統制の評価や監査が十分に実施されないという懸念がある。運用状況の評価においては、例えば規定等の文書の存在だけでなく、実質上有効に機能している証拠を査閲・観察すべきであることを追記する等、より具体的かつ詳細な記述にすべきであると考える。

(3) 持分法適用会社の適用除外
持分法適用会社に関しては、本制度における評価・監査の対象とされているが、支配権がないことから、実施手続が限定されることが実施基準においても認識されている。しかし、このように限定された評価・監査手続によって、重要な欠陥が発見できなかった場合、経営者及び外部監査人の責任が軽減される措置があるかどうかについては明確ではない。この点は米国に比較して、経営者及び外部監査人に対して責任が加重されている。持分法適用会社は対象外とすることを検討されたい。

(4) 財務報告の範囲
「財務諸表及び財務報告の信頼性に重要な影響を及ぼす開示事項等」とされているが、連結ベースでの評価・監査が前提となっていることから、これを連結財務諸表に限定することを検討されたい。これにより個別財務諸表やその他の開示事項に係る内部統制の評価・監査の負担を軽減することができ、また、実質上内部統制の構築自体が困難である大株主の状況に記載された所有株数に含まれる名義株に係る内部統制に関する責任と負担を軽減することができる。これにより、投資者保護が後退することはほとんどないと考えられる。

(5) パラグラフ番号形式による記述
参照や将来の改訂のためには、現状の章立て形式より、パラグラフ番号形式による記述が望ましい。

3.内部統制の現状
本制度の導入により、経営者のみならず、社会全般における内部統制についての意識と理解が進んだ。上場企業においては、財務報告に係る内部統制に関して重い責任を有する経理部門やその評価を行う内部監査部門の社内での位置づけが再認識されたと考えられる。
しかし、財務報告以外の分野の内部統制にも取組み、より良い経営に内部統制を生かそうとする会社があまり多くないのは残念である。

4.内部統制の展望
単に内部統制基準等に準拠して実施すればよいのではなく、どの範囲でどのような評価を実施する必要があるかを企業自らが考える必要がある。実際に評価・報告を経験したことにより、本制度についての理解が進んだこの時点で、もう一度、自社における内部統制のあり方を検討してほしい。

内部統制は、経営者がどのように企業経営したいのかを反映するものでなければならない。財務報告のみならず、内部統制全体についてバランス良く強化することが、結果として財務報告に係る内部統制の維持向上につながることを理解してほしい。

監査人は、経営者評価をなぞるような形式的なチェックに陥ることなく、毎期ゼロベースでリスク評価を行い、メリハリの利いた効果的かつ効率的な監査を実施すべきである。また、基準等の要求に限定せず、監査先の内部統制を如何に良くするかについて積極的に指導的機能を発揮すべきである。                           


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