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2015年9月14日月曜日

「物言う紳士」による対話の時代が来た

地道に経営陣と対話を重ね経営改善を促すファンドは「ソフト・アクティビスト」や「ジェントル(紳士的な)・アクティビスト」というそうだ。米CIIによる日本のコーポレートガバナンスに対する提案も参考になる。


どう動く米国マネー(中)統治改革に期待と疑念 粘り強い「物言う紳士」に人気

日経 2015/9/11

 公的年金や財団などが集うロビー団体、米機関投資家評議会(CII)の
ワシントン本部は、9月末に開く企業統治をテーマにした会議の準備に追われていた。
日本の企業統治についても議論する予定だという。
 4月の会議では企業統治に詳しい三井住友信託銀行の小森博司審議役が参加した。日本人をパネリストに招くのは30年の歴史で初めてだ。「会員の多くが日本株を増やしており、企業統治改革への関心は高い」と、CIIのエイミー・ボーラス暫定事務局長は語る。
 会員の運用資産は約300兆円に及び、影響力は大きい。「独立社外取締役は3分の2以上」「取締役会は15人以下に」。CIIは昨年、安倍晋三首相にこんな提言書を送った。改革が加速すれば株主価値の向上につながるとの思いからだ。
 外部の規律を強め、自己資本利益率(ROE)の向上につなげる――。官民を挙げての企業統治改革は海外勢が日本株を見直す大きなきっかけになった。もっとも全ての投資家が手放しで評価しているわけではない。
 「経営者の意識は変わっていないのではないか」。約14兆円を預かる米運用会社、GMOのポートフォリオ・マネジャー、トーマス・ローズ氏は今夏、投資家向け広報(IR)で同社を訪れた日本企業の説明を聞き、もどかしさを感じた。
 7~8月にローズ氏が面談した日本企業は50社を超える。確かにROEの目標を掲げる企業は増えたが、達成への方策を聞くと「従来と同じように増収頼みとの印象だった」(ローズ氏)。低採算事業からの撤退など、期待していた抜本策はあまり聞かれなかった。
 なお残る株式の持ち合いや買収防衛策、相次ぐ会計不祥事など、日本の企業統治が十分機能しているのか疑念は根強い。

 そんななか米国の長期投資家が頼る運用先がある。アクティビスト(物言う投資家)が手掛ける日本株ファンドだ。

 日経平均株価が大幅に下げた9月1日。米アクティビスト、アトランティック・インベストメント・マネジメントのアレクサンダー・ローパーズ社長は手応えを感じていた。同社の日本株ファンドに予定通り、富裕層などから新規のマネーが入ったからだ。
 「経営者を尊重し、建設的な対話を通じて日本企業に変化を促す」。2カ月前の7月8日、ニューヨーク・パレスホテルで開いた投資家向け説明会で、ローパーズ社長はこう訴えた。出席者は約50人と、前年の2倍以上に増えたという。
 アトランティックのように、地道に経営陣と対話を重ね経営改善を促すファンドは「ソフト・アクティビスト」や「ジェントル(紳士的な)・アクティビスト」と呼ばれる。株主提案や委任状争奪戦を通じ要求を突きつける劇場型のアクティビストと一線を画す。
 米長期投資家は日本企業の背中を押す存在としてこうしたファンドに期待する。かつての米スティール・パートナーズのように強圧的な態度だと抵抗にあうが、粘り強い対話で成果を上げる例が出ているためだ。
 「物言う紳士」の代表格、いちごアセットマネジメントの日本株ファンドの規模は前年の同時期に比べ約2倍の5500億円近くに膨らんだ。現在は新規顧客からの資金の受け入れを停止している。マネーの出し手には欧米の大学基金、財団などの名前が並ぶ。

 米国マネーを振り向かせることに成功した日本のガバナンス改革。企業の実行力が伴わなければ期待はあっという間にしぼんでしまう。本当に変われる企業はどこか。投資家はそれを厳しく見定めようとしている。

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