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2015年10月27日火曜日

監査(等)委員会と監査役会、どちらが優れているか?

日経の「大機小機」には感心させられる。10月24日の記事は、社外取締役中心の監査委員会より、監査役会の方が効果的ではないかという意見であった。
理由は、社内監査役が会社のビジネスや内部事情に詳しく、調査権をもつなど法的権限も強いためとのこと。
東芝が社外取締役を(取締役会の)過半数にすることは正しかったのかについて問題提起し、監査役会設置にした方がガバナンス強化になるのではないか、というのが記事の趣旨である。
今回の記事は感心しない。理由は、監査役に法的パワーがあっても、人的バワーがないからである。いくら調査権があっても、社外監査役を含めて3人から5人の監査役の独任性(各自が監査をして結果を報告する)では、ちょっとした中堅企業でも監査なんぞできるはずがない。
たしか、電力会社では、監査役の監査補助者が30人ぐらいいたと思うが、これくらいいたらなんとか監査になる。東芝の監査法人が使う監査要員数は、海外を含めると100人ではきかないと思う。これに対して、監査経験がほとんどない社外監査役を含む5人程度では何もできないに等しい。
監査委員会や監査等委員会のメンバーの社外取締役には会社の知識がないのは事実であるが、取締役であるから内部監査を所管することができる。社外取締役には荷が重いのであれば、内部監査担当の社内取締役を監査(等)委員にして、内部監査を所管すればよい。
現状ではほぼ100%の監査役会設置会社において、内部監査は社長直轄となっている。グローバル企業の一部では100人を超える内部監査人を抱えている。東証一部企業であれば、20人や30人の内部監査人がいる会社は多い。内部監査人は内部監査を年がら年中するのが仕事。5年もやれば監査に習熟する(ただし、会計、法律、ITなどの専門性の不足に対しては外部の手を借りればよい)。一方、監査役の監査補助者は少数である。
監査役会設置を監査(等)委員会より優れた制度にするためには、監査役補助者をせめて内部監査並みにすることが必要となる。たとえば、内部監査が50名いたら十分な会社には、監査役監査補助者さらに50人置くことが必要となる。
監査役は取締役の業務執行を監査するのであるから、社長直轄の内部監査も監査役の監査対象となる。言い換えると、会社法上、監査役は社長を頂点とする内部統制システム全体をその外から監査するというになっている。したがって、内部監査と同数またはそれ以上の人的パワーがなければ監査ができない。
そこのところを合理化するのが監査(等)委員会である。指名委員会委員会設置や監査等委員会設置では、監査(等)委員会は、会議体なので、実際に手を動かして監査をする機関ではない。そのために「内部統制システムを有効に活用すべし」と言われるが、具体的には内部監査を所管するということであると理解しなければならない。
監査役制度の最大の弱点は、社長直轄の内部監査を指揮命令できないということである。監査役を独任性として強大な権限を与えたら、代表取締役などの経営陣の暴走を食い止めることができる、という時代錯誤の幻想の下に会社法がつくられている。証拠を掴まないと監査報告書は書けない。監査役監査補助者を内部監査人の人数以上置くことが前提でないのであれば、監査役は「お目付役」以上の何ものでもない。
人的バワー(専門性と人数)がないと大会社の監査はできない。社内事情に詳しいとか、取締役会などの主要な会議に出席していたら、監査をしたことになるわけではない。
東芝は、一連の改革の中で、内部監査を監査委員会の直轄とした。この決定は正しい。東芝のように、非常勤の社外取締役が監査委員長の場合は、腕の立つ内部監査部長の配置が必要となる。

なお、監査(等)委員長や監査(等)委員が、内部監査部長を兼務すれば、内部監査部長の設置も必要なくなるが、会社法上、監査(等)委員は、使用人を兼務できないことになっているため、これはできない。これは、たとえば監査委員がたとえば営業事業本部長を兼務することができないという趣旨であり、本来、内部監査部長を兼務することに問題はなく、返ってその方が望ましい。このような兼務禁止規定は、会社法上、内部監査が何たるかについて定義されていない(または理解されていない)ことが要因と考えられる。





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