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2015年10月29日木曜日

企業不祥事発生時には直ちに社内調査委員会を設置すべし

前項の「取締役への責任追求:オリンパスと大王製紙の違い」で述べたとおり、社内の自浄作用によって、社内調査委員会を設置して対処した大王製紙において、直接事件に関わりのない取締役・監査役への責任追求はされなかった。

そのため、不幸にも企業不祥事が発生した場合には、外部に情報が漏れ、株主や社会から第三者調査委員会の設置を迫られる前に、いち早く社内調査委員会を設置して対応することが必要となる。そうしないと、事件に関係しない取締役・監査役への責任追求が行われる可能性が高くなる。

日本監査役協会の監査等委員会監査等基準や監査委員会監査基準においては、「企業不祥事発生時の対応及び第三者委員会」というセクションを掲げている。これは、上記のような背景から次のように規定している(監査等委員会監査等基準第30条、監査委員会監査基準第27条)。

(1)監査(等)委員会は、「必要に応じて調査委員会の設置を求め」るとしている。

(2)取締役の対応がそれでも不適切な場合は、外部の独立三者による第三者委員会の設置を監査(等)委員会が勧告すべきであるとしている。

上記の(1)は第二層で食い止めることを目的としており、(2)はそれでもダメな場合は、第三層での対応になってしまうことを意味する。

取締役への責任追及:大王製紙とオリンパスの違い

いつもいろいろお世話になっている武井一浩先生(西村あさひ法律事務所)の話を久しぶりに聞いた。

オリンパス事件は、社長を含む一部の取締役が巨額の含み損失を抱える金融商品の飛ばしをやったという事件である。飛ばされた金融商品の代わりに計上された資産が含み損の分過大に計上されたまま、というのが大雑把な構図である。含み損は当初より徐々に減ってきているが(実現させているため)、財務諸表の虚偽記載額は約1千億円であった。

一方、大王製紙については、創業者(元社長)の息子(会長)が個人的に子会社などから約165億円の借り入れを行った、というものである。取締役会の決議など必要な手続きが行われていなかった。

オリンパスの場合は社長を含む一部の取締役以外の取締役は、不正会計が行われていることを知らなかったとされている。大王製紙についても、取締役会決議が行われていないのであるから、親会社の取締役は子会社から会長への貸付については知らなかったと考えられる。

事実を知り得ない取締役が、オリンパスの場合は損害賠償訴訟の対象となり、大王製紙の場合は責任を問われることはなかった。

この明暗はどこで分けたのであろうか。

オリンパスの場合は、だいぶ前から不正会計が行われているのではないかとFACTAという雑誌で取り上げられ(その経緯は本として出版されている)、英国人の社長の就任直後の退任により、不正会計が明るみに出た。その後、会社は第三者調査委員会を設置して報告書を公表した。

大王製紙の場合は、元社長の創業者に物が言える監査役が一人おり、この人が息子(会長)の巨額借り入れを察知して、創業者に報告している。これに対して会社が社内調査委員会を設置して、報告書を公表した。

オリンパスの方は、日弁連型の第三者委員会を設置し、大王製紙は社内調査委員会であった。それだけ見ると、オリンパスの方が優れているように見える。

大きく違う点は、大王製紙の場合は、外部に情報が出る前に社内で対応した点である。「自浄作用」とよく言うが、それが効いたということになる。オリンパスは、外からの圧力で日弁連型の第三者調査委員会の設置を迫られ、その結果詳細な事実が判明した。

武井先生は、企業のガバナンス構造を三層に分け、経営者を頂点とするマネジメント組織を第一層、取締役会(監査役会を含む)を第二層、株主・社会を第三層と呼んでいる。

大王製紙は、第二層で止めたことにより、それを知らなかった取締役・監査役の責任は問われなかった。一方、オリンパスは第三層まで行ったことから、知らなかった取締役・監査役の責任が問われたのである。この考え方は、メルシャンの循環売上不正の訴訟から確立されたもの、ということであった。

2015年10月28日水曜日

監査等委員会監査等基準の「補助使用人等」は見直しが必要

日本監査役協会が9月に監査等委員会監査等基準(「監査基準」ではなく「監査等基準」)を公表した。その第15条では監査等委員会の職務を補助すべき取締役及び使用人を「補助使用人等」とし、その確保を含む監査環境の整備が重要であるとの認識を代表取締役等と共有するものとする、としている。

第18条1項では、監査等の実効性の確保の観点から、補助使用人等の体制の強化に努めることが求められている。

これらはどちらもレベル4の努力義務事項となっている。

一方、第20条1項では、内部監査部門その他内部統制システムにおけるモニタリング機能を所管する部署等を「内部監査部門等」とし、監査等委員会と緊密な連携が保持される体制を整備するとしている。これはレベル3、すなわち不遵守が直ちに善管注意義務違反となるわけではないが、不遵守の態様によっては善管注意義務違反を問われ得る事項としている。

以上のとおり、日本監査役協会の監査等委員会監査等基準では、補助使用人等の確保を努力義務とし、内部監査部門等と緊密に連携することをそれよりレベルの高いレベル3としている。

日本監査役協会が従来から公表している「監査役監査基準」にも少し文言は異なるが上記の3点についてほぼ同様の規定が盛り込まれている。なお、監査役監査基準は、要求事項のレベル分けは、今のところ行われていない。

監査役に補助使用人が必要なのは、社長または監査担当取締役が管轄する内部監査部門を、取締役の業務執行を監査する立場の監査役が使うことができないからである。

監査等委員会には、監査役と同様に補助使用人の確保が必要であろうか? 監査等委員は監査担当取締役であるから、内部監査部門を管轄するべきである。

監査等委員会を設置しておきながら、社長を含む別の取締役が内部監査を管轄することは違法ではないが、明らかに合理的でない。監査を担当する取締役がいるにも関わらず、どうしても内部監査を直轄したい社長はいるかもしれないが、少数であろう。

このように考えると、監査等委員会設置会社には、監査等委員会の補助使用人は、内部監査部門そのものであり、別に用意する必要はない。補助使用人の確保が必要という規定は、監査役監査基準からのコピーであり、監査等委員会には不要である。

監査等委員会監査等基準には、「監査等委員会は内部監査部門を管轄する」という規定をレベル3にすべきと考える。

なお、監査実務ではなく委員会の運営事務を行う事務局を設置することは努力義務事項として監査等委員会監査等基準第5条5項に定められている。同基準では、「事務局」と「補助使用人等」は区別されている。



2015年10月27日火曜日

監査(等)委員会と監査役会、どちらが優れているか?

日経の「大機小機」には感心させられる。10月24日の記事は、社外取締役中心の監査委員会より、監査役会の方が効果的ではないかという意見であった。
理由は、社内監査役が会社のビジネスや内部事情に詳しく、調査権をもつなど法的権限も強いためとのこと。
東芝が社外取締役を(取締役会の)過半数にすることは正しかったのかについて問題提起し、監査役会設置にした方がガバナンス強化になるのではないか、というのが記事の趣旨である。
今回の記事は感心しない。理由は、監査役に法的パワーがあっても、人的バワーがないからである。いくら調査権があっても、社外監査役を含めて3人から5人の監査役の独任性(各自が監査をして結果を報告する)では、ちょっとした中堅企業でも監査なんぞできるはずがない。
たしか、電力会社では、監査役の監査補助者が30人ぐらいいたと思うが、これくらいいたらなんとか監査になる。東芝の監査法人が使う監査要員数は、海外を含めると100人ではきかないと思う。これに対して、監査経験がほとんどない社外監査役を含む5人程度では何もできないに等しい。
監査委員会や監査等委員会のメンバーの社外取締役には会社の知識がないのは事実であるが、取締役であるから内部監査を所管することができる。社外取締役には荷が重いのであれば、内部監査担当の社内取締役を監査(等)委員にして、内部監査を所管すればよい。
現状ではほぼ100%の監査役会設置会社において、内部監査は社長直轄となっている。グローバル企業の一部では100人を超える内部監査人を抱えている。東証一部企業であれば、20人や30人の内部監査人がいる会社は多い。内部監査人は内部監査を年がら年中するのが仕事。5年もやれば監査に習熟する(ただし、会計、法律、ITなどの専門性の不足に対しては外部の手を借りればよい)。一方、監査役の監査補助者は少数である。
監査役会設置を監査(等)委員会より優れた制度にするためには、監査役補助者をせめて内部監査並みにすることが必要となる。たとえば、内部監査が50名いたら十分な会社には、監査役監査補助者さらに50人置くことが必要となる。
監査役は取締役の業務執行を監査するのであるから、社長直轄の内部監査も監査役の監査対象となる。言い換えると、会社法上、監査役は社長を頂点とする内部統制システム全体をその外から監査するというになっている。したがって、内部監査と同数またはそれ以上の人的パワーがなければ監査ができない。
そこのところを合理化するのが監査(等)委員会である。指名委員会委員会設置や監査等委員会設置では、監査(等)委員会は、会議体なので、実際に手を動かして監査をする機関ではない。そのために「内部統制システムを有効に活用すべし」と言われるが、具体的には内部監査を所管するということであると理解しなければならない。
監査役制度の最大の弱点は、社長直轄の内部監査を指揮命令できないということである。監査役を独任性として強大な権限を与えたら、代表取締役などの経営陣の暴走を食い止めることができる、という時代錯誤の幻想の下に会社法がつくられている。証拠を掴まないと監査報告書は書けない。監査役監査補助者を内部監査人の人数以上置くことが前提でないのであれば、監査役は「お目付役」以上の何ものでもない。
人的バワー(専門性と人数)がないと大会社の監査はできない。社内事情に詳しいとか、取締役会などの主要な会議に出席していたら、監査をしたことになるわけではない。
東芝は、一連の改革の中で、内部監査を監査委員会の直轄とした。この決定は正しい。東芝のように、非常勤の社外取締役が監査委員長の場合は、腕の立つ内部監査部長の配置が必要となる。

なお、監査(等)委員長や監査(等)委員が、内部監査部長を兼務すれば、内部監査部長の設置も必要なくなるが、会社法上、監査(等)委員は、使用人を兼務できないことになっているため、これはできない。これは、たとえば監査委員がたとえば営業事業本部長を兼務することができないという趣旨であり、本来、内部監査部長を兼務することに問題はなく、返ってその方が望ましい。このような兼務禁止規定は、会社法上、内部監査が何たるかについて定義されていない(または理解されていない)ことが要因と考えられる。





2015年10月11日日曜日

TSR ー 業績連動報酬の指標

TSRとは、Total Shareholder Return=(株価の上昇額+配当額)/当初株価、である。業績連動報酬には、当期純利益などの財務指標と、株価などの市場指標がある。TSRは市場指標の代表格と言える。

当期純利益は、基本的には取締役がコントロールできる点で優れた指標と考えられる。しかし、株主視点に立った場合には、株価と配当額が直接的な関心事となる。当期純利益が増えれば、それが株価と配当額に反映する可能性は高まるが、株主から見ると当期純利益は間接的な指標に過ぎない。

TSRは、こうゆう意味で優れた指標と言える。ただし、株価は政治的要因や経済全体の動向などに左右される。景気拡大期 においては、取締役の努力とは関係なく株価が上がり、企業業績も上がることもありうる。景気後退期はその逆となる。

TSRから、このような要因による変動をできる限り排除するためには、5年程度の長期間を対象とするとともに、同業他社との比較が欠かせない。長期のTSRが同業他社を上回っているかに基づいて、業績連動報酬を決定する。

TSRをこのように使う事により、取締役の活動成果を適切に反映した指標となる。利益、株価、配当額は、絶対的な指標であるが、これは相対的な業績測定指標と言える。

米国の大手上場企業の多くでは、このような同業他社とTSRを比較する手法が使われているらしい。



2015年10月9日金曜日

顧客を知るーKnow Your Customer

顧客が欲しいものを提供するのがビジネス。しかし、お客に売れるチャンスがあるのに、売ってはいけない場合がある。

まず、与信が不足するので掛け売りができない顧客には売らない、というのは古典的なケース
最近は、反社会的勢力に貸し付けをした銀行のビジネスが問われた。
下記の記事は、それに近い国際版と言える。
昔、ヤマハ発動機の小型ヘリコプター(農薬散布などに使う)が、中国の軍事用に輸出され問題となった。今後は、ドローンもそのような課題を抱えることになる。
金融機関のマネーロンダリング対策も、特定の(リスト化されている)顧客の口座開設や送金依頼を扱わないというもの。
監査法人は、受注承認が厳しい。監査リスクの高い(たとえば、決算を粉飾する可能性が高い=それを防ぐのが監査法人の仕事ではないかと言われそうであるが、、)会社の監査は受けない。

これらは、すべて「Know Your Customer」の課題となる。誰が顧客かによって、販売するかしないかを判断することが必要となる。下記のように販売会社側の問題とも考えられる場合でも、メーカーの責任を問われることもありうるので、メーカーは自社の問題ではないと見過ごしてはいけない。

対応策は、まずは受注承認。J-SOX導入初期で「受注に承認が必要か?」と問われることが多かったが、上記の例を想起すると受注には承認が必要であることが分かる。件数が多い場合には、ブラックリストの作成と受注時にそれとのマッチング。これをグローバルで対応するのは容易ではないが、それに向かって対策を進めるしかない。

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「イスラム国」のトヨタ車使用 米財務省が調査
 【ワシントン=中西豊紀】米財務省は7日までに、過激派組織「イスラム国」(IS)がトヨタ自動車製の車両を数多く使用しているとして調査に乗り出した。同省が担うテロ対策の一環で、トヨタ自動車も調査に協力している。トヨタは同日「テロ活動に車両を転用するおそれのある人物や団体に車両を販売しないことを明確に定めている」との声明を発表した。
 米ABCテレビなどが財務省の調査を報じた。ISはシリアやリビアなどで四輪駆動の「ランドクルーザー」など多数のトヨタ車を改造して使っているという。トヨタ車は耐久性に優れているとされ、砂漠地帯などでのテロ活動に使われる場合がある。(日経新聞2015年10月8日)

2015年10月6日火曜日

決算のウェブ開示タイミングの誤り

決算を発表は、兜(かぶと)クラブ(東証の記者クラブ)の会見室で行うことが多い。筆者は、ここがあまり使われないタイミングの1月中旬に、毎年リスクマネジメント調査の記者会見をしていた。(この時期は記事ネタが不足がちのため、記事にしてもらいやすい)

以前は、東証の建物の3階か5階ぐらいの上の階にあったが、4−5年前に地下になったように記憶している。記者クラブの部屋に入ると各社ごとの棚が並んでおり、そこにプレスリリースを投げ入れるようになっている。これを「投げ込み」というらしい。

投げ込みの場合は説明なしであるが、記者会見をする場合は、事前に記者クラブに予告し、横に3つか4つある部屋を予約しておく。時間になったら、記者クラブの部屋に聞こえるスピーカーで「今からやります」と放送すると、ぞろぞろと記者が会場の部屋にやってくる。

上の階にあった頃は、会場を取り仕切る怖そうな中年女性(勝手なことをすると怒られた)がいたが、地下に移動してからはいなくなった。ちなみに、金融機関は東証ではなく、日銀で記者会見をするそうである。テレビを気をつけて見たら分かるが、金融機関の会見は後ろがごちゃごちゃした普通のオフィスのように見える。

ところで、このように決算発表を各社がするのであるが、これは証券市場の後場が終わる3時に行うことが多い。その日の株価に影響を与えないようにするためと考えられる。何れにしても翌日には株価に影響するが、一旦頭を冷やす時間があるのがミソかもしれない。といっても、海外市場は東証の後に開くので、今となっては、3時の発表にどれだけの意味があるかわからない。

さて、本題。下記の3社は、ウェブサイトで決算の開示をするタイミングが早すぎた例である。調べた限りでは、今年は2件、3年前に1件起こっている。ウェブサイトでの開示でタイミングが問われるのは、決算だけではない。特定の担当者まかせで、手作業で行うというのは危険。

要領としては、プログラムのテスト環境から本番環境への移行や、本番環境でシステムを動かすときの運用管理システムへのプログラム登録と同じようすればよい。

「事前に開示するファイルと開示時間をシステムに登録」→「それを別の人(上司)が内容チェック」→「時間がきたら自動的にウェブサイトに開示」、である。調べたことはないが、多分こうゆうシステムが販売されていると思う。もしかしたら、富士通製もあるかもしれない。すくなくとも富士通や新日鉄住金ソリューションなら自社で作れることは間違いない。

担当者任せはやめた方が良い。

富士通
午後3時に発表予定だった決算情報が午前10時24分から11時03分までの間、ホームページで公開されていたことを明らかにした。社内の指摘を受け、情報を削除。東証に報告後に発表時間を繰り上げ、午後0時半に開示した。(ロイター2015年7月31日)

新日鉄住金ソリューションズ
2015年7月28日、開示時刻より30分早くホームページに決算資料をアップするミスが発生した。(ロイター2015年7月31日)

ホンダ
2012 1029日、同日発表の決算関連資料を予定より4時間半早くホームページに掲載する人為ミスがあったと明らかにした。広報部の担当者が誤って掲載する操作を実行してしまい、20分間にわたって外部から自由に閲覧できる状態が続いた。決算情報は株価に大きな影響を与える可能性があり、情報管理のあり方が問われそうだ。(日経2012年10月29日)

2015年10月5日月曜日

業績報酬を取り返す ー クローバック制度

不正経理事件が発覚すると、過去の財務諸表が訂正される。一般にこの訂正は、上方ではなく下方訂正となる。取締役報酬が、業績連動になっている場合には、このような訂正により、過去の業績連動報酬が払いすぎであったことになる。

東芝の場合には、別項での述べたとおり業績連動報酬は少なかったが支払われていなかったわけではない。過去の財務諸表の訂正により払いすぎた業績連動報酬はどうなるのか?本来は、返金してもらう必要がある。

これまで、日本ではこのような実務はないと考えられる。しかし今後、業績連動報酬が増えてくると、返金制度すなわち「クローバック制度」の導入の検討が必要となるはずである。

米国では、ドッドフランク法に基づき、業績連動報酬に関する情報開示の法案が発表されたことを受け、SECはグローバックを求める条項10Dを追加した。米国では、過去4年間にFortune500社の約85%がすでにグローバック制度を導入しているとのことである。ただし、実際にクローバックを適用するかどうかは取締役会で決定するという内容とのこと(Pay Governanceニュースレター2015/8)。

東芝のように2008年度から過去6年にわたって訂正している(東芝プレスリリース2015/9/7)場合、どれだけ遡る必要があるか問題となる。米国の証券取引法案ではこれを3年会計期間(ルックバック期間)としている。

日本の場合、支払った取締役報酬を返金するという事例はあまりない。取締役が過去に支払った所得税が還付されるのか(例えば、罰金的なものと考えると還付されない)、定額固定報酬を前提とする役員報酬税制上、過去の役員報酬の減額が法人税法上どのように扱われるのか(減額前の差額が賞与認定される可能性)についても検討課題となる。






2015年10月2日金曜日

取締役の評価にExplainが最も多い

KPMGの調査によると、今年の7月ごろまでに東証に提出された「コーポレートガバナンスに関する報告書」では、取締役会の評価に最もExplainが多かったとのことである。


東証の上場規則によると、コーポレートガバナンス・コードの「原則」は、東証1部、2部だけでなく、マザーズ、ジャスダック上場会社にも適用される。原則4−11において、取締役会の評価に関しては、次のように記載されている。


【原則 4−11.取締役会・監査役会の実効性確保のための前提条件】 (中略)
取 締 役 会 は 、取 締 役 会 全 体 と し て の 実 効 性 に 関 す る 分 析 ・ 評 価 を行うことなどにより、その機能の向上を図るべきである。 

「実効性に関する分析・評価を行うことなどにより」となっているので、取締役会の評価は例示されているだけとなる。よってマザーズ、ジャスダック上場会社は取締役会の評価を実施していなくても、Explainは不要と考えられる。

一方、東証1部、2部上場会社だけに適用される「補充原則」には次のように記載されている。


補充原則 4−113
取締役会は、毎年、各取締役の自己評価なども参考にしつつ、取 締 役 会 全 体 の 実 効 性 に つ い て 分 析 ・ 評 価 を 行 い 、そ の 結 果 の 概 要 を開示すべきである。

「実効性について分析・評価を行い、その結果の概要を開示すべきである」としているので、これ以外の方法の実施や、これを実施していないときには、その理由の開示、すなわちExplainが必要となる。