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2015年7月16日木曜日

2030年の温室効果ガスの削減目標と電源構成

滝順一氏(日経新聞論説委員)の話を聞きました。(2015/7/1 東京ウィメンズプラザ)私見を交えて報告したいと思います。

2030年の各国目標が出揃った。この前日に中国の削減目標が発表され、セミナー資料には反映されていませんが、それを加えると次のとおりになります。


1990年比 2005年比 2013年比
日本 18.0% 25.4% 26.0%
米国 14-16% 26-28% 18-21%
欧州(EU) 40% 35% 24%
中国 60-65%(*)
*中国の目標は、排出原単位(GDP(生産量)比での削減)
出所:滝氏の資料に筆者が中国を追加した。

(筆者注)201111月にダーバンで開催されたCOP17では、ダーバン・プラットフォームが合意されたことは日本であまり報道されなかったですが、「すべての国が参加する温暖化対処のための2020年以降の枠組みを2015年までに合意すること」でした。それに基づき、各国が国連に削減目標を提出しているのです。ちなみに筆者は、南アへの出張を兼ねてCOP17を覗いてきました。(WBCSDを通じて登録しました)

各国の目標の比較年度は異なります。欧州は1990年比、米国は2005年比、日本は2013年比(上表では太字)です。これは、各国が見栄えの良い比較年度を取ったからというのがその理由です。国連のルールとしては、基準年はどこを取っても良いということになっています。

さてここで、1人当たり排出量(2012年)は、日本9.6トン、米国16.4トン、ドイツ9.0トン、中国6.7トン(筆者)です。1人当たりでは、米国が圧倒的に高い。省エネ余地が高いことが明白です。

それでは、中国の2005年比で60-65%はどういう意味でしょうか?滝氏によると、2030年までに排出量(絶対値)を今から2倍にする計画ということになるそうです。

絶対値(2012)ではどうでしょうか? 日本12.2億トン、米国50.7億トン、ドイツ7.6億トン、中国82.5億トン(筆者)となります。こちらは中国が断トツになります。中国の排出量は世界全体の1/4と言われています。

新聞情報では、この点はあまり触れられていません。新聞を読んで、中国がすごい削減をコミットしたかのように考えていた方も多いと思います。中国の削減目標は、GDP比ですので、GDPが増えると排出量の絶対値も増えます。要するにGDPの伸びほど排出量は増やさないということになります。

次に日本の電源構成を見てみましょう。
再生エネルギーは震災前の2倍の20-24%
原子力は震災前の7割の20-22%
化石燃料は減らして:天然ガス、石炭、石油で55%前後

原発反対の方には、「20-22%」に納得がいかないと思います。私は、原発は当面稼働させるとしても、再生エネルギーの比率20-24%がまだ小さいと思います。

原発再稼働の現状は次の通りです。こういう状況なので、原発はこの夏の需要期には稼働しないことが確定していると言ってよいでしょう。
・川内(せんだい)原発1、2号機:今年の8−9月に再稼働へ
 ~鹿児島地裁が運転差し止め仮処分を却下しました。
・高浜原発3.4号機:今年の2月に適合性審査に合格
 ~福井地裁が運転差し止め仮処分を決定「規制基準は緩すにかにすぎ、合理性ない」
・伊方3号機:今年5月に適合性審査に合格、プルサーマルで今冬再稼働を目指す。
 ~松山地裁で差し止め仮処分の審理中

最後に、今年の11月30日から12月11日までパリ郊外(北東)のブルジェLe Bourgetで開催されるCOP21についてです。
上記のとおり、主要各国思い思いの削減目標が提出されている中で、世界全体としてどのような目標を設定するかの合意がされるかどうかが注目されます。滝氏の意見では、「拘束力が弱い合意」なら可能で、議長国のフランスは合意優先で会議を進めるだろうとのことです。高い目標ではなく、各国が持ち寄った削減目標を積み上げるボトムアップの目標設定になるだろうというのが、滝氏の予想でした。

さらに、2050年に向けての削減目標が次の焦点になるとのこと。COP21で話し合われるのでしょうか?

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