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2015年8月6日木曜日

日本企業の最適資本構成の理論とは?

いい話がありました。
富士フィルムとコダックについては、ハーバードのケーススタディにもなっているらしく、よく使われる比較ですが、こうゆう観点もあるということを再認識しました。

最近は、安全運転過ぎてキャッシュリッチで、ROEが低い日本企業が責められることが多いですが、コダックのように最適資本構成を求めたり、株主還元をしっかりすることが、長期的に見た場合、企業にとって良い事とは言えないということになります。

ちなみに、コダックはSOX初年度(2004年12月期)から内部統制の「重要な欠陥」を報告していました。(米国では期末までに重要な欠陥が解消されないときは、期中にその旨を公表しなければならないことになっていますが、コダックは、早々にこれを公表していました)

伊藤友則一橋大学教授の「経済教室」日経2015/8/4より、
 最適資本構成の理論を現実の企業経営に適用するうえで注意を要する点がある。かつて写真用フィルム市場を二分した富士フイルムホールディングスと米イーストマン・コダックの事例を紹介する。

 アナログフィルムの世界市場がピークを迎えた2000年の両社の世界市場シェアは37~38%でほぼ拮抗していた。しかしデジタル革命の結果、それから10年ほどでアナログフィルムの市場はほぼ消滅した。富士フイルムは現在でも健在なのに対して、コダックは12年に破綻している。

 その明暗を分けた要因の一つが資本構成の問題だ。富士フイルムは00年末に自己資本比率が70%に達し、約8千億円の現金を保有するなど、極めて「非効率な」資本構成を維持していた。一方のコダックは自己資本比率24%、負債比率(D/E)が1倍という「優等生的な」資本構成だった。コダックは自社株買いの原資として多額の社債を発行しており、意図的にレバレッジを上げ、「最適資本構成」を追求することにより株価を最大化しようとしていた。

 富士フイルムは利益の3分の2を稼いでいたアナログフィルム事業に代わる事業として、印刷・コピー機、液晶フィルム、医薬品、医療機器などの多角化事業を育てて危機を脱した。00年からの12年間に研究開発に2兆円、設備投資に1兆7千億円、M&A(合併・買収)に7千億円もの多額の資金を投入している。経営陣のリーダーシップも生き残った要因だが、余裕のある資本構成と強固な財務体力も重要な役割を果たした。

 コダックは医薬品、化学、コピー機、精密機器などの事業を売却してフィルム専業になったことや、短期志向の経営陣などの要因に加え、余裕のない資本構成と激動を乗り切るには弱すぎる財務体力が災いした。主力製品の消滅まで10年という時期に、レバレッジを上げて「最適資本構成」を追求すべきではなかった。

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