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2018年11月21日水曜日

ゴーン会長事件発覚は内部通報か?


 日産自動車のカルロスゴーン会長が金商法違反容疑で逮捕されました。これは有価証券報告書における役員報酬の虚偽記載の疑いということです。どうも同氏の不正による利得などを役員報酬に上乗せして開示すべきだったということのようです。これは本来は業務上横領や特別背任罪ではないかと思いますが、これを有価証券報告書の虚偽記載としたのは何か理由がありそうです。

 今後日産自動車は、第三者委員会を設置して詳しく調査をするそうですので、いろいろと明らかになると思います。ただし、捜査に支障をきたすことから、事件の詳細が記載された第三者委員会の調査報告書が公表されるのかどうかは疑問があります。また、司法取引により日産に不利な内容が免責されているようですので、それが調査報告書に記載されることになるとは思えません。

 日経新聞によれば、「日産は社内調査の結果、ゴーン会長の不正行為として(1)報酬の過少記載(2)投資資金の私的流用(3)経費の不正支出――3点を確認したと説明している。」としています。

 (2)(3)については、オランダ子会社の資金を流用したとか、自身がベルサイユ宮殿で行った結婚式費用を負担させたなどが報道されています。

 会長が逮捕されるまでの衝撃的な結果になったことは、本来、日産が望んでいたのではないと思います。意図せず、こうなってしまったと見るべきと思います。

 そのきっかけは何だったのでしょうか。日産側の発表では「内部通報」があり、その後数か月間調査をした結果、ゴーン氏と側近のケリー役員の不正が分かったということです。

 ということは、内部調査をしてその結果、(弁護士と相談し)警察に届けたということになります。お金の支出を承認したのは日産(またはその子会社)ですので、ゴーン氏の不正支出には日産に責任があります。有価証券報告書虚偽記載も会社としての責任を免れません。

 お金の支出は、ゴーン会長やケリー役員が指示したのであるから、彼らの不正ということには単純にはなりません。支払をする際の承認権限が誰にあるかということが大事です。日産の職務権限規程上、ケリー役員が承認できる支出であれば、職務権限規程に問題があるとしても、彼らの不正ということで片づけることができる可能性があります。

 しかし、常識的に考えて、大企業の場合トップが指示して支払われるということはありません。経理担当役員やその下の経理部長が承認することになります(日産の場合、億単位の支払でも、取締役会承認になっていることは多分ないと思います)。ということは、経理担当役員や経理部長は、ゴーン会長らの不正に加担したことになります。
 
 これに加えて、有価証券報告書の虚偽記載についても、当然ながらゴーン会長らへの利益供与ですので、役員報酬に加えて開示する必要があります。これを怠ったということですので、日産側の責任になります。(役員報酬の限度額を超えて支払ったのであれば、この点で会社法違反にもなると思います。)

 これらの日産自動車の責任を免れるために司法取引をしたと報道されています。内部通報に基づいて、自ら調査した結果、ゴーン会長らを検察(警察)に差し出したという結果になっています。

 いくら会社が「ゴーン下ろし」をしたいと考えていたとしても、自社の会長を検察に差し出し、自らは刑の減刑を求めるというのは、ありえない感じがします。結果としてそうなったのは確かですので、そのきっかけは何だったかに関心が移ります。

 もし内部通報があったとしても、社内ではすでに分かっていたことですので、それをきっかけに調査をするようなことをするでしょうか? 

 筆者は、おそらくゴーン会長らを良く思わない日産社員が、当局に通報したのがきっかけではないかと思います。当局から捜査が入り、いろいろな事実が発覚した結果、司法取引をするよう当局から持ちかけられ、検討の結果それを受けることにした、というのが真実のように感じます。

 ただし、日産自動車が「内部通報に基づき調査をした」という発表をしている以上、それが既成事実化することになるでしょう。わざわざ当局がそれを否定する理由は何もありません。当局と相談の結果、内部通報をきっかけにしておいたのかもしれません。日産としては、自浄作業が働いたということになりますので、都合のよい理由づけになります。

 内部通報もありうると思いますが、早めに司法の手が入ったことから、日産の動きがとれなくなり、この最終手段しか打つ手がなくなったという、可能性は否定できないと思います。

 第三者委員会が調査報告書を出すのであれば、内部通報がきっかけという筋書きに沿った内容になると思います。東芝の不正会計は、当局への通報がきっかけになりましたが、日産のこの事件は、内部通報がきっかけということで、歴史に残ることになります。

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